1զայս 2վէպ 3պատմեն 4մերձաւոր 5սիրելեաց - 6զանցս 7եղելոյ 8աշխատութեան 9ուղւոյն 10ճանապարհաց, 11զելեւէջս 12տարաբեր 13անդադարն 14սահանաց, 15գրաւական 16եդեալ 17զանձինս 18շահաւորն 19աւգտութեան, 20եւ 21կէտ՝ 22զմահ 23մրցանաց 24յաղթութեան։
番号は下の「逐語分析」「構造図」の番号と対応する。
「彼らはこの物語を身近な親しい者たちに語る――旅路で味わった苦難の数々、絶えず変転する奔流の上り下りを。そして、利益ある利得の担保として自らを置き、勝利をめぐる競いの終点として死を〔置く〕、というのである。」
Zays vēp patmen merjawor sireleacʿ — zancʿs ełeloy ašxatutʿean ułwoyn čanaparhacʿ, zelewēǰs taraber andadarn sahanacʿ, grawakan edyeal zanjins šahaworn awgtutʿean, ew kēt՝ zmah mrcʿanacʿ yałtʿutʿean.
| No. | 語形 | Romanize | 品詞・形態 | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | զայս | zays | ցուցական դերանուն այս・զ- を伴う対格単数 | この |
| 2 | վէպ | vēp | 名詞・対格単数;1 と一体で3の目的語 | 物語、叙述 |
| 3 | պատմեն | patmen | պատմեմ・直説法現在3人称複数 | 彼らは語る、物語る |
| 4 | մերձաւոր | merjawor | 形容詞;5を前置修飾 | 近しい、身近な |
| 5 | սիրելեաց | sireleacʿ | սիրելի の名詞的用法・与格複数 | 愛する者たちに、親しい者たちに |
| 6 | զանցս | zancʿs | անց・対格複数 | 出来事、身に起きたこと、経験 |
| 7 | եղելոյ | ełeloy | լինել の過去分詞 եղեալ・属格単数;8と局所的に結ぶ | 起こった、生じた、経験された |
| 8 | աշխատութեան | ašxatutʿean | աշխատութիւն・属格単数 | 苦労、労苦、困難 |
| 9 | ուղւոյն | ułwoyn | ուղի・属格単数・定 | 道、旅路、旅程 |
| 10 | ճանապարհաց | čanaparhacʿ | ճանապարհ・属格複数;9と類義語を重ねる | 道々、行路、道程 |
| 11 | զելեւէջս | zelewēǰs | ելեւէջ 系・զ- を伴う対格複数 | 上り下り、起伏、上下運動 |
| 12 | տարաբեր | taraber | 形容詞;14を前置修飾 | 揺れ動く、変転する |
| 13 | անդադարն | andadarn | անդադար;14を前置修飾する形容詞的用法 | 絶え間ない、絶えず |
| 14 | սահանաց | sahanacʿ | սահանք・属格複数;12–13の修飾を受け、11を限定 | 奔流、水勢、波濤 |
| 15 | գրաւական | grawakan | 名詞;17に対する述語的第二対格 | 担保、保証、質 |
| 16 | եդեալ | edyeal | դնեմ「置く」の過去分詞;後半二項の中心 | 置いて、据えて、定めて |
| 17 | զանձինս | zanjins | անձն・対格複数 | 自分たち自身を、その身を |
| 18 | շահաւորն | šahaworn | շահաւոր・形容詞;19を前置修飾 | 利益になる、有利な |
| 19 | աւգտութեան | awgtutʿean | աւգտութիւն / օգտութիւն・属格単数;15を限定 | 利益、利得、有用性 |
| 20 | եւ | ew | 接続詞 | そして |
| 21 | կէտ | kēt | 名詞;22に対する述語的第二対格 | 点、終点、限界、目標 |
| 22 | զմահ | zmah | մահ・զ- を伴う対格単数 | 死を |
| 23 | մրցանաց | mrcʿanacʿ | մրցանք・属格複数 | 競い、争い、競争 |
| 24 | յաղթութեան | yałtʿutʿean | յաղթութիւն・属格単数;23と「勝利を目指す競い」を形成 | 勝利、勝利すること |
════════ A. 主節 ═══════════════════════════════════
[1–2] զայս վէպ
「この物語を」
│
└─目的語
↓
[3] պատմեն
「彼らは語る」
│
└─受け手
↓
[4–5] մերձաւոր սիրելեաց
「身近な親しい者たちに」
与格複数
════════ B. ダッシュ以後 — 「この物語」の内容 ════════
[1–2] զայս վէպ
「この物語」
│
└─説明・内容の具体化
↓
[6–10] զանցս եղելոյ աշխատութեան ուղւոյն ճանապարհաց
「旅路で生じた労苦の諸経験を」
HEAD [6] զանցս
│
└─[8] աշխատութեան
「労苦・困難」
├─[7] եղելոյ
│ 「生じた/経験された」
└─[9–10] ուղւոյն ճանապարհաց
「旅路・道程における」
+
[11–14] զելեւէջս տարաբեր անդադարն սահանաց
「絶えず変転する奔流の上下動を」
HEAD [11] զելեւէջս
│
└─[12–14] տարաբեր անդադարն սահանաց
「揺れ動く、絶え間ない奔流の」
════════ C. 後半の平行構造 ════════════════════════
[16] եդեալ
「置いて」
/ / [15] գրաւական [21] կէտ
「担保として」 「終点として」
│ │
↓ ↓
[17] զանձինս [22] զմահ
「自分たち自身を」 「死を」
[18–19] շահաւորն աւգտութեան
「利益ある利得の」
└──> [15] գրաւական
「利益ある利得の担保」
[23–24] մրցանաց յաղթութեան
「勝利を目指す競いの」
└──> [21] կէտ
「勝利を目指す競いの終点」
「自らを担保として置き、
死を終点として〔置き〕」
第四文では、航海者たちはようやく波濤から逃れ、各地方へ赴いた。第五文では視点が海上そのものから、生還した者たちが自分の経験を語る場面へ移る。
冒頭の 1–5 զայս վէպ պատմեն մերձաւոր սիրելեաց は、「彼らはこの物語を身近な親しい者たちに語る」。5 սիրելեաց「親しい者たちに」は与格複数で、պատմեն「彼らは語る」の受け手を表す。
ダッシュ以後の6 զանցս「出来事・経験」と11 զելեւէջս「上下動」は、ともに զ- を伴う対格である。これらは、先に示された զայս վէպ「この物語」がどのような内容なのかを後から具体化している。
զայս վէպ
「この物語を」
│
└─ 内容を具体化
├─ զանցս ...
│ 「旅路で味わった苦難の数々」
└─ զելեւէջս ...
「絶えず変転する奔流の上下動」
同じアガタンゲロスにも、総括的な対格を後続の対格で具体化する例がある。§490には、
զերկնաւորսն՝ զհրեշտակս, զզաւրսն հոգեղէնս 「天上の者たちを――天使たち、霊的な軍勢を」
というよく似た展開が見られる。
後半15–24では、航海の危険が経済と競争の語彙で言い換えられる。
գրաւական ... զանձինս 「自らを担保として」 եւ կէտ ... զմահ 「死を終点として」
15 գրաւական「担保」と21 կէտ「終点・限界」は、それぞれ17 զանձինս「自分たち自身」と22 զմահ「死」が何として置かれるかを示す。16 եդեալ「置いて」は第一項に明示され、第二項にも意味上共有される。
18–19 շահաւորն աւգտութեան は「利益ある利得の」と15 գրաւական「担保」を限定する。23–24 մրցանաց յաղթութեան は「勝利を目指す競いの」と21 կէտ「終点」を限定する。
したがって航海者・商人たちは、利益を求めて自分の身そのものを担保に差し出し、その競いの行き着く先には死さえ置く者たちとして描かれる。第二文で「利益に渇く者たち」と呼ばれた航海者像が、ここではさらに具体的な言葉で言い直されている。
1 զայս「この」は զ- を伴い、2 վէպ「物語」とともに3 պատմեն「彼らは語る」の対格目的語を作る。
զայս վէպ → պատմեն この物語を 語る
4–5 մերձաւոր սիրելեաց は「身近な親しい者たちに」。սիրելեաց は形の上では属格・与格・奪格が同形だが、պատմեմ「語る」は内容を対格、受け手を与格で表す用例をもつため、ここでは与格複数とみる。
4 մերձաւոր「身近な」は前置形容詞で、斜格複数の սիրելեաց に対して形を変えない。このような前置修飾は Grabar で普通に見られる。
6 զանցս と11 զելեւէջս は、ともに明示的な զ- を伴う対格複数である。意味の上では「語る」内容に属すると同時に、談話上は先行する総括的な目的語 զայս վէպ「この物語」を説明する。
BAG1852 §§714–718 は、先に置かれた成分の内容を後続の語句で明らかにする構文を広く扱う。アガタンゲロス§490の例、
զերկնաւորսն՝ զհրեշտակս, զզաւրսն հոգեղէնս 「天上の者たちを――天使たち、霊的な軍勢を」
も、「総括的な対格 → 具体的な対格列挙」という点でよく似ている。
したがって第五文でも、
պատմեն
└─目的語 → զայս վէպ
│
└─内容の具体化
├─ զանցս ...
└─ զելեւէջս ...
と理解できる。
7 եղելոյ は եղեալ「生じた、起こった」という過去分詞の属格単数で、8 աշխատութեան「労苦、困難」の属格単数と局所的に結びつく。
եղելոյ աշխատութեան 「生じた/経験された労苦の」
9–10 ուղւոյն ճանապարհաց は、単純な「旅路の諸道」という所有関係より、意味の近い二つの名詞を重ねて「旅路・道程」を表すと考える方が自然である。
ABR1976は、Grabarで同義・類義の名詞を重ねる際、第二の名詞を属格に置いて一つの統語成分を作る用法を挙げる。たとえば、
մարտ պատերազմի 「戦い、戦闘」 զկամս ցանկութեանն 「願い、欲求」
のような型である。
アガタンゲロス§8にも、
երկայնուղւոյ ճանապարհաց 「長い旅路・道程の」
という ուղի「道」+ ճանապարհ「道程」の近い組合せがある。
したがって 6–10 全体は、
զանցս եղելոյ աշխատութեան ուղւոյն ճանապարհաց 「旅路・道程において生じた労苦の諸経験」 → 「旅路で味わった苦難の数々」
と読む。
なお、辞書が本句を引用するときに եղելոյ を欠く形が見られるが、ここでは本文に記された եղելոյ を保持して読む。
11 զելեւէջս は「上り下り、起伏、上下運動」。14 սահանք は「滝、奔流、水勢」を表す語で、海上の文脈では「奔流・水勢・波濤」ほどの意味になる。
12 տարաբեր「揺れ動く、変転する」と13 անդադարն「絶え間ない」は、ともに14 սահանաց「奔流の」を前から修飾するとみる。
զելեւէջս
└─ տարաբեր անդադարն սահանաց
「揺れ動く、絶え間ない奔流の」
「絶えず変転する奔流の上下動を」
NBHL系の辞書がこの箇所を引用する際には、անդադար սահանացն と定冠詞 -ն の位置が異なる形も見られる。これは本文伝承上の小さな差として注意できるが、句全体の理解には影響しない。
դնել「置く」は、対格目的語に「何として置くか」を表す第二の対格を添えることができる。
第一項は、
գրաւական եդեալ զանձինս 「自分たち自身を担保として置き」
で、17 զանձինս「自分たち自身を」が直接目的語、15 գրաւական「担保として」がその身分・役割を示す。
第二項も同じ型で、
կէտ (եդեալ) զմահ 「死を終点・限界として〔置き〕」
と読むことができる。
GHAZ2012の ԿԷՏ ԴՆԵԼ「限界・期限を定める」の項目には、
Կէտ եդեալ զժամանակն ... 「時を限界として定めて……」
という近い語順の例があり、կէտ が դնել の述語的な補語となることを示す。
また、զանձն / զանձինս + դնել「自分自身を置く」という結合は、身を危険にさらす文脈でも用いられる。第五文の「自分自身を担保として置く」という表現も、この意味領域とよく合う。
18 շահաւորն を17 զանձինս「自分たち自身」にかけるより、後続の19 աւգտութեան「利益・利得」を前から修飾するとみる方が形態的にも意味的にも自然である。
辞書には、
շահաւոր օգտութեանց 「利益をもたらす利得の」
という շահաւոր + օգտութիւն の結合が見られる。
また գրաւական「担保・保証」は、
գրաւական խաղաղութեան 「平和の保証」 գրաւական կենդանութեան 「生命の保証」 գրաւական սիրոյ 「愛の保証」
のように属格を伴うことができる。
したがって、
գրաւական
└─ շահաւորն աւգտութեան
「利益ある利得の」
「利益ある利得の担保」
と理解できる。
18 շահաւորն の末尾 -ն の細かな機能は一義的ではないが、18–19が一まとまりで15 գրաւականを限定するという全体構造は変わらない。
23 մրցանաց は մրցանք「競い、競争」の属格複数、24 յաղթութեան は յաղթութիւն「勝利」の属格単数である。
ここでは「勝利」が競いの目標・到達点を表すとみて、
մրցանաց յաղթութեան 「勝利を目指す競いの」
と読む。
この属格句全体が21 կէտ「終点」を限定し、
կէտ մրցանաց յաղթութեան 「勝利を目指す競いの終点」
という関係になる。22 զմահ「死を」は共有された եդեալ「置いて」の目的語で、「死をその終点として置く」となる。
「上り下り、起伏、上下運動」。GHAZ2012には ԵԼԵՒԷՋՍ ԱՌՆԵԼ「上り下りする」という結合がある。第五文では առնել を伴わず、զելեւէջս 自体を名詞として「上下動」と読む。
第五文の գրաւական եդեալ զանձինս 全体を固定した慣用句とする必要はないが、զանձն / զանձինս + դնել「自分自身を置く、身を危険にさらす」という結合は他にも見られる。「自分自身を担保として置く」という理解には十分な語彙的背景がある。
GHAZ2012は ԿԷՏ ԴՆԵԼ を「限界・期限を定める」という定型的結合として掲げる。第五文では同じ դնել「置く」を意味上共有し、կէտ … զմահ「死を終点として置く」と読む。