「というのも、このような窮境の災いに迫られて、苦難を伴いながら商いの営みに身を投じようとする者は多い。」
STATUS: CLOSED.
REVIEW.001–003、pre-close residual sweep、core-domain completion sweep を完了。առ … աղէտս は CAUSE / MOTIVE、ի վաճառականութեան արուեստս は GOAL / ENTRY、տուայտանաւք は INSTR.PL / MANNER と確定した。բազումք այն の後置指示詞構造と յաւժարեն の lemma も Close 前に再確認済み。
ローマナイズ
Zi bazumkʿ ayn en, or aṙ ayspisi ałēts tarakusanacʿ i vačaṙakanutʿean aruests tuaytanawkʿ ankanel yawžaren.
定動詞 inventory
| No. | 語形 | lemma | 形態候補 | 節での役割 |
| 4 | են | եմ | 直説法現在3人称複数 | 主節の存在・コピュラ述語。「そのような者は多い」 |
| 15 | յաւժարեն | յօժարիմ | 直説法現在3人称複数 | որ 関係節の述語。「進んで~する/~する気になる」 |
初期所見
明示的定動詞は 2個。
14 անկանել は不定詞。
15 յաւժարեն が14 անկանել を不定詞補部として取る。
独立コーパスには յօժարեն … գործել「~することを望む/進んでする」型が確認できる(箴言21:25)。
target surface յաւժարեն は辞書・コーパスの յօժարեն に対応する正書法上の形として保持し、lemma は CALFA の Յօժարիմ, եցայ を採用する。
逐語分析 — 初期採用分析
| No. | 語形 | Romanize | 品詞・形態(初期分析) | 意味・機能 |
| 1 | Զի | zi | 接続詞・談話標識 | というのも、なぜなら。直前の叙述を説明する |
| 2 | բազումք | bazumkʿ | բազում・主格複数;名詞的用法 | 多くの者たち;主節の名詞的 head |
| 3 | այն | ayn | 後置指示詞 | 2 բազումք を後置修飾。「そのような」。複数 head に短形 այն が続く不一致は BAG1852 に平行例あり |
| 4 | են | en | եմ・直説法現在3人称複数 | ~である、いる |
| 5 | որ | or | 関係詞・節導入標識 | [2–3] բազումք այն を先行詞として関係節を導く |
| 6 | առ | aṙ | 前置詞 | 8 աղէտս(ACC.PL)を支配;原因・契機。「~に迫られて/~ゆえに」 |
| 7 | այսպիսի | ayspisi | 指示形容詞的語・前置修飾 | このような |
| 8 | աղէտս | ałēts | աղէտ・対格複数 | 災い、災厄、危難 |
| 9 | տարակուսանաց | tarakusanacʿ | տարակուսանք・属格複数 | 窮境・困惑・行き詰まりの。8 աղէտս を限定 |
| 10 | ի | i | 前置詞 | 12 արուեստս(ACC.PL)を支配;GOAL / ENTRY |
| 11 | վաճառականութեան | vačaṙakanutʿean | վաճառականութիւն・属格単数 | 商業、交易の |
| 12 | արուեստս | aruests | արուեստ・対格複数 | 技、営み、業。10とともに「商業の営みへ」 |
| 13 | տուայտանաւք | tuaytanawkʿ | տուայտանք・具格複数(後代綴字 տուայտանօք) | 様態的副詞成分。「苦難を伴って/苦難のうちに」;14 անկանել を直接修飾 |
| 14 | անկանել | ankanel | անկանել・不定詞 | 落ちる、入る、身を置く |
| 15 | յաւժարեն | yawžaren | յօժարիմ・直説法現在3人称複数 | 進んでする、~する気になる、望む |
初期的に強い関係
11 վաճառականութեան GEN
↓
12 արուեստս ACC.PL
↑
10 ի
したがって、
ի վաճառականութեան արուեստս
「商業の営みへ/商いの業へ」
を14 անկանել の方向・到達先を表す句とする。
また、
15 յաւժարեն
└─ 14 անկանել
└─ 10–12 ի վաճառականութեան արուեստս
すなわち「商業の営みへ入ることを進んで行う/望む」を関係節の中心構造とする。
構造図 — 採用分析
[1] Զի
「というのも」
│
▼
MAIN
[2] բազումք ←POST.DEM [3] այն ── [4] են
「そのような者は多い」
│
└─ REL [5] որ
│
├─ [6–9]
│ առ այսպիսի աղէտս տարակուսանաց
│ 「このような窮境の災いに迫られて」
│ CAUSE / MOTIVE
│
└─ [15] յաւժարեն
「進んで~する/~する気になる」
│
└─ INF [14] անկանել
「入る/身を投じる」
│
├─ GOAL [10–12]
│ ի վաճառականութեան արուեստս
│ 「商業の営みへ」
│
└─ MANNER [13] տուայտանաւք
INSTR.PL
「苦難を伴って」
完全 dependency tree を目的化せず、Sentence Close に必要な節骨格・主要項・修飾・非定形・coreference を採用分析として固定する。
本文読解 — 初期分析
直前の §3 は、危険な航海へ身を投じる商人について、その動機を「貪欲」ではなく、貧困・負債・課された負担から逃れるための切迫した必要として描いていた。
§4 第一文は、その議論をいったん一般化してまとめ直す文と読むことができる。
§3
困窮・負債
↓
危険を冒して航海する
↓
利益を得ようとする
§4 S001
「こうした窮境を前に、
商業の営みそのものへ身を投じる者は多い」
したがって、この文の「多くの者」は一般的な商人全体というより、まず直前で描かれた 必要に迫られて危険な商業活動へ入る者たち を受けている可能性が高い。
後続 §7 では、歴史家自身が
անկեալ ի վաճառականութիւն բանից
「言葉の交易という営みへ入って」
と述べる。これは §4 の
ի վաճառականութեան արուեստս ... անկանել
「商業の営みへ入る」
を、歴史叙述という自らの営みへ折り返す非常に近い語彙・構文上の呼応である。
したがって §4 S001 は第一次的には実際の商人について述べる文だが、§7 に至ると、危険と苦難を伴う交易への参入が、歴史家自身の「言葉の交易」への参入を準備する比喩的モデルだったことが遡及的に明瞭になる。この自己投影は §4 単独の文法的意味ではなく、後続文脈によって成立する文学的再読として区別して扱う。
文法解説 — 初期分析
''զի ...'' — 前段を受けた説明
文頭の զի は、直前までの商人の窮境について説明・理由を補う談話標識として読む。
ここでは単独の狭い原因節というより、
「なぜ人はそのような危険な商業活動へ入るのか」
↓
զի բազումք ...
「というのも、そのような者は多いのである」
という前段との説明関係を第一に見る。
''առ այսպիսի աղէտս տարակուսանաց'' — 原因・契機
8 աղէտս は対格複数で、6 առ の支配項。9 տարակուսանաց は տարակուսանք の属格複数として8を限定する。
առ
└─ այսպիսի աղէտս ACC.PL
└─ տարակուսանաց GEN.PL
「このような窮境の災厄ゆえに/これに迫られて」
REVIEW.001 では、առ + ACC の対象・関係用法だけでなく、原因用法と、14 անկանել の方向補部とする可能性も比較した。
HMB2018 §157 は առ + ACC に原因用法を明記し、առ չհանդուրժել … を例示する。ABR1976 §333.7 は名詞を伴う առ ցաւս ճչել「痛みのため叫ぶ」、առ նախանձ、առ սէր 等を原因用法として扱う。KOS1980 も առ ցաս …, առ սէրն …, առ սէր քոյոյ տէրութեանդ … など、抽象名詞が後続述語の動機・原因となる առ + ACC をまとめている。
一方、ABE1936 §210 には Անկաւ առ ծունկս նորա「彼の膝もとへ倒れた」があり、անկանել + առ + ACC の方向解そのものは文法的に可能である。したがって本箇所についても、
առ այսպիսի աղէտս ... անկանել
「こうした災厄へ陥る」
という第三候補を検討した。
しかし14 անկանել にはすでに10–12 ի վաճառականութեան արուեստս があり、HMB2018 §156 の ի + ACC 方向用法、および独立コーパスの անկանել ի ձեռս, անկանել ի գեհեն, ի թիւ անկանել と同じく、これを 「商業の営みへ入る」 という到達・移行先と読むのが自然である。ի + ACC には領域・限定用法も存在するため第三候補は形式上不可能ではないが、ここでそれを採ると、より典型的な անկանել + ի + ACC の方向構造を捨てて、առ + ACC に第二の方向解を担わせる必要が生じる。
さらに直前 §3 S002 は、
ոչ առ ագահութեան ...
այլ առ չգոյութեան ...
「貪欲のためではなく、欠乏のために」
と商人の行為を原因・動機の対照で説明する。§5 の ի բռնութենէ են հարկեալք、§6 の հարկ վտանգի … ստիպեալ զմեզ も、後続文脈で「必要・強制によって危険な営みへ押し出される」という主題を明示する。
以上から6–9は、14だけの方向補部ではなく、
CAUSE / MOTIVE
առ այսպիսի աղէտս տարակուսանաց
↓
յաւժարեն
└─ անկանել
└─ ի վաճառականութեան արուեստս
という関係を採る。
訳語は 「このような窮境の災厄に迫られて」 を採用する。「~を前にして」は日本語としては可能だが、文法分析上の原因性を弱めるため採用訳にはしない。
''ի վաճառականութեան արուեստս'' — 活動領域への参入(GOAL / ENTRY)
12 արուեստս を対格複数、11 վաճառականութեան をその属格限定とする。
ի
└─ արուեստս ACC.PL
└─ վաճառականութեան GEN.SG
REVIEW.003 により、10–12は14 անկանել の GOAL / ENTRY と確定した。
HMB2018 §156 は ի + ACC に方向用法と複数での ներգոյական(領域・内部)用法の双方を認めるため、格形だけでは決めない。ここでは述語 անկանել の変化・移行意味、同作者 §7 の անկեալ ի վաճառականութիւն բանից「言葉の交易という営みへ入って」、§840 の ածել յարուեստ դպրութեան「学問の営みへ導き入れる」が、活動・職業領域を 参入先 とする読みを強く支持する。
また HMB2018 §154 により、前置詞は支配名詞に属格修飾語がある場合、その修飾語の前に置かれ得る。したがって本文の
ի վաճառականութեան արուեստս
は、10 ի が11ではなく名詞句全体を導き、head 12 արուեստս(ACC.PL)を支配する正常な語順である。
したがって、
「商業の営みへ入る/商いの業へ身を投じる」
を採用する。
''տուայտանաւք'' — 具格複数・様態的副詞成分
13 տուայտանաւք は、REVIEW.002 により տուայտանք の具格複数と確定する。
CALFA / NBHL の見出しは、
Տուայտանք, նաց
であり、属格複数 տուայտանաց から斜格語幹 տուայտան- が確認できる。A 系複数具格の -աւք を加えると、
տուայտան- + աւք
→ տուայտանաւք
となる。
HMB2018 §74 は複数具格について ձեռաւք (օք) と明記し、古い綴字 -աւք と -օք の対応を直接示す。CALFA にも同一語の տուայտանօք が独立に実在し、
Հոսմամբ արտասուացն,
տուայտանօք տխրութեան դիմացն
եւ ես պաղատիմ։
のように述語 պաղատիմ に様態・付帯状況を加える。
JEN1959 §482 は具格が道具・手段だけでなく、様態などの副詞的関係を表すことを体系的に記述する。したがって本文の13は「道具としての苦難」ではなく、
「苦難を伴って/苦難のうちに」
という様態的具格とする。
構造上の直接付着先は、語順と語義から14 անկանել とする。
[14] անկանել
「入る/身を投じる」
├─ GOAL [10–12] ի վաճառականութեան արուեստս
└─ MANNER [13] տուայտանաւք
「苦難を伴って」
15 յաւժարեն は14の不定詞命題を補部に取るため、意味上は13の様態が複合述語全体にも波及する。しかしこれは 13を15へ直接付ける別構造を意味しない。
յաւժարեն
└─ [անկանել ... տուայտանաւք]
「苦難を伴って商業の営みへ入ることを望む」
と解析する。
CALFA / NBHL の Agathangelos 引用にある տուայտանաց は 属格複数であり、target の տուայտանաւք と形態的に同一ではない。この異読を採れば別の統語解析が必要になるが、現在の Phase 2 frozen target を読む限り、տուայտանաւք は独立に正規の具格複数として成立し、本文訂正を要求しない。
PHR2020 / GHAZ2012 では տուայտ- を含む固定慣用は確認されず、տուայտանաւք անկանել を lexicalized idiom とみなす根拠はない。
''անկանել յաւժարեն'' — 不定詞+「進んで~する」
15 յաւժարեն は CALFA の Յօժարիմ, եցայ に属する現在3人称複数で、辞書・独立用例の յօժարեն と対応する。「望む、進んでする、~する気になる」。Յօժարեմ 系は他動的「~するよう仕向ける」用例が中心なので、本箇所の第一 lemma には採らない。
独立コーパスにも、
ոչ յօժարեն ձեռք նորա գործել ինչ
「その手は何かをすることを望まない」
(箴言21:25)
のような յօժարեն + 不定詞 型が確認できる。
したがって、
անկանել յաւժարեն
「入ることを望む」
「進んで身を投じる」
を第一分析とする。
慣用表現・定型的結合
現段階で、文全体を左右する lexicalized idiom は確認していない。
յաւժարեն + infinitive — lemma յօժարիմ。「進んで~する/~する気になる」という補文構造として扱う。
ի … արուեստս անկանել — 現時点では自由な統語結合として扱い、慣用表現とは認定しない。
տուայտանաւք — տուայտանք の具格複数。「苦難を伴って/苦難のうちに」という様態的副詞成分。14 անկանել を修飾する。固定慣用とは認定しない。
参考文献一覧
Agathangelos, Պատմութիւն Հայոց, §4 S001;本文は Phase 2 frozen target。
Grabar Grammar KB v1.2 / Human Terminology v0.1.1 — 格支配・非定形・人間向け用語の統制。
BAG1852 / ABE1936 / ABR1976 / HMB2018 / JEN1959 / KOS1980 — առ・ի の格支配、後置指示詞の一致/不一致、具格副詞用法、不定詞補文。
CALFA / NBHL — Տարակուսանք, Տուայտանք, Վաճառականութիւն, Յօժարիմ / Յօժարեմ 関連項目。
箴言21:25 — յօժարեն … գործել の独立した構文平行例。
AGATH.§4.S001.REVIEW.001 — ''առ այսպիսի աղէտս տարակուսանաց'' の意味役割 — RESOLVED
結論:CAUSE / MOTIVE を採用。
առ [այսպիսի աղէտս ←GEN տարակուսանաց]
「このような窮境の災厄に迫られて/ゆえに」
│
└─ semantic scope:
[15] յաւժարեն
└─ [14] անկանել
└─ [10–12] ի վաճառականութեան արուեստս
6 առ は8 աղէտս(ACC.PL)を支配し、6–9全体を 15 յաւժարեն+その不定詞補部の原因・動機とする。
1. 文法資源:''առ + ACC'' に原因用法は実在する
初期ノートでは「対格なら方向/対象が中心」という KB synthesis から、原因解を慎重に保留した。しかし個別記述を確認すると、原因用法は明示されている。
HMB2018 §157:առ + ACC の第7用法として պատճառ「原因」 を立て、Եւ առ չհանդուրժել սրտին իւրոյ … を例示。
ABR1976 §333.7:同じく原因用法として առ ցաւս ճչել「痛みのため叫ぶ」、առ նախանձ「嫉妬から」、առ սեր「愛ゆえに」等を挙げる。
KOS1980:原因を表す առ + ACC に Առ ցաս իւր ճչիցէ, տրտմէին առ սէրն, Մեք առ սէր քոյոյ տէրութեանդ ոչ ինչ ընդդիմացաք քեզ 等を挙げる。
BAG1852 ¶273 にも Առ ցաւս իւր ճչել が見える。
したがって「原因なら DAT/ABL でなければならない」という制約は置けない。
2. B「対象・状況」も形態上可能だが、述語選択が弱い
HMB2018 §157 / ABR1976 §333 は առ + ACC に「~について/~に関して」の関係用法も認める。とくに
առ այսպիսի ճշմարիտ ասացածս ...
「このような真実の言説について……」
は表面上、本箇所の առ այսպիսի աղէտս … とよく似る。
しかしこの用法では、後続述語が「質問する・言う・評価する」等、対象・話題を自然に要求する。本箇所の յաւժարեն [անկանել …]「~へ入ろうとする/その気になる」に対して աղէտս を「~について」の対象とする積極的根拠は弱い。
したがって B は棄却する。
3. 探索中に追加した C「''անկանել + առ + ACC'' の方向補部」
ABE1936 §210 は、
Անկաւ առ ծունկս նորա։
「彼の膝もとへ倒れた」
を առ + ACC の方向用法として挙げる。
したがって本箇所も一時、
առ այսպիսի աղէտս տարակուսանաց ... անկանել
「こうした窮境の災厄へ陥る」
と読む可能性を追加した。これは文法的に実在する alternativeであり、初期二択には欠けていた。
4. C を採らない理由:''անկանել'' にはすでに ''ի + ACC'' の自然な移行先がある
10–12 は、
ի
└─ արուեստս ACC.PL
└─ վաճառականութեան GEN.SG
であり、14 անկանել と直結して
ի վաճառականութեան արուեստս անկանել
「商業の営みへ入る/商いの業へ身を投じる」
と読むことができる。
HMB2018 §156 は ի + ACC に「移動方向」を明記する。聖書コーパスにも、
անկանել ի ձեռս անօրինաց(2 Macc 14:42)
անկանել ի ձեռս Աստուծոյ կենդանւոյ(Heb 10:31)
անկանել ի գեհեն(Mark 9:44)
ի թիւ անկանել(Eccl 1:15)
のように անկանել + ի + ACC が到達・移行先を表す例がある。
ի + ACC に領域・限定用法があること自体は KOS1980 等から確認できるため、C は形式上不可能ではない。しかし C を採用するには、本文中で14に最も近く、かつ անկանել と典型的に結びつく10–12を「単なる領域」へ退け、離れた6–9を方向補部に昇格させる必要がある。これは A より説明コストが高い。
5. 談話連鎖
直前 §3 S002 は商人の危険行為を、
ոչ [առ ագահութեան]
այլ [առ չգոյութեան ...]
「貪欲のためではなく、欠乏のために」
という動機の訂正として説明する。
さらに後続では、
§5 ի բռնութենէ են հարկեալք
「強制によって迫られている」
§6 հարկ վտանգի հասեալ ստիպեալ զմեզ
「危難の必要が迫り、われわれを強いた」
と、必要・強制が危険な営みへ押し出す主題が明示される。
この談話連鎖は、6–9を原因・契機とする統語分析と独立に整合する。ただし文脈だけで格意味を決めたのではなく、上記1–4の格支配・述語選択を先に判定した上での補強証拠とする。
採用
[6–9] առ այսպիսի աղէտս տարակուսանաց
CAUSE / MOTIVE
「このような窮境の災厄に迫られて」
↓
[15] յաւժարեն
└─ [14] անկանել
└─ GOAL [10–12] ի վաճառականութեան արուեստս
棄却:
C は文法的に可能だが局所証拠で劣る実在 alternativeとして分析履歴に保存する。
訳への反映: 「このような窮境の災厄に迫られて」。
STATUS: RESOLVED.
AGATH.§4.S001.REVIEW.002 — ''տուայտանաւք'' の形態・attachment と本文異読 — RESOLVED
結論:
[13] տուայտանաւք
''տուայտանք''
INSTR.PL
MANNER
↓
[14] անկանել
└─ GOAL [10–12] ի վաճառականութեան արուեստս
13は տուայտանք の具格複数で、「苦難を伴って/苦難のうちに」という様態的副詞成分。統語上は14 անկանել に直接付ける。
15 յաւժարեն が14の不定詞命題を補部に取るため、意味上は「苦難を伴って商業へ入ることを望む」という複合述語全体に作用するが、構造上13を15へ直接付ける分析は採らない。
1. 形態:''տուայտանաւք'' は正規の具格複数
CALFA / NBHL の lemma は、
Տուայտանք, նաց
であり、տուայտանաց から斜格語幹 տուայտան- が確認できる。
Grammar KB の A 系曲用では複数具格 -աւք が明示される(BAG1852.NOM09.C001 ほか)。また HMB2018 §74 は、
ձեռաւք (օք)
と、複数具格の -աւք と -օք の対応を明記する。
したがって、
տուայտան- + աւք
→ տուայտանաւք
は形態的に透明な INSTR.PL である。
さらに CALFA には同じ語の後代綴字、
տուայտանօք
が独立用例として直接確認できる。
よって target の տուայտանաւք を「形態不明の異常形」と扱う必要はない。
2. 具格の機能:手段ではなく様態
JEN1959 §482 は具格について、道具・手段だけでなく 様態その他の副詞的関係を表すとする。例として խաղաղութեամբ「平安のうちに」、արտասուաւք「涙をもって」、տրտմութեամբ「悲しみをもって」等を挙げる。
CALFA / NBHL の独立例、
Հոսմամբ արտասուացն,
տուայտանօք տխրութեան դիմացն
եւ ես պաղատիմ։
でも տուայտանօք は「苦悩を手段として」ではなく、祈願行為に伴う様態・状態を表している。
したがって本文でも、
տուայտանաւք
「苦難を伴って/苦難のうちに」
とする。
3. attachment:14 ''անկանել'' を直接修飾
初期 Review は、
という二択だった。
しかしこれは syntactic attachment と semantic scope を同一視した二択だった。
13は14の直前に位置し、語義的にも「苦難を伴う」のは「望む」という態度そのものより、
անկանել ի վաճառականութեան արուեստս
「商業の営みへ入る」
という事態の様態として自然である。
したがって structural projection では、
անկանել
├─ GOAL: ի վաճառականութեան արուեստս
└─ MANNER: տուայտանաւք
とする。
一方15 յաւժարեն はこの不定詞命題を丸ごと補部に取るため、
յաւժարեն
└─ [տուայտանաւք անկանել ի վաճառականութեան արուեստս]
という意味構成になる。つまり13の意味効果は複合述語全体にも自然に及ぶが、直接の統語付着先は14である。
これにより初期 A/B は排他的 alternative ではなく、
として整理し直す。
4. CALFA / NBHL の ''տուայտանաց'' 異読
辞書引用の Agathangelos は、
... ի վաճառականութեան արուեստս
տուայտանաց անկանել յօժարեն
と տուայտանաց(GEN.PL) を持つ。
これは target の、
տուայտանաւք INSTR.PL
と一文字差の正書法 variant ではなく、格そのものが異なる substantive variant である。
տուայտանաց を採用する場合、13を様態的具格として読むことはできず、արուեստս などへの属格付加を含む別構造を検討しなければならない。しかし辞書引用だけからその構造を一意に回収することはできない。
現在の authoritative text は Phase 2 frozen target の տուայտանաւք であり、この形は上記1–3の通り独立に完全な形態・統語解を持つ。したがって辞書引用を理由に本文訂正・emendation は行わない。
異読は textual note として保持する。
5. 慣用表現チェック
PHR2020 frozen chunks と GHAZ2012 に տուայտ- の該当固定表現は確認できなかった。CALFA も տուայտանաւք անկանել を独立した phraseological entry としては提示しない。
したがって、
տուայտանաւք + անկանել
は 自由な「具格様態成分+不定詞」 として扱う。
採用
[13] տուայտանաւք
INSTR.PL
MANNER
「苦難を伴って」
↓
[14] անկանել
「入る/身を投じる」
└─ [10–12] ի վաճառականութեան արուեստս
GOAL
「商業の営みへ」
[15] յաւժարեն
└─ 上の不定詞命題を補部として取る
訳への反映:
「苦難を伴いながら商いの営みに身を投じようとする」
を維持する。
STATUS: RESOLVED.
AGATH.§4.S001.REVIEW.003 — ''ի վաճառականութեան արուեստս'' は GOAL / ENTRY か DOMAIN か — RESOLVED
判別した問い:
10–12
ի վաճառականութեան արուեստս
を14 անկանել に対して、
のどちらと読むべきか。
結論:A = GOAL / ENTRY を採用。
[14] անկանել
「入る/身を投じる」
└─ GOAL / ENTRY
[10] ի
└─ [12] արուեստս ACC.PL
└─ GEN [11] վաճառականութեան
「商業の営みへ」
1. 形態だけでは A/B を決められない
12 արուեստս は ACC.PL。HMB2018 §156 は ի + ACC に、
の双方を認める。
ABE1936 §§205, 207–208、ABR1976 §353 も同様に、ի + ACC が方向だけでなく、特に複数で「~の中で」に相当する ներգոյական を表し得ることを明記する。
したがって、
ի + արուեստս ACC.PL
という形だけから「~へ」と決めることはできない。
2. 語順:10 ''ի'' は12 ''արուեստս'' を支配できる
本文では、
ի վաճառականութեան արուեստս
GEN.SG ACC.PL
と、前置詞10 ի と head 12 արուեստս の間に11 վաճառականութեան が入る。
HMB2018 §154 は、支配される語に լրացում「補部・修飾語」がある場合、前置詞がその修飾語の前に置かれ得ると明記する。
したがって、
ի [վաճառականութեան [արուեստս]]
という句頭前置詞構造は正常であり、10 ի を11 վաճառականութեան のみに直接支配させる必要はない。
採用構造は、
ի
└─ արուեստս ACC.PL
└─ վաճառականութեան GEN.SG
である。
3. 述語 ''անկանել'' は抽象的な到達・状態変化先を ''ի + ACC'' で取る
独立コーパスには、
անկանել ի ձեռս ...
「~の手に落ちる」
ի թիւ անկանել
「数の中に入る」
անկանել ի գեհեն
「ゲヘナへ落ちる」
անկանել ի հուրն յաւիտենական
「永遠の火へ落ちる」
などがあり、անկանել + ի + ACC は物理空間だけでなく、抽象的な所属・状態・領域への移行を普通に表す。
CALFA Արուեստ 項にも、
Ի դիւթական արուեստի խաբէութիւնս անկանէին։
のように、անկանել が抽象的内容への移行を表す例がある。
4. 同作者 §7 のほぼ直接的な平行
最も強い証拠は、Agathangelos 自身の §7 である。
Եւ մեր զայս ջան յանձին կալեալ,
անկեալ ի վաճառականութիւն բանից ...
すなわち、
「そしてわれわれもこの労を身に引き受け、言葉の交易という営みへ入って……」
という表現がある。
ここでは、
անկեալ
└─ ի վաճառականութիւն բանից
と、անկանել + ի + վաճառականութիւն が直接成立している。
§4 の実際の商人についての
ի վաճառականութեան արուեստս ... անկանել
を受け、§7 では歴史家自身が比喩的に
անկեալ ի վաճառականութիւն բանից
「言葉の交易へ入る」
と自己投影する構図になっている。
したがって §4 でも ի վաճառականութեան արուեստս は、単なる「商業活動の領域内で」ではなく、商業という営みへの参入先として読むのが最も自然である。
5. 同作者 §840 の ''արուեստ'' 平行
Agathangelos §840 には、
բազմութիւն մատաղ մանկտւոյ ածել յարուեստ դպրութեան
「多くの若者を学問・書記の営みへ導き入れる」
という構造がある。
ここでも արուեստ は単なる「技法」ではなく、人が入ってゆく学習・職業的活動領域を表す。
これは、
ի վաճառականութեան արուեստս անկանել
を「商業の営みへ入る」と読む語彙的根拠を補強する。
6. B = DOMAIN を採らない理由
Bなら、
ի վաճառականութեան արուեստս
「商業活動の中で」
を背景領域とし、14 անկանել の変化先を別に求める必要がある。
しかし target text で残る13 տուայտանաւք は REVIEW.002 により INSTR.PL / MANNER「苦難を伴って」であり、անկանել の到達・結果状態を表す補部ではない。
DOMAIN: ի վաճառականութեան արուեստս
MANNER: տուայտանաւք
PRED: անկանել
とすると、անկանել の「何へ/どの状態へ陥るか」が無標示となり、同作者 §7 の直接平行も利用できなくなる。
一方 A なら、
անկանել
├─ GOAL / ENTRY: ի վաճառականութեան արուեստս
└─ MANNER: տուայտանաւք
と、述語の項構造が明瞭に閉じる。
したがって B は形式上可能な ի + ACC の一般用法ではあるが、この述語・この語彙・この作者平行では劣る。
採用
[15] յաւժարեն
└─ [14] անկանել
├─ GOAL / ENTRY [10–12]
│ ի վաճառականութեան արուեստս
│ 「商業の営みへ」
└─ MANNER [13]
տուայտանաւք
「苦難を伴って」
訳への反映:
「苦難を伴いながら、商いの営みに身を投じようとする」
を維持する。
REVIEW.001 への波及:
REVIEW.001 で、6–9 առ … աղէտս を14 անկանել の方向補部とする alternative C を棄却する際に仮置きしていた「10–12が14の GOAL」という前提は、本 REVIEW により独立に確認された。したがって REVIEW.001 の結論は補強される。
STATUS: RESOLVED.