1ուր 2բարկացայտ 3ալիքն 4լեռնաձեւ 5կուտակին, 6մէտ 7ի 8մէտ 9խոնարհին, 10ըստ 11աղեգէտն 12պատմողին 13մարմնաքնար 14Դաւթեան 15երգոյն, 16թէ 17Ելանեն 18լեռնանան, 19եւ 20իջանեն 21դաշտանան։
番号は下の「逐語分析」「構造図」の番号と対応する。
「そこでは、荒れ狂う波々が山のように盛り上がり、揺れ返しながら低く沈む――〔弦楽に通じた〕語り手、肉身を竪琴とするダビデの歌にいうとおり、『上って山となり、そして下って平地となる』のである。」
⚠ このページは読解ガイドラインの試運転による pilot である。 1–9 の波の二述語構造、16–21 の詩篇103:8冒頭の直接引用に加え、今回 10–15 の長い名詞句も採用分析まで閉じた。11 աղեգէտն は 12 պատմողին を前置修飾する形容詞的用法、12 պատմողին は 14 Դաւթեան と同格・共参照する GEN.SG.DEF、13 մարմնաքնար は 14 Դաւթեան を前置修飾する複合形容詞、14 Դաւթեան は 15 երգոյն を所有・帰属的に限定する属格、15 երգոյն は 10 ըստ に支配される DAT.SG.DEF とする。したがって 10–15 は「弦楽に通じた語り手、肉身を竪琴とするダビデの歌に従って」と一続きに解析する。本文綴字 աղեգէտն と辞書側 աղէ-գէտ の差、およびこの稀語の独立見出し POS が直接取得できない点は注記として残すが、文全体の主要構文 residual とはしない。
Ur barkacʿayt alikʿn leṙnajew kutakin, mēt i mēt xonarhin, əst ałegētn patmołin marmnakʿnar Dawtʿean ergoyn, tʿē Elanen leṙnanan, ew iǰanen daštanan.
| No. | 語形 | Romanize | 品詞・形態 | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ուր | ur | 関係・場所副詞;前文の海上の場面を受ける | そこでは、そこで |
| 2 | բարկացայտ | barkacʿayt | 形容詞;3 ալիքն に前置する修飾語 | 荒れ狂う、激しく荒立つ |
| 3 | ալիքն | alikʿn | ալիք「波」・主格複数・定;5・9 の共有主語 | 波々が |
| 4 | լեռնաձեւ | leṙnajew | 形容詞/副詞的用法;5 կուտակին の状態・様態を示す | 山の形に、山のように |
| 5 | կուտակին | kutakin | կուտակեմ・直説法現在3複;文脈では自動詞的・受動的に「積み上がる」 | 盛り上がる、積み重なる |
| 6–8 | մէտ ի մէտ | mēt i mēt | 辞書で一まとまりの副詞的結合として確認される | あちらこちらへ傾き返して、揺れ返しながら |
| 9 | խոնարհին | xonarhin | խոնարհիմ・直説法現在3複;3 ալիքն を5と共有する。形容詞 խոնարհ の同形候補は本構文では採らない | 低くなる、身を下げる、沈み込む |
| 10 | ըստ | əst | 前置詞;本ページでは15 երգոյն の与格を支配すると優先分析 | ~に従って、~の言うとおり |
| 11 | աղեգէտն | ałegētn | 形容詞的用法を preferred。定冠詞 -ն を伴う前置修飾語で、12 պատմողին を修飾するとみる。前置形容詞なので中心語の斜格と表面的に格一致しなくてもよい | 弦楽に通じた、弦楽の演奏に熟達した |
| 12 | պատմողին | patmołin | պատմող(-ող 分詞)の斜格単数・定。本句では GEN.SG.DEF を採用。11 աղեգէտն の被修飾中心語で、14 Դաւթեան と同格・共参照し、15 երգոյն を限定する人物属格句の一部 | 語る者、語り手(たる者)の |
| 13 | մարմնաքնար | marmnakʿnar | մարմին「身体」+ քնար「竪琴」による複合形容詞。多音節前置形容詞として無屈折のまま 14 Դաւթեան を修飾すると採用 | 肉身を竪琴とする、身体そのものを竪琴とする |
| 14 | Դաւթեան | Dawtʿean | Դաւիթ「ダビデ」の斜格形。本句では 15 երգոյն を限定する GEN.SG を採用し、12 պատմողին と同格・共参照 | ダビデの |
| 15 | երգոյն | ergoyn | երգ「歌」・形態上 GEN/DAT/ABL.SG.DEF。同文脈の ըստ「~に従って」に支配される DAT.SG.DEF を採用 | 歌に、歌の言うところに |
| 16 | թէ | tʿē | 引用・内容導入の接続詞 | ~と、すなわち |
| 17 | Ելանեն | Elanen | ելանել・直説法現在3複 | 上る、上がる |
| 18 | լեռնանան | leṙnanan | լեռնանալ・直説法現在3複 | 山となる、山のようになる |
| 19 | եւ | ew | 接続詞 | そして |
| 20 | իջանեն | iǰanen | իջանել・直説法現在3複 | 下る、降りる |
| 21 | դաշտանան | daštanan | դաշտանալ・直説法現在3複 | 平地となる、平らになる |
※ 9 խոնարհին は聖書コーパスでは形容詞 խոնարհ の斜格定形と同形になる例があるが、本箇所では 3 ալիքն を主語とする 5 կուտակին との並列、ならびに辞書が本箇所を խոնարհիմ の用例として直接掲げることから、動詞・現在3複と採用する。
※ 15 երգոյն は形だけでは属格・与格・奪格が同形だが、HMB2018 §159 が示す ըստ + DAT の「~に従って/~のように」という用法が本文の意味にそのまま合うため、DAT.SG.DEF を採用する。
※ 14 Դաւթեան は表面的には固有名詞の斜格形だが、本句では 15 երգոյն「歌」を所有・帰属的に限定するため GEN.SG と解析する。CALFA/NBHL には դաւթեան երիվար「ダビデの馬」、դաւթեան սաղմոսին、դաւթեան երգոցն など、Դաւթեան + 名詞 の属格的用法が独立に確認できる。
※ 12 պատմողին は GEN/DAT 同形になりうるため、語尾だけからは格を決めない。本箇所では、JEN1959 §§427–429 が挙げる սպարապետին Մուշեղի「将軍ムシェグ」、թագաւորին Վարազդատայ「王ヴァラズダト」のような「人物称号+固有名詞」の斜格同格を比較し、12 պատմողին と14 Դաւթեան を同格・共参照とする。14 が15を限定する属格である以上、12 も同じ GEN.SG.DEF と採用する。DAT は形態的候補としては可能だが、この文で DAT を要求する独立した支配・認可関係は見いだせない。
※ 13 մարմնաքնար は CALFA/NBHL に հոգիաներկ եւ մարմնաքնար երգողին という外部用例があり、人物名詞を修飾する形容詞的用法が直接確認できる。さらに HMB2018 §178 は、多音節の前置形容詞は通常屈折せず、後置形容詞は屈折すると記述する。本句の裸形 մարմնաքնար は、前の斜格 պատմողին の後置修飾より、後ろの Դաւթեան を前置修飾する分析に整合する。
※ 11 աղեգէտն については、CALFA/NBHL の աղի 項目の語源・派生説明に աղէ-գէտ「նուագել իմացող(演奏を心得る)」が Agathangelos の用例として明記される。さらに -գէտ 系では、աստուածագէտ・բազմագէտ が形容詞、օրէնսգէտ・արուեստագէտ が形容詞/名詞の両用として扱われる。聖書コーパスでも基語 գէտ は人物を名詞的に指す環境を含めて形容詞としてタグ付けされるため、本箇所では「弦楽に通じた」形容詞として12を修飾すると採用する。
※ BAG1852 §889 は、修飾語と被修飾語の双方に冠詞が反復される例として թերահաւատն Թովմային を挙げる。形式的に աղեգէտն պատմողին と近く、BAG1852 §726/JEN1959 §424 の前置形容詞の非一致と合わせると、աղեգէտն が定冠詞を持ち、かつ斜格の պատմողին と表面的に格一致しないことは形容詞修飾説への障害にならない。
AGATH.§1.S03
[1] ուր
「そこでは」
│
└─前文 S002 の海面・波の場面を受ける
════════ A. 波を主語とする二つの定動詞述語 ════════
[2–3] բարկացայտ ալիքն
「荒れ狂う波々が」 NOM.PL.DEF
│
├───────────────┐
↓ ↓
[4–5] լեռնաձեւ կուտակին [6–9] մէտ ի մէտ խոնարհին
「山のように盛り上がる」 「揺れ返しながら低く沈む」
FIN.3PL FIN.3PL
同一主語 ալիքն を共有する対照的な上下運動
════════ B. ըստ が導く「ダビデの歌」句 ════════════
[10] ըստ
「~に従って/~にいうとおり」
│
└─[15] երգոյն DAT.SG.DEF
「歌に」
│
└─ 所有・帰属を表す人物属格句
│
├─[12] պատմողին GEN.SG.DEF
│ 「語り手(たる者)の」
│ ↑
│ [11] աղեգէտն
│ 「弦楽に通じた」
│
║ apposition / coreference
│
└─[14] Դաւթեան GEN.SG
「ダビデの」
↑
[13] մարմնաքնար
「肉身を竪琴とする」
括り:
ըստ [[[աղեգէտն պատմողին] ≈ [մարմնաքնար Դաւթեան]] երգոյն]
「弦楽に通じた語り手、肉身を竪琴とするダビデの歌に従って」
※ [12] պատմողին と [14] Դաւթեան は同一人物を指す斜格同格。
[14] が [15] երգոյն を属格限定するため、[12] も GEN と採用する。
[13] մարմնաքնար は多音節前置形容詞として [14] を修飾する。
════════ C. թէ が導く直接引用 ════════════════════
[16] թէ
└─[17–21] 「Ելանեն լեռնանան, եւ իջանեն դաշտանան」
│
├─ Ելանեն լեռնանան
│ 「上って山となる」
│
└─ եւ իջանեն դաշտանան
「そして下って平地となる」
= 詩篇103:8 冒頭5語と逐語的に一致
════════ D. アガタンゲロス本文と引用の対応 ═════════
լեռնաձեւ կուտակին
「山のように盛り上がる」
⇅
Ելանեն լեռնանան
「上って山となる」
մէտ ի մէտ խոնարհին
「揺れ返しながら低く沈む」
⇅
իջանեն դաշտանան
「下って平地となる」
S002 は、船を「駿馬」、海を「青い野」に置き換え、航海を騎行として描いた。S003 は、その海面そのものへ視点を寄せ、波の上下運動をさらに大きな地形の変化として描く。
2–5 բարկացայտ ալիքն լեռնաձեւ կուտակին では、主語は 3 ալիքն「波々」。2 բարկացայտ は辞書で「激しく荒立つ、怒りに発したような」と説明され、このアガタンゲロスの句そのものが用例として挙げられる。4 լեռնաձեւ も「山の形をした、山のような」を意味し、辞書は լեռնաձեւ կուտակիլ「山のように積み上がる」という結合を本箇所で確認する。したがって、ここでは単に波が「高い」のではなく、海面から山が立ち上がるように波が盛り上がる像が作られている。
続く 6–9 մէտ ի մէտ խոնարհին は、それと逆方向の運動を描く。մէտ ի մէտ は語を一つずつ直訳するより、一まとまりの副詞的結合として読むべき表現で、辞書は「あちらこちらへ傾く、揺れる、上下する」意味を与え、この文を直接用例として挙げる。9 խոնարհին はここでは խոնարհիմ「低くなる、身を下げる、下方へ傾く」の現在3複である。
波がせり上がる → 山 波が沈み込む → 平地
この二方向の動きに続いて、作者は詩篇を引用する。16–21
Ելանեն լեռնանան, եւ իջանեն դաշտանան
は、Grabar の詩篇103:8
Ելանեն լեռնանան եւ իջանեն դաշտանան, ի տեղի յոր հաստատեցեր զնոսա։
の冒頭5語と逐語的に一致する。
この引用は、単に「山」「平地」という似た語があるから添えられたものではない。詩篇103:6–9を続けて読むと、103:6 には ջուրք「水々」が明示され、その後も複数動詞で水の動きが続く。103:8 自体には主語が再表示されないが、文脈上はこの「水」が継続して、
Ելանեն լեռնանան 「上って山となり」 եւ իջանեն դաշտանան 「そして下って平地となる」
と描かれる。
したがってアガタンゲロスは、海の波を山と谷にたとえた後で聖書から山と平地の語を借りてきた、というだけではない。Grabar の詩篇本文そのものが、文脈上「水」が上って山のようになり、下って平地のようになる運動を語っている。そのため引用は S003 の波の上下運動に、語彙だけでなく主題と運動方向の双方で重なる。
これは S002 から続く比喩の拡張でもある。
S002
船 = 駿馬
海 = 青い野
航行 = 騎行
S003
高まる波 = 山
低まる波 = 平地
│
└─ 詩篇103:8 がその像を聖書的言語で言い直す
つまり S003 では、海面がもはや平らな「野」ではない。荒天によってその野が山地と平地へ絶えず変形する。その激しい起伏を、ダビデの詩篇があらかじめ語っていたかのように重ねることで、航海の危険が聖書的な水のイメージへ接続されている。
2 բարկացայտ は形容詞で、3 ալիքն「波々」を前置修飾する。ալիքն は NOM.PL.DEF だが、形容詞側には複数主格の語尾が現れない。
HMB2018 §178 は、名詞と形容詞の限定関係について、前置された多音節形容詞は通常屈折せず、後置形容詞は屈折すると説明する。BAG1852 §726、JEN1959 §424 も前置形容詞の非一致を記述する。したがって、
բարկացայտ ալիքն 荒れ狂う 波々.NOM.PL.DEF
は通常の前置修飾であり、բարկացայտ に別の格・数標示を期待する必要はない。
この規則は後半の աղեգէտն պատմողին、մարմնաքնար Դաւթեան を読む際にも重要になる。
4 լեռնաձեւ は「山の形をした、山のような」。CALFA/NBHL は形容詞・副詞的用法を認め、լեռնաձեւ կուտակիլ を本箇所の直接用例として掲げる。
5 կուտակին は現在3複で、主語は 3 ալիքն。ここでは「積み上がる、盛り上がる」と取り、
ալիքն լեռնաձեւ կուտակին 「波々が山のように盛り上がる」
となる。後続の詩篇引用 Ելանեն լեռնանան「上って山となる」と語彙・運動方向が対応する。
9 խոնարհին は表面形だけなら形容詞 խոնարհ の斜格定形と同形になりうる。しかし本箇所では、
ալիքն ├─ կուտակին FIN.3PL └─ խոնարհին FIN.3PL
という並列が統語的に自然である。さらに辞書は Խոնարհիմ の項目で本箇所を直接用例として引用する。
6–8 մէտ ի մէտ も一語ずつ組み立てるより、反復的な揺れ・傾斜を表す副詞的結合として扱うべきで、全体は「揺れ返しながら低く沈む」となる。
したがってここでは、単一表面形の機械的候補より、並列構造・直接辞書用例・意味の対照を合わせて動詞解析を採る。
15 երգոյն は形態上 GEN/DAT/ABL.SG.DEF が同形である。格は語尾だけでは決められない。
HMB2018 §159 は ըստ について、与格との結合が「~に従って、~のように」という基準・一致の意味を表すことを明記する。本文はまさに、
ըստ ... երգոյն 「……の歌に従って/歌にいうとおり」
なので、15 は DAT.SG.DEF と採用する。
重要なのは、ըստ が 11–14 の全語を同じ格にするのではないことである。前置詞が支配する名詞句の中心は 15 երգոյն であり、その内部には属格の所有者・帰属者を含められる。
したがって基本骨格は、
ըստ [Դաւթեան.GEN երգոյն.DAT] 「ダビデの歌に従って」
となる。
CALFA/NBHL には դաւթեան երիվար「ダビデの馬」、դաւթեան սաղմոսին、դաւթեան երգոցն などが確認でき、Դաւթեան + 名詞 を所有・帰属の属格として読むことに独立した平行例がある。
11 աղեգէտն は稀語である。CALFA/NBHL の աղի 項目には派生語として աղէ-գէտ「նուագել իմացող」、すなわち「演奏することを心得る者/演奏に通じた」が挙げられ、Agathangelos の用例であることが示される。աղի には楽器の「弦」の意味があるため、本箇所では「弦楽に通じた、弦楽の演奏に熟達した」と理解する。
本文綴字は աղեգէտն、辞書側は աղէ-գէտ であり、この綴字差はそのまま注記として保持する。
-գէտ 系を比較すると、
գէտ noun / adjective の両分析 աստուածագէտ adjective բազմագէտ adjective օրէնսգէտ adjective + noun արուեստագէտ adjective + noun
となり、「人物を指すから必ず名詞」とはならない。聖書コーパスでも գէտ は人物を指す用法を含め形容詞としてタグ付けされる。
したがって、
աղեգէտն → պատմողին 「弦楽に通じた語り手」
という前置形容詞分析を採用する。
双方に -ն があることも障害ではない。BAG1852 §889 は冠詞反復の例として、
թերահաւատն Թովմային 「疑い深いトマス(の/に)」
を挙げる。形式的に、
թերահաւատ-ն Թովմայ-ի-ն աղեգէտ-ն պատմող-ի-ն
は非常に近い。前置形容詞の非一致と合わせれば、աղեգէտն պատմողին は十分自然な一つの限定句である。
12 պատմողին は պատմող「語る者、語り手」という -ող 分詞系の斜格単数定形である。語形だけなら GEN/DAT の双方が候補になりうる。
ここでは格を語尾から決めず、次の三段階で確定する。
1. ըստ ... երգոյն
↓
երգոյն = DAT
(「歌に従って」)
2. Դաւթեան → երգոյն
↓
Դաւթեան = GEN
(「ダビデの歌」)
3. պատմողին ≈ Դաւթեան
↓
պատմողին = GEN
(「語り手ダビデの」)
第3段階を支えるのが、人物称号と固有名詞の斜格同格である。JEN1959 §§427–429 には、
սպարապետին Մուշեղի 「将軍ムシェグの/に」 թագաւորին Վարազդատայ 「王ヴァラズダトの/に」
のような例があり、称号と固有名詞が同じ斜格に立つ。
さらに Agathangelos 自身にも、人物に複数の称号・修飾語を重ねる例がある。
§810 մեծի մարգարէին երանեալ մկրտչին Յովհաննու 「偉大な預言者、祝福された洗礼者ヨハネ」 §866 մեծ արքեպիսկոպոսն երանելին Գրիգորիոս 「偉大な大主教、祝福されたグレゴリオス」
したがって本箇所でも、
պատմողին ≈ Դաւթեան 「語り手、すなわちダビデ」
という同格・共参照を採用するのが自然である。
14 Դաւթեան が15 երգոյն を限定する属格である以上、同格の12も GEN.SG.DEF とする。DAT は形態上の可能性としては残るが、本文中で DAT を要求する支配関係がなく、採用分析に対抗する積極的根拠がないため、最終分析では退ける。
13 մարմնաքնար は մարմին「身体」+ քնար「竪琴」による詩的複合語で、「肉身を竪琴とする」ほどの意味になる。
CALFA/NBHL には別文献の実例として、
հոգիաներկ եւ մարմնաքնար երգողին
があり、մարմնաքնար が人物を表す երգողին「歌い手」に形容詞的にかかる用法を直接確認できる。
S003 では係り先が問題になる。
պատմողին մարմնաքնար
と後置修飾する可能性と、
մարմնաքնար Դաւթեան
と前置修飾する可能性が形式上考えられる。
しかし HMB2018 §178 によれば、後置形容詞は屈折する一方、多音節前置形容詞は通常屈折しない。本文の մարմնաքնար は裸形であり、斜格の պատմողին の後置修飾としてよりも、後続の Դաւթեան を前置修飾する形としてよく説明できる。
したがって、
մարմնաքնար → Դաւթեան 「肉身を竪琴とするダビデ」
を採用する。
以上を統合すると、
[աղեգէտն պատմողին]
≈
[մարմնաքնար Դաւթեան]
↓
երգոյն
という構造になる。
すなわち同一人物ダビデを、
աղեգէտն պատմողին — 「弦楽に通じた語り手」մարմնաքնար Դաւթեան — 「肉身を竪琴とするダビデ」
という二つの記述で重ね、その人物に帰属する 15 երգոյն「歌」を ըստ が支配する。
このような称号・形容語の累積は Agathangelos 自身の文体にも平行例があり、長い人物名詞句を特殊な支配関係へ分解する必要はない。
16 թէ は後続の引用内容を導く。17–21 は詩篇103:8冒頭と一致する。
Ելանեն PRES.3PL լեռնանան PRES.3PL եւ իջանեն PRES.3PL դաշտանան PRES.3PL
詩篇103:6–9では先行する ջուրք「水々」が文脈上の participant であり、103:8 の上下運動もその「水」に続く。したがって引用は S003 の ալիքն「波々」と、単なる語彙類似ではなく、水の上下運動そのものを重ねている。
մէտ ի մէտ は、個々の մէտ を名詞として逐語的に組み立てるより、反復形全体で「あちらこちらへ傾き、揺れ、上下する」を表す副詞的結合として読む。NBHL/CALFA は本箇所を直接用例として掲げる。
本文では խոնարհին と結び、
մէտ ի մէտ խոնարհին 「揺れ返しながら低く沈む」
ほどになる。
լեռնաձեւ「山のような」+ կուտակիլ「積み上がる/盛り上がる」。辞書が本箇所を直接用例として挙げる結合で、波が山塊のようにせり上がる像を作る。
Ելանեն լեռնանան, եւ իջանեն դաշտանան は詩篇103:8冒頭の直接引用である。アガタンゲロスは verse 後半 ի տեղի յոր հաստատեցեր զնոսա を引用せず、「上る/山となる」対「下る/平地となる」という対句だけを切り出している。
そのため、引用は直前の二述語
լեռնաձեւ կուտակին մէտ ի մէտ խոնարհին
を聖書語彙で再記述する短い「鏡」のように働く。
S003 の主要構文 residual はクローズする。
աղեգէտն — 「弦楽に通じた」。形容詞的に12 պատմողին を前置修飾。պատմողին — GEN.SG.DEF。14 Դաւթեան と同格・共参照し、15 երգոյն を限定する人物属格句の一部。մարմնաքնար — 「肉身を竪琴とする」。多音節前置形容詞として14 Դաւթեան を修飾。Դաւթեան — GEN.SG と採用。15 երգոյն を所有・帰属的に限定。երգոյն — DAT.SG.DEF。10 ըստ の「~に従って」用法に支配される。պատմողին「語り手」と Դաւթեան「ダビデ」は同一人物を指す斜格同格。最終括り:
ըստ [[[աղեգէտն պատմողին] ≈ [մարմնաքնար Դաւթեան]] երգոյն]
試訳上は、
「弦楽に通じた語り手、肉身を竪琴とするダビデの歌にいうとおり」
とする。
完全に消さず、資料上の注記として以下のみ残す。
աղեգէտն、CALFA/NBHL の派生記載は աղէ-գէտ。綴字差は保持する。աղեգէտ / աղէգէտ 独立見出しそのものの直接 POS は辞書サービスから取得できなかった。ただし -գէտ 系の品詞比較、BAG1852 §889、前置形容詞規則、および局所構文から、本箇所の形容詞分析を覆す積極的根拠はない。պատմողին は形態上 GEN/DAT 同形でありうるが、本句では同格・属格連鎖から GEN を採用する。DAT を採用するには独立した支配・認可関係の提示が必要になるが、現時点でその証拠はない。これらは構文未解決項目ではなく、採用分析に付随する資料上・形態上の注意事項とする。
初回対話精読からクローズまでに、以下を採用した。
բարկացայտ ալիքն:前置多音節形容詞+NOM.PL.DEF 名詞。ալիքն:5 կուտակին と9 խոնարհին の共有主語。լեռնաձեւ կուտակին:「山のように盛り上がる」。մէտ ի մէտ խոնարհին:反復副詞句+ խոնարհիմ 現在3複。「揺れ返しながら低く沈む」。ըստ → 15 երգոյն:基準・一致の意味を表す DAT.SG.DEF 支配。աղեգէտն → 12 պատմողին:「弦楽に通じた語り手」という前置形容詞修飾。պատմողին ≈ 14 Դաւթեան:人物称号+固有名詞の斜格同格。12 は GEN.SG.DEF。մարմնաքնար → 14 Դաւթեան:多音節前置形容詞。「肉身を竪琴とするダビデ」。Դաւթեան → 15 երգոյն:所有・帰属の GEN.SG。-ող 分詞 §135、ըստ の格支配 §159、形容詞の位置と屈折 §178.