目次

アガタンゲロス『アルメニア人の歴史』— 精読ノート(§10 S005・TRUE AMBIGUITY)

原文

1Մատուցին 2պսակ 3պարծանաց 4լուսաւոր 5թագաւորին, 6զերծեալք 7ի 8բքոյ 9ամբարշտութեան, 10հասեալք 11ի 12քաղաքն, 13պատրաստեալք 14անանց 15ուրախութեան 16եւ 17առլցեալք 18մարգարտովն 19պատուականաւ, 20եւ 21հոգեւոր 22լուսոյ 23ակամբք 24պսակեալք.

本文状態: Phase 2 frozen target v1.0.1 / authoritative sentence AGATH.§10.S05 を無変更で採用。surface SHA-256 = f581912a1a04e3662278f5ea9088f46d84978a87d65b07f59af4a1ebda4c13f2。token count = 24。

校合注意: target մարգարտովն を保持する。TITUS մարդարտովն は Phase 2 retriage で transcription error signature として CLOSED。

最終状態: CLOSED WITH TRUE AMBIGUITY.

本ページは、初回 CLOSE 後の再検討によって構造分析を改訂した版である。初回の「5つの過去分詞を一枚岩の same-subject participial chain とする」分析は撤回する。採用する共有分析は、6–12 と 13–24 が異なる層をなすという点まで。13–24 の統語的地位について A2 / B の二分析を真正の曖昧性として保持する。

試訳

source-near:

「彼らは光り輝く王に栄光の冠を捧げた――不敬虔の嵐から免れ、都に到達し、過ぎ去らぬ喜びに備えられ、その貴い真珠に満たされ、また霊的な光の宝石で冠せられて。」

reader-facing:

「不敬虔の嵐を脱して都にたどり着いた彼らは、過ぎ去らぬ喜びに備えられ、その貴い真珠に満たされ、霊的な光の宝石で冠せられつつ、光り輝く王に栄光の冠を献げた。」

この reader-facing 訳は日本語として流暢にまとめたものであり、A2 / B の統語差を訳文だけで決着させるものではない。B を採っても「冠を献げた。そのとき彼らは……備えられ、満たされ、冠せられた状態にあった」とほぼ同じ内容へ収束する。

ローマナイズ

逐語分析 — 採用部分

No. 語形 品詞・形態 採用する意味・機能
1 Մատուցին մատուցանեմ・AOR.IND.3PL 主節の明示的定動詞。「捧げた」
2 պսակ պսակ・ACC.SG 1の直接目的語。「冠」
3 պարծանաց պարծանք・GEN.PL 2を限定。「栄光/誉れの」
4 լուսաւոր լուսաւոր・形容詞 5を修飾。「光り輝く」
5 թագաւորին թագաւոր・DAT.SG.DEF 1の受領者。「王に」
6 զերծեալք զերծանիմ・過去分詞 NOM.PL 前半層。先行事態的。「免れて」
7 ի 前置詞 8 ABL.SG と離脱・起点を形成
8 բքոյ բուք・ABL.SG 6の離脱源。「嵐/苦難から」
9 ամբարշտութեան ամբարշտութիւն・GEN.SG 8を限定。「不敬虔の」
10 հասեալք հասանեմ・過去分詞 NOM.PL 前半層。先行事態的。「到達して」
11 ի 前置詞 12 ACC.SG.DEF と方向・到達先を形成
12 քաղաքն քաղաք・ACC.SG.DEF 10の到達先。「都へ」
13 պատրաստեալք պատրաստեմ・過去分詞 NOM.PL 後半層。状態・結果性が強い。「備えられた/備えられている」
14 անանց անանց・形容詞 15を修飾。「過ぎ去らぬ、永遠の」
15 ուրախութեան ուրախութիւն・GEN/DAT.SG 同形 13の goal/complement。格名は過剰決定しない
16 եւ 接続詞 後半三項の第1・第2述語/分詞成分を接続
17 առլցեալք առլնում・過去分詞 NOM.PL 後半層。状態・結果性が強い。「満たされた/満たされている」
18 մարգարտովն մարգարիտ・INS.SG.DEF 17の内容具格。「その真珠に/で」
19 պատուականաւ պատուական・INS.SG 18に一致。「貴い」
20 եւ 接続詞 後半三項の最終成分を追加
21 հոգեւոր հոգեւոր・形容詞 22を修飾。「霊的な」
22 լուսոյ լոյս・GEN.SG 23を限定。「光の」
23 ակամբք ակն「宝石」・INS.PL 24の装飾具格。「宝石で」
24 պսակեալք պսակեմ・過去分詞 NOM.PL 後半層。状態・結果性が強い。「冠せられた/冠せられている」

高確度の共有構造

初回分析で問題だったのは、6・10・13・17・24 がすべて -եալք NOM.PL であることから、5項を同一レベルの「同一主語副詞的分詞連鎖」として一括した点である。

再検討後、少なくとも次の 2 + 3 の層分化は高確度で採用する。

implicit participant = 「彼ら」

MAIN
[1–5] Մատուցին պսակ պարծանաց լուսաւոր թագաւորին
      「光り輝く王に栄光の冠を捧げた」

LAYER I — eventive / anterior
[6–9]  զերծեալք ի բքոյ ամբարշտութեան
       「不敬虔の嵐から免れ」

[10–12] հասեալք ի քաղաքն
        「都に到達して」

LAYER II — stative / resultative semantics
[13–15] պատրաստեալք անանց ուրախութեան
        「過ぎ去らぬ喜びに備えられた状態」

[16–19] եւ առլցեալք մարգարտովն պատուականաւ
        「そして、その貴い真珠に満たされた状態」

[20–24] եւ հոգեւոր լուսոյ ակամբք պսակեալք
        「そして、霊的な光の宝石で冠せられた状態」

前二項は出来事性・先行性が強い。後三項は եւ … եւ … で明示的に並列され、意味的にも主体の状態・結果状態を描く性格が強い。

TRUE AMBIGUITY — A2 / B

A2 — 単一有限節内の意味的二層化

後半三項も 1 Մատուցին に従属する。ただし前二項とは意味関係が異なり、前二項が先行事態、後三項が主事態成立時の主体の状態を表す。

Մատուցին ...
   ├─ anterior circumstances
   │   զերծեալք ...
   │   հասեալք ...
   │
   └─ attendant-state circumstances
       պատրաստեալք ...
       եւ առլցեալք ...
       եւ պսակեալք ...

日本語では概ね:

「彼らは、不敬虔の嵐から免れ、都に到達し、過ぎ去らぬ喜びに備えられ、その貴い真珠に満たされ、霊的な光の宝石で冠せられた状態で、王に栄光の冠を捧げた。」

と表せる。

B — 無コピュラの自立的過去分詞述語列

12/13 付近で predication の層が切り替わり、13・17・24 は暗黙の複数主語を共有する自立的な過去分詞述語となる。明示コピュラはない。

Մատուցին ...
   └─ anterior circumstances
       զերծեալք ...
       հասեալք ...

---------------- predication boundary ? ----------------

Ø-SUBJ
   պատրաստեալք ...
   եւ առլցեալք ...
   եւ պսակեալք ...
Ø-COPULA

日本語では概ね:

「彼らは不敬虔の嵐から免れ、都に到達して、王に栄光の冠を捧げた。そのとき彼らは、過ぎ去らぬ喜びに備えられ、その貴い真珠に満たされ、霊的な光の宝石で冠せられた状態にあった。」

と表せる。

B は古典アルメニア語研究でいう 迂言完了(periphrastic perfect) の構文領域に入り得る。ただし、この名称から「~してしまった」「動作が完結した」という意味を自動的に導いてはならない。ここでの perfect は perfective(完結相)ではなく、また PIE Perfect の直接継承を意味しない。個別用例の意味は状態的・結果的・先行的・過去叙述的などを別途判定する。

探求記録 — なぜ初回 CLOSE を再開したか

1. 初回分析のアンカー

初回は、6・10・13・17・24 がすべて NOM.PL の過去分詞で、主語が同じ複数 participant であることから:

FINITE [Մատուցին]
  + SAME-SUBJECT PARTICIPIAL CHAIN × 5

とした。

しかし表面順序は:

FINITE → PTCP → PTCP → PTCP → PTCP → PTCP

であり、既知の典型的な PTCP → FINITE 型とかなり異なる。さらに意味的にも前二項と後三項の性格が違う。この surface–analysis tension を初回 CLOSE では十分に評価していなかった。

2. HAY2005 — 語順は診断材料だが、単独では決着しない

HAY2005 Ch.3 pp.148–149 / frozen evidence chunks 000076–000077。

HAY は分詞句で表される様態成分が通常は支配要素に前置されると述べ、たとえば:

Գետն Երասխ հատեալ զքարանձաւս լերանց՝ անցանէ ...
Ամբարձեալ զձեռս իւր՝ օրհնեաց զնոսա

を挙げる。

また、支配動詞と同根・同義で意味を強める特殊な「付加的様態成分」については、調査した90例余りで過去分詞成分が例外なく前置されたと報告する(HAY2005.NFIN07.C001)。

ここで重要な修正点がある。KB の HAY2005.NFIN08.C003 は一見「副詞的過去分詞一般が90例余りすべて前置」と読めるが、原記述の定量観察は 支配動詞と同根・同義で意味を強める特殊な subtype に限定される。したがって「後置だから副詞分詞ではない」とは言えない。

実際 HAY p.150 では、過去分詞で表される原因成分について「後置は稀で、多くは切り離し・論理的強調を伴う」としながら、明示的な後置例:

Կործանի՝ ... ի պարտութիւն մատնեալ

を挙げる。

結論: S005 の FINITE → PTCP 群は無標の典型ではないが、後置そのものは A2 を排除しない。

3. JEN1959 §366 — 歴史叙述の無コピュラ過去分詞

JEN1959 §366 / frozen evidence chunk 000363 / JEN1959.SYN19.C003。

Jensen は、分詞+コピュラからなる迂言的時制でコピュラがしばしば省略されると述べる。翻訳文献では稀だが、歴史家では非常に頻繁で、過去分詞がほとんど「物語時制」のように働くと説明する。

例として Koriun の:

յայնժամ վավաղակի հրաման առեալ ի թագաւորէն

を挙げ、後続する主節がないため単なる participium conjunctum ではない、と明示する。

結論: 「明示定動詞/コピュラがない ⇒ 副詞的分詞」という推論は成立しない。B は正規の候補として立てなければならない。

4. MEY2023 — main verb / converb の操作的区別

MEY2023 §5.3 Data Analysis, p.133 / frozen evidence chunk 000228。

Meyer はコーパス分類で、過去分詞を main verb とする条件として:

を挙げる。

それ以外で main verb に付加される過去分詞を converb とし、多くは main-verb action に先行または同時の、より背景的な事態を表すとする。

この定義は、S005 の:

զերծեալք ...
հասեալք ...

պատրաստեալք ...
եւ առլցեալք ...
եւ պսակեալք ...

における前2/後3の違いを可視化する強い契機となった。ただし BAG ¶583 が示すように、եւ coordination だけで main-predicate status を自動判定してはならない。

MEY2023 §5.3.2.1.2, p.141 / chunks 000240–000241 には、明示コピュラなしで複数の過去分詞が main-verb series として扱われる例:

omanc‘ cneal,
ew oč‘ snuc‘eal,
i č‘ap‘ hasuceal,
ew anargeal t‘šnamanōk‘

がある(P‘B IV.5.32)。Meyer の英訳は「ある者たちは生まれたが養育されず、成人に達し、侮辱によって辱められた」の意。

また同頁の Ełišē 例では、過去分詞 aṙeal にコピュラがないことを明示して、transitive perfect の main verb と分類している。

5. MEY2023 — Agathangelos におけるコピュラの頻度

MEY2023 Table 5.4, p.149 / chunk 000255、§5.3.2.2.3 pp.149–150 / chunks 000256–000257、MEY2023.TAM07.C002。

Agathangelos の perfect-tense main verbs では:

指標 Agathangelos
明示コピュラを伴う main verbs 全体 194
全 main verbs に占める明示コピュラ率 52.0%
ITR.ACT の明示コピュラ率 57.5%
TR.ACT の明示コピュラ率 28.9%

したがって Agathangelos 全体で「無コピュラが多数」と単純化するのは正確でないが、無コピュラ main predicate は非常に普通である。特に transitive active では無コピュラが多数派。

Meyer は5世紀中にコピュラ使用が大きく増える通時傾向を示し、初期文献ではコピュラがまだ少数パターンであったとする。

6. MEY2023 — “perfect” という名称の意味論的罠

MEY2023 §5.5, p.161 / chunks 000279–000280。

Meyer は自身のコーパス分析について、perfect の semantics と、その syntactic implications は考慮していないと明記する。したがって Meyer の “periphrastic perfect” は、この調査ではかなり操作的・構文的な分類であり、そこから「~してしまった」「完結した出来事」という意味を演繹してはならない。

同頁注45は、Ouzounian・Semënova らが perfect の主要意味の一つを resultative と分析することを紹介する。

本 pilot では術語対応として 迂言完了 = periphrastic perfect を維持する。ただし:

という注意を固定する。

7. BAG1852 ¶583 — A2 を残す強い対抗証拠

BAG1852 ¶583 / frozen evidence chunk 000548。

Bagratuni は、過去分詞が定動詞に付加され、副詞的に գոլով 等で解釈できる例を大量に挙げる。

S005 と表面構造が非常に近い例:

Ցրուեցան՝ անհնարինս յիմարեալք
եւ խուճապեալք
եւ խռովեալք ...

は:

FINITE
→ PTCP.PL
→ եւ PTCP.PL
→ եւ PTCP.PL

となり、FINITE 後に状態的な過去分詞が複数並列されても、それだけで独立主述語とは限らないことを示す。

さらに:

Իմաստուն կուսանքն պատրաստ մտանեն՝
ճրագունք վառեալք ...

իսկ յիմար կուսանքն ...
ճրագք անցեալք,
գլուիք խոնարհեալք,
սիրտք տրտմեալք ...

について Bagratuni は:

վառեալ գոլով
անցեալ գոլով
խոնարհեալ գոլով
տրտմեալ գոլով

と説明する。

結論: 後半三項が state/result semantics を持ち、եւ で並列されていることだけでは B を確定できない。A2 は強く残る。

8. BAG1852 ¶584・¶1246・¶1252 — B を正規候補にする証拠

一方 BAG は、過去分詞が自立して定動詞相当となる用法も明確に認める。

BAG1852 ¶584 / chunk 000549 は、過去分詞を「過去時制の不定詞的/分詞的形式」として、暗黙に գոլ を持つ、または定動詞の代わりに用いられる例を示す。

たとえば:

ապաշխարեալ Սողոմոնի ...

を:

ապաշխարեալ է

と解し、

կարգեալ ...

を:

կարգեալ էր

と解する。

BAG1852 ¶1246 / chunk 001118 はさらに直接的で、「過去分詞は定動詞に依存せず、それ自体で定動詞の代わりに、通常は過去時制として用いられる」とする。

例:

Յայնմ ժամանակի ... դեսպանս արձակեալ.
պատուիրակս հանեալ ընդ աշխարհ ...

を:

արձակէին, հանէին

と解釈する。

また:

Նա եկեալ եւ յարուցեալ ...
... ոչ փոխեալ ...

を:

եկն եւ յարեաւ, ոչ փոխեաց

と有限動詞列へ言い換える。

同段落には Agathangelos(ԱԳ.)の用例に続いて 「այստեղ / այդ աղբյուրում այս ձևը շատ հաճախակի է」趣旨の ուր կարի յաճախ է ձևդ という注記があり、Agathangelos にこの型が非常に頻繁であると Bagratuni が観察している。

BAG1852 ¶1252 / chunk 001124 は、過去分詞に伴う էական բայ の省略を扱い:

որք ... ասասցեալք

を:

ասացեալք (են)

とし、

որք յԱդամայ արտմեալք

を:

արտմեալք (էին)

と復元する。

結論: B は「無理に補った特殊解」ではなく、古典文法が明示的に認める通常の分析候補である。

なぜ A2 / B を一意に裁定しないか

調査後、両案について次が確認された。

観察 A2との整合 Bとの整合
FINITE Մատուցին の後に分詞群が続く BAG ¶583 が直接支持 排除しない
前2が eventive/anterior 強く整合 強く整合
後3が state/result semantics 強く整合 強く整合
後3が եւ … եւ … で並列 可能。BAG ¶583 が実例を示す MEY の main-verb criterion と整合
13–24 に明示コピュラがない 問題なし JEN・MEY・BAG が無コピュラ主述語を直接支持
12/13 に明示的節接続詞がない A2に有利とも見える Bを排除するほどではない
日本語訳 「その状態で献げた」 「献げた時、その状態にあった」
命題内容 ほぼ同じ ほぼ同じ

したがって、残る差は主として:

13–24 が 1 Մատուցին に従属する circumstantial predication か、それとも新しい independent assertion か

という統語・談話構造上の差である。

局所本文には、この差を一意に決定する明示標識がない。追加資料を探索すればいつか形式的決定打が得られる、という種類の OPEN ではなく、現時点の文法資料と本文証拠の双方が A2 / B を実在する選択肢として許す。

よって TRUE AMBIGUITY とする。

構造図 — 最終版

implicit participant = 「彼ら」

[1–5] MAIN
Մատուցին պսակ պարծանաց լուսաւոր թագաւորին
「光り輝く王に栄光の冠を捧げた」
       │
       ├─ LAYER I [6–12]
       │   eventive / anterior
       │   ├─ զերծեալք ...
       │   └─ հասեալք ...
       │
       └─ LAYER II [13–24]
           stative / resultative semantics
           ├─ պատրաստեալք ...
           ├─ եւ առլցեալք ...
           └─ եւ ... պսակեալք ...
                 │
                 ├─ A2:
                 │   circumstantial attachment to Մատուցին
                 │   「そのような状態で冠を捧げた」
                 │
                 └─ B:
                     independent copula-less predication
                     「冠を捧げた。その時そのような状態にあった」

A2 / B = TRUE AMBIGUITY

語彙・局所統語の確定事項

''պսակ պարծանաց լուսաւոր թագաւորին''

2 պսակ は 1 Մատուցին の theme として ACC.SG。3 պարծանաց GEN.PL が限定し「栄光/誉れの冠」。

5 թագաւորին は GEN/DAT.SG 同形だが、HMB2018 §157 と մատուցանեմ の valency により DAT.SG recipient。「光り輝く王に」。

''զերծեալք ի բքոյ ամբարշտութեան''

6 զերծեալք は զերծանիմ past participle NOM.PL。「免れる/逃れる」。

7 ի + 8 բքոյ ABL.SG は separation/source。CALFA բուք は storm / tribulation を含む。9 ամբարշտութեան GEN.SG。

「不敬虔の嵐/苦難から免れて」。

''հասեալք ի քաղաքն''

10 հասեալք + 11 ի + 12 քաղաքն ACC.SG.DEF。

「都に到達して」。

12 քաղաքն 自体には「天上の」という形容詞はないため、試訳では補わない。

''պատրաստեալք անանց ուրախութեան''

13 պատրաստեալք past participle NOM.PL。

15 ուրախութեան は GEN/DAT.SG 同形。形態格を一意化せず、function = goal/complement とする。

14 անանց は「過ぎ去らぬ、永続する」。

「過ぎ去らぬ喜びに備えられた/備えられている」。

''առլցեալք մարգարտովն պատուականաւ''

17 առլցեալք past participle NOM.PL。18 մարգարտովն INS.SG.DEF + 19 պատուականաւ INS.SG。

「その貴い真珠に満たされた/満たされている」。

§8 S001 զմարգարիտն պատուական、§10 S001 Այսպիսի մարգարիտ を再活性化する。

''հոգեւոր լուսոյ ակամբք պսակեալք''

23 ակամբք は ակն INS.PL。「目」と「宝石」の同形だが、文脈・装飾具格・語彙証拠から gem sense を採用。

21 հոգեւոր → 22 լուսոյ GEN.SG → 23 ակամբք INS.PL。

24 պսակեալք past participle NOM.PL。

「霊的な光の宝石で冠せられた/冠せられている」。

本文読解

S004 は殉教者たちを、罪の嵐・波・深みを航海し、平安の港へ向かう者として描いた。S005 の前半層はその航海を:

不敬虔の嵐から免れる
      ↓
都に到達する
      ↓
王に栄光の冠を捧げる

へ進める。

後半三項は、その主体を:

過ぎ去らぬ喜びに備えられ
      +
貴い真珠に満たされ
      +
霊的な光の宝石で冠せられた

者として描く。

A2 / B のどちらを採っても、この本文的意味はほぼ同じである。差は、これを「冠を捧げる時の状態」として従属的に提示するか、「冠を捧げた」という叙述に続く独立の状態 assertion とするかにある。

§8 の pearl / gem / crown motif

§8 では:

մարգարիտն պատուական
「貴い真珠」

ականք պատուականք
「貴い宝石」

ճաճանչաւոր լոյս
「輝く光」

が王冠装飾の比喩として現れた。

S005 では:

մարգարտովն պատուականաւ
「その貴い真珠に」

հոգեւոր լուսոյ ակամբք
「霊的な光の宝石で」

պսակեալք
「冠せられた」

として再結合される。

文頭では彼らが王へ պսակ「冠」を捧げ、文末では彼ら自身が պսակեալք「冠せられた者」となる。この crown → crowned の包囲は、A2 / B のいずれでも保持される。

文法解説 — 読解上の教訓

1. 過去分詞の形態一致だけで統語階層を潰さない

同じ PTCP.PAST.NOM.PL が連続しても、全項が同じ統語関係・同じ意味関係とは限らない。本例では、前2項と後3項の eventivity / stativity、coordination pattern、談話機能を別に観察する必要があった。

2. 「迂言完了」という名称から意味を逆算しない

periphrastic perfect は西欧研究で定着した術語なので、日本語でも 迂言完了 を維持する。しかし名称だけから:

を自動付与しない。

まず:

morphology
  過去分詞

syntax
  副詞的分詞 / 定動詞相当述語 / その他

semantics
  stative / resultative / anterior / narrative-past ...

source classification
  必要に応じて periphrastic perfect

の順に分離して考える。

3. 訳文の一致は構造同一性を証明しない

A2 と B は日本語に流暢に訳すとほぼ同じところへ着地する。したがって translation consistency が PASS しても、attachment / predication の曖昧性が消えたことにはならない。

Evidence map

資料 位置 今回の役割
HAY2005 Ch.3 pp.148–149 / chunks 000076–000077 副詞的過去分詞の前置傾向と、後置も可能であることを確認。90例余りの例外なし前置は特殊な同義強意 subtype に限定
HAY2005 Ch.2 pp.70–71 / chunk 000036 分詞述語と後続定動詞の shared-subject 配列を確認。典型は PTCP → FINITE
JEN1959 §366 / chunk 000363 歴史家で copula-less participial predicate が頻繁で narrative tense 的に働くことを確認
MEY2023 §5.3 p.133 / chunk 000228 main verb / converb の操作的分類基準
MEY2023 §5.3.2.1.2 pp.140–141 / chunks 000240–000241 無コピュラ過去分詞 main-verb series と nominative-agent perfect の実例
MEY2023 Table 5.4 p.149 / chunk 000255 Agathangelos の copula frequency
MEY2023 §5.3.2.2.3 pp.149–150 / chunks 000256–000257 5世紀中の copula 使用増加
MEY2023 §5.5 p.161 / chunks 000279–000280 perfect semantics を corpus classification では検討していないという明示的留保
BAG1852 ¶583 / chunk 000548 FINITE → PTCP.PL + եւ PTCP.PL + եւ PTCP.PL の副詞的/状態的実例。A2 の強い対抗証拠
BAG1852 ¶584 / chunk 000549 過去分詞に暗黙の գոլ / finite-equivalent reading を認める
BAG1852 ¶1246 / chunk 001118 過去分詞が定動詞に依存せず、自立して定動詞の代わりになる用法。Agathangelos で頻繁との注記
BAG1852 ¶1252 / chunk 001124 過去分詞とともに省略された copula を են / էին と復元する例

最終裁定

確定:

真正の曖昧性:

局所本文および確認した HAY / JEN / MEY / BAG の証拠では、A2 / B のいずれか一方を排除する決定的根拠は得られない。両者は文法的に実在する分析であり、命題内容もほぼ収束する。

これは「調査不足による未解決」ではなく、十分な探索後に残った構造曖昧性と判定する。

Review status:

SENTENCE CLOSE: PASS — TRUE AMBIGUITY RETAINED.

STATUS: CLOSED WITH TRUE AMBIGUITY.

再開条件は、Agathangelos 内の非常に近い構文で A2 / B の一方を明示的に識別できる新しい比較証拠、またはこの箇所自体の統語境界を実質的に決定する一次資料上の新証拠が得られた場合とする。