1ընդ 2մեծանալ 3վաճառացն 4փոխանակեն 5զինքեանս։
番号は下の「逐語分析」「構造図」の番号と対応する。
「商いが大きくなるにつれて、彼らは自分自身を引き換えに差し出す。」
1–3 ընդ մեծանալ վաճառացն は、前置詞+不定詞による時間的・副詞節的構文として「商いが大きくなるとき/につれて」と読む。4–5 փոխանակեն զինքեանս は直訳すれば「彼らは自分自身を交換する/引き換えにする」。試訳ではこの語義の核を残して直訳寄りに置き、文脈上の「自らの身を賭ける」という含意は「本文読解」で説明する。
Ənd mecanal vačaṙacʿn pʿoxanaken zinkʿeans.
| No. | 語形 | Romanize | 品詞・形態 | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ընդ | ənd | 前置詞;2 不定詞と結び副詞節相当の構文を作る | ~するとき、~する間;文脈上「~するにつれて」 |
| 2 | մեծանալ | mecanal | մեծանամ の不定詞 | 大きくなる、増大する、増える |
| 3 | վաճառացն | vačaṙacʿn | վաճառ「商い」・複数斜格(-աց)+定冠詞 -ն;本構文では GEN.PL.DEF と採用し、2 մեծանալ の論理主語 | 商いが |
| 4 | փոխանակեն | pʿoxanaken | փոխանակեմ・直説法現在・3人称複数 | 交換する、引き換えにする;文脈上「身を賭ける」含意 |
| 5 | զինքեանս | zinkʿeans | վերաբերական/再帰的 ինքն 系・対格複数(զ-);4 の直接目的語 | 自分自身を、自らの身を |
※ 3 վաճառացն の -աց は表面形として複数斜格であり、形だけから格機能を機械的に一意化しない。本例では、մեծանալ「大きくなる・増大する」が自動詞で、վաճառացն が意味上「商いが増大する」の主語に当たること、さらに JEN1959 §493 が前置詞+不定詞構文の論理主語を通常属格(まれに与格)とすることから、GEN.PL.DEF の論理主語と確定する。日本語は「商い」で統一する。
構造図 — ''ընդ + 不定詞'' の時間的付加節と主節
AGATH.001.S06
1 ընդ 2 մեծանալ 3 վաճառացն
4 փոխանակեն 5 զինքեանս։
════════ 文全体の骨格 ═══════════════════════════════
[1–3 前置詞+不定詞構文]
ընդ մեծանալ վաճառացն
「商いが大きくなるとき/につれて」
│
│ 時間的・状況的付加
▼
[4–5 主節]
Øᵢ փոխանակեն զինքեանս
「彼らᵢは自分自身を引き換えにする」
│
└─直接目的語────> [5] զինքեանս
「自分自身を」
════════ 1–3 の内部構造 ════════════════════════════
[1] ընդ
│
└─不定詞補部────> [2] մեծանալ
「大きくなる/増大する」
│
└─論理主語(GEN)
└────> [3] վաճառացն
複数斜格形 → 本構文では GEN.PL.DEF
「商いが」
→ ''ընդ + infinitive + GEN subject''
→ 「商いが増大するとき/増大するにつれて」
════════ 4–5 — 直訳と本文読解の二層 ═══════════════════
[4] փոխանակեն
「交換する/引き換えにする」
│
└─OBJ────> [5] զինքեանս
「自分自身を」
【直訳寄り】
「彼らは自分自身を引き換えにする/交換する」
【文脈的解釈】
「彼らは自らの身を差し出す/賭ける」
後者は S005 の
''գրաւական եդեալ զանձինս''
「自分たち自身を担保として置き」
という表現と強く響き合う。
試訳では前者の直訳的な核を保ち、
「身を賭ける」という含意は本文読解で説明する。
S005 は航海者・商人たちについて、գրաւական եդեալ զանձինս「自分たち自身を担保として置き」、さらに死を競いの終点として置く、と描いていた。S006 はその直後に、同じ自己危険化の像を商いの語彙で言い直して継続する。ここを S005 からの段階的強化とみる必要はない。
1–3 ընդ մեծանալ վաճառացն は、「商いが大きくなるとき/商いが膨らむにつれて」という時間的・状況的な付加節である。ここで վաճառ は単なる一回の売買より、継続的な商いの意味領域を持つ。本ページでは日本語を「商い」で統一する。
それを受ける 4–5 փոխանակեն զինքեանս は、語の上では「彼らは自分自身を交換する/引き換えにする」となる。CALFA / NBHL の Փոխանակեմ には、物品の交換だけでなく、զանձն ի վերայ ճշմարտութեան「真理のために自分を差し出す」、զկեանս իւր ի վերայ ուրուք「ある者のために自分の生命を危険にさらす」といった、人身・生命を代価として差し出す方向の語義も記録される。
さらにアガタンゲロス自身の §13 には、
զանձինս իւրեանց փոխանակեցին ընդ Աստուծոյ ճշմարտութեանն
という、զանձինս … փոխանակեցին の明瞭な作者内平行例がある。したがって S006 の 4–5 も、単なる商業的「交換」にとどまらず、利益を求める航海に自分自身を代価として差し出す、すなわち「身を賭ける」という含意を持つと読むのが自然である。
ただし、本句には §13 の ընդ … のような「何と引き換えにするか」を明示する補部がない。そのため訳文そのものは直訳寄りに保ち、本文読解で含意を説明する。
直訳の核: 「自分自身を引き換えにする」 文脈的含意: 「自らの身を差し出す/身を賭ける」
という二層を分けて保持する。
BAG1852 §568 は、ի・ընդ と不定詞の結合が、時間・同時・条件・理由などを表す副詞節に相当しうることを明示する。とくに今回に近い例として、
Ընդ երթալն նորա ... 「彼が行くとき/行っている間」 Ընդ խօսելն նոցա եւ ընդ վիճել ... 「彼らが話し、論じている間」
を挙げる。
JEN1959 §493 も、前置詞+不定詞からなる統語群が副詞的従属節を代用し、不定詞が論理主語を伴う場合、その主語は通常属格に置かれると記述する。
したがって S006 は、
ընդ [մեծանալ վաճառացն]
INF GEN.PL.DEF
と切り、
վաճառացն └── մեծանալ の論理主語
とする。վաճառացն は表面形だけでは複数斜格として格機能が同形になりうるが、մեծանալ が自動詞であるため目的語分析は立たず、意味上も「商いが増大する」という主語関係である。JEN1959 §493 が示す通常の属格論理主語型として GEN を採用する。
意味関係はまず時間的・同時的に、
「商いが大きくなるとき」 「商いが増大するにつれて」
と取る。後者の「につれて」は文脈に合う自然な日本語だが、厳密な比例関係まで文法形式そのものが表すと断定はしない。
4 փոխանակեն は փոխանակեմ の現在3複で、5 զինքեանս を対格目的語に取る。
Øᵢ փոխանակեն զինքեանս
「彼らᵢは自分自身を交換する/引き換えにする」
主語 Ø は、前文 S005 から継続する航海者・商人たちとみるのが自然である。
問題は統語ではなく、直訳と文脈的含意をどこで表現するかである。辞書記述と作者内平行例は「自分・生命を代価として差し出す」という用法を支持するため、本文読解では「身を賭ける」意を明示する。一方、կեանս「生命」を本文が明示しているわけではないので、試訳では「自分自身を引き換えに差し出す」という直訳的な核を保つ。
固定的な語彙慣用句というより、文法的に生産的な副詞節相当構文である。S006 では ընդ մեծանալ վաճառացն 全体で時間・同時性を表すとみる。
独立した固定成句として扱う必要はない。ただし CALFA / NBHL の Փոխանակեմ の語義記述、およびアガタンゲロス §13 の զանձինս իւրեանց փոխանակեցին … から、「自分自身を代価として差し出す」という語彙的結合と、「身を賭ける」という文脈的含意は十分に支持される。
[ընդ [մեծանալ [վաճառացն]GEN.SUBJ]INF]ADV 「商いが大きくなるとき/につれて」 [Øᵢ փոխանակեն [զինքեանս]OBJ] 「彼らᵢは自分自身を引き換えにする」
1–3 は ընդ + 不定詞 による時間的・状況的付加節、4–5 は定動詞 փոխանակեն を核とする主節と確定する。3 վաճառացն は表面上の複数斜格同形を認識したうえで、մեծանալ の論理主語 GEN.PL.DEF と採用する。5 զինքեանս は 4 の対格直接目的語である。
試訳は語義の核を保って「自分自身を引き換えに差し出す」とし、S005 の գրաւական եդեալ զանձինս および作者内平行例 §13 を踏まえた「自らの身を賭ける」という含意は本文読解で説明する。
S006 には、逐語分析・構造図・本文読解・試訳を変更し得る substantive residual は残っていない。
վաճառացն — -աց は表面上の複数斜格形で、形態だけから格機能を一意化しない。ただし本構文では、մեծանալ が自動詞であり վաճառացն がその意味上の主語であること、JEN1959 §493 の通常型が属格論理主語であることから GEN.PL.DEF と確定する。訳語は「商い」。փոխանակեն զինքեանս — 統語は明瞭で、問題は訳し方の層のみ。試訳は直訳寄り、本文読解では「身を賭ける」含意を明示する。զի թէպէտ եւ … の係り方は S007 側で扱う。S006 内部の採用分析はその判定に依存しない。վաճառացն を表面形だけで単純に「属格複数」と記すのを改め、複数斜格同形と構文機能を分離した。そのうえで GEN logical subject と確定。վաճառացն の日本語訳は「商い」に固定。փոխանակեն զինքեանս は「自分自身を引き換えに差し出す」を試訳とし、「身を賭ける」は訳文に過剰に織り込まず本文読解で示す方針に確定。զանձինս իւրեանց փոխանակեցին ընդ Աստուծոյ ճշմարտութեանն を作者内平行例として確認し、自己を代価として差し出す語義を補強。S006 はクローズ。 採用本文・逐語分析・構造図・本文読解・文法解説・試訳を変更し得る未決点は残っていない。次文との接続関係は S007 の読解課題として切り分ける。
զանձինս իւրեանց փոխանակեցին ընդ Աստուծոյ ճշմարտութեանն)。ի / ընդ + 不定詞 による副詞節相当構文。§1295:ինքն / անձն 系の再帰的用法と զինքեանս の用例。Փոխանակեմ, Վաճառ, Մեծանամ 各項目。Փոխանակեմ の自己・生命を代価として差し出す用法、および Վաճառ の「商い・交易」語義を参照。