1Ընթերցեալ 2զԹորգոմայ 3ազգիս, 4զՀայաստան 5աշխարհիս 6զաստուածապարգեւ 7աւետեացն 8աւետարանին 9քարոզելոյ 10բանին 11կենաց, 12թէ 13ո՛րպէս 14կամ 15զիա՛րդ 16ընկալան, 17եւ 18ո՛րպիսի 19արամբ, 20կամ 21ո՛ 22ոք 23ուստեք, 24որ 25զայս 26նորոգատուր 27զառաքելաբար 28շնորհս 29յանձին 30ցուցանելով՝ 31այնպիսի 32աստուածեղէն 33շնորհաւք 34երեւեցաւ։
「〔ここに〕読まれるのは、トルゴムの民について、このアルメニアの国土について、福音の神授の吉報と命の言葉を宣べ伝えることについて――彼らがそれをどのように、いかなる仕方で受け入れたのか、どのような人物を介してか、またその人物が誰でどこから来たのか――である。その人物は、この新たに授けられた使徒的恩寵を自らの身に顕しつつ、そのような神的恩寵を帯びて姿を現した。」
※ 文頭 Ընթերցեալ は古期に可能な無繋辞の過去分詞主述語として読む。日本語ではこの文の目録的機能を優先し「〔ここに〕読まれるのは」としたが、過去分詞という形態だけから受動・時制意味を固定したものではない。
ローマナイズ
Əntʿercʿeal zTʿorgomay azgis, zHayastan ašxarhis zastuacapargew aweteacʿn awetaranin kʿarozeloy banin kenacʿ, tʿē orpēs kam ziard ənkalan, ew orpisi aramb, kam o okʿ ustekʿ, or zays norogatur zaṙakʿelabar šnorhs yanjin cʿucʿanelov, aynpisi astuacełēn šnorhawkʿ erewecʿaw.
逐語分析
| No. | 語形 | Romanize | 品詞・形態 | 意味・機能 |
| 1 | Ընթերցեալ | Əntʿercʿeal | ընթեռնուլ・過去分詞 | 定動詞相当述語。「〔ここに〕読まれる/取り上げられるのは」 |
| 2 | զԹորգոմայ | zTʿorgomay | Թորգոմ・属格単数を核とする z-marked topic | トルゴムの |
| 3 | ազգիս | azgis | ազգ・斜格単数+-ս | 民・民族;topic の head |
| 4 | զՀայաստան | zHayastan | z-marked phrase 内の形容詞的 Հայաստան | アルメニアの |
| 5 | աշխարհիս | ašxarhis | աշխարհ・斜格単数+-ս | 国土・世界;topic の head |
| 6 | զաստուածապարգեւ | zastuacapargew | 形容詞、z-marked topic 内 | 神から与えられた |
| 7 | աւետեացն | aweteacʿn | աւետիք・斜格複数・定 | 吉報・約束;head |
| 8 | աւետարանին | awetaranin | աւետարան・属格単数・定 | 福音の |
| 9 | քարոզելոյ | kʿarozeloy | քարոզել・屈折不定詞・斜格単数 | 宣べ伝えること |
| 10 | բանին | banin | բան・属格単数・定 | 言葉を/言葉の;ここでは宣教内容 |
| 11 | կենաց | kenacʿ | կեանք・属格複数 | 命の |
| 12 | թէ | tʿē | 接続詞・疑問内容導入 | ~か、ということ |
| 13 | ո՛րպէս | orpēs | 疑問副詞 | どのように |
| 14 | կամ | kam | 接続詞 | または |
| 15 | զիա՛րդ | ziard | 疑問副詞 | いかなる仕方で |
| 16 | ընկալան | ənkalan | 3複・アオリスト | 彼らは受け入れた |
| 17 | եւ | ew | 接続詞 | そして |
| 18 | ո՛րպիսի | orpisi | 疑問形容詞 | どのような |
| 19 | արամբ | aramb | այր・具格単数 | 人物を介して/人物によって |
| 20 | կամ | kam | 接続詞 | または |
| 21 | ո՛ | o | 疑問要素 | 誰 |
| 22 | ոք | okʿ | 代名詞 | 人、者;ո՛ ոք で人物同定 |
| 23 | ուստեք | ustekʿ | 疑問副詞 | どこから |
| 24 | որ | or | 関係代名詞・主格単数 | その者は;前の人物を受ける |
| 25 | զայս | zays | 指示詞・対格単数形 | この;後続の恩寵句を先取り |
| 26 | նորոգատուր | norogatur | 形容詞 | 新たに授けられた |
| 27 | զառաքելաբար | zaṙakʿelabar | z-marked 形容詞的用法 | 使徒的な |
| 28 | շնորհս | šnorhs | շնորհ・対格複数 | 恩寵を;ցուցանելով の目的語 |
| 29 | յանձին | yanjin | ի + անձն の自己指示構文 | 自らの身に/自らのうちに |
| 30 | ցուցանելով | cʿucʿanelov | ցուցանեմ・不定詞具格単数 | 示しつつ、顕しつつ |
| 31 | այնպիսի | aynpisi | 指示・性質形容詞 | そのような |
| 32 | աստուածեղէն | astuacełēn | 形容詞 | 神的な、神に由来する |
| 33 | շնորհաւք | šnorhawkʿ | շնորհ・具格複数 | 恩寵を帯びて/恩寵とともに |
| 34 | երեւեցաւ | erewecʿaw | երևիմ・3単・アオリスト | 現れた、姿を現した |
構造図 — 福音受容とその媒介者
§16 S001
│
└─ Ընթերցեալ
「〔ここに〕読まれる/取り上げられるのは」
[過去分詞 → 定動詞相当述語]
│
├─ TOPIC: Թորգոմայ ազգիս
│ 「トルゴムの民について」
│
├─ TOPIC: Հայաստան աշխարհիս
│ 「アルメニアの国土について」
│
├─ TOPIC: Gospel complex
│ ├─ աստուածապարգեւ աւետեացն աւետարանին
│ │ 「福音の神授の吉報」
│ └─ քարոզելոյ բանին կենաց
│ 「命の言葉を宣べ伝えること」
│
└─ QUESTION: թէ
├─ ո՛րպէս / զիա՛րդ
│ └─ Ø3PL ընկալան Ø
│ 「彼らがそれをどのように受け入れたか」
├─ ո՛րպիսի արամբ
│ 「どのような人物を介してか」
└─ ո՛ ոք ուստեք
「その人物は誰で、どこからか」
│
└─ որ
├─ ցուցանելով
│ ├─ OBJ: զայս ... զառաքելաբար շնորհս
│ │ 「この新たに授けられた使徒的恩寵を」
│ └─ յանձին
│ 「自らの身に」
└─ երեւեցաւ
└─ այնպիսի աստուածեղէն շնորհաւք
「そのような神的恩寵を帯びて」
本文読解 — 「何を書くか」から「何を読むか」へ
§15 は、歴史を書く行為を思考の駿馬・身体・筆・言葉・航海という運動に展開し、最後にはその記録を後代へ渡した。§16 は文頭の Ընթերցեալ によって、今度はこれから読まれる内容を目録化する。
最初に置かれるのはアルメニアにおける福音の受容である。ただし問いは「福音が到来した」という一点では終わらない。
どのように受け入れたのか
↓
どのような人物を介したのか
↓
その人物は誰で、どこから来たのか
↓
その人物にはどのような恩寵が現れていたのか
この人物は文脈上グレゴリオスである。彼は単なる情報伝達者ではなく、զայս … շնորհս「この使徒的恩寵」を自らの身に示し、さらに այնպիսի … շնորհաւք「そのような神的恩寵」を帯びて現れる人物として導入される。
同じ շնորհ が対格と具格で反復されることで、「恩寵を示すこと」と「恩寵を帯びて現れること」が重ねられる。福音を媒介する人物自身が、その権威・恩寵を可視化する証示となっている。
文法解説
無繋辞の過去分詞主述語 — Ընթերցեալ は形態的には過去分詞だが、ここでは定動詞相当述語として文を支える。JEN1959 §366 は歴史叙述の分詞単独述語を記述する。MEY2023 の通時的分析では5世紀初頭の copula は optional であり、無繋辞型を「本来あるコピュラの欠落」として必ず復元する必要はない。
z-marked topic — 冒頭の զԹորգոմայ ազգիս / զՀայաստան աշխարհիս / … は、単純な直接目的語列ではなく、目録として「~について」という内容を提示する。
Հայաստան աշխարհիս — Հայաստան は形容詞的に「アルメニアの」と用いられ、աշխարհիս が句の head。
屈折不定詞 քարոզելոյ — բանին կենաց「命の言葉」を宣教内容として取る。属格形の論理主語/目的語の区別は形態だけでは決めない。
間接疑問の թէ — որպէս / զիարդ / որպիսի / ո … ուստեք からなる疑問内容全体を導く。
ընկալան の意味上の能動性 — 活用・機械タグから受動訳を自動的に導かず、「受け入れた」と読む。
前置指示詞の非一致 — զայս … շնորհս の単数形指示詞+複数名詞は、ABR1976 §128 の զայս տունս 型と同じく許容される。
具格不定詞 ցուցանելով — 形態は不定詞具格単数。ここでは որ を controller として երեւեցաւ に副詞的に従属する。
二種類の具格 — ցուցանելով は不定詞そのものの具格形、շնորհաւք は名詞の具格複数であり、同じ統語役割にはしない。
残存する細部
主要構造と試訳を変えない範囲で、次は一意に固定しない。
冒頭 z-marked topic における exact case / զ の micro-government。
ազգիս / աշխարհիս の -ս の近称/一人称ニュアンス。
Gospel complex の二項を厳密な無接続並列とするか、説明的同格とするか。
բանին կենաց が քարոզելոյ の意味上の目的語として受ける exact case licensing。
ո՛րպիսի արամբ は ընկալան を共有する mediator question と読むが、意味上は直前の宣教行為とも密接に結びつく。
double-զ は先取り指示語+完全NPとして読むが、一つの不連続NPにおける反復標示とする形式化も残る。
յանձին の exact internal case realization。
շնորհաւք の具格意味を随伴・様態・状態のどこまで細分するか。
文頭 Ընթերցեալ の談話 scope が §16 後続文までどこまで及ぶか。
参考文献・比較箇所
JEN1959 §366 — 歴史叙述における過去分詞単独の述語用法。
MEY2023 Ch.5 — 5世紀古典アルメニア語における完了構文と optional copula の通時的分布。
BAG1852 ¶257, §570, ¶613, ¶819 — զ の関係用法、具格不定詞、副詞的・状況的具格、前置指示詞の一致。
ABR1976 §128 — 前置指示詞が複数名詞に対して単数形のまま現れる型(զայս տունս)。
JEN1959 §493 — 屈折不定詞近傍の属格NPと論理主語・目的語。
CALFA/NBHL — նորոգատուր շնորհք、Զառաքելաբար շնորհս յանձին ցուցանելով の語彙・同箇所証拠。
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