1Իսկ 2ի 3մէջ 4ըմբռնելոցն 5խորոցն 6անդնդոցն 7լցեալ 8խոռոչացեալ 9խոխոջելովն 10ահափետ 11արարեալ 12զաւրհասն 13գուշակեն։
番号は下の「逐語分析」「構造図」の番号と対応する。
「しかし、呑み込もうとする深淵の深みのただ中で、波々は満ち上がっては窪みこみ、ごうごうと鳴り、恐怖をかき立てて、死を予兆する。」
この訳では、7–11を同一の省略主語をもつ非定形の述語連鎖として読み、13 գուշակեն「予兆する」に接続する。省略主語は、この一文の中には明示されないが、§1で前景化されている複数の ալիքն「波々」を談話的に継承するものと解する。
12 զաւրհասն は一般的な「破局」「危機」に薄めず、周辺の航海者描写で死そのものが賭け金・最終点として置かれている文脈を踏まえ、ここでは明示的に 「死」 と訳す。
Isk i mēǰ əmbṙnelocʿn xorocʿn andndocʿn lcʿeal xoṙočʿacʿeal xoxoǰelovn ahapʿet araryeal zawrhasn gušaken.
| No. | 語形 | Romanize | 品詞・形態 | 意味・機能 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Իսկ | Isk | 接続詞・談話標識 | しかし、一方 |
| 2 | ի | i | 3 մէջ と複合前置詞的表現を形成 | ~の中で |
| 3 | մէջ | mēǰ | 名詞由来の前置詞的要素;2とともに後続属格領域を支配 | 中、ただ中 |
| 4 | ըմբռնելոցն | əmbṙnelocʿn | 未来分詞 -ոց + -ն。5 խորոցն を前置修飾する | 捕らえようとする、呑み込もうとする |
| 5 | խորոցն | xorocʿn | խորք 系「深み」・属格複数・定;2–3 ի մէջ の属格補語の中心 | 深み、深部 |
| 6 | անդնդոցն | andndocʿn | անդունդ「深淵」・属格複数・定。5を属格修飾 | 深淵の、奈落の |
| 7 | լցեալ | lcʿeal | լնուլ の過去分詞。裸形。13と同一主語を共有する副詞的分詞用法 | 満ちて、ここでは水が満々と盛り上がって |
| 8 | խոռոչացեալ | xoṙočʿacʿeal | խոռոչանամ / խոռոչիմ 系の過去分詞。13と同一主語を共有する副詞的分詞用法 | 窪みこんで、空洞をなして |
| 9 | խոխոջելովն | xoxoǰelovn | խոխոջել の具格不定詞系 -ելով + -ն。様態句 | ごうごう/ごぼごぼと鳴りながら |
| 10 | ահափետ | ahapʿet | 形容詞・実体詞的要素。ահափետ առնել の結合を形成 | 恐怖を与える、恐れさせる |
| 11 | արարեալ | araryeal | առնեմ「なす、する」の過去分詞。10と一体で副詞的に働く | ~して |
| 12 | զաւրհասն | zawrhasn | աւրհաս / օրհաս「死、最期」・対格単数・定 | 死を |
| 13 | գուշակեն | gušaken | գուշակեմ・直説法現在3複 | 予告する、予兆する |
※ 4 ըմբռնելոցն には、表面形は ըմբռնեալ の過去分詞・複数斜格定形とも一致しうる。しかし同作者に未来分詞 -լոցն が後続名詞を前置修飾する直接的な平行例があり、さらに本箇所では「人を呑み込もうとする深み」という能動的関係が自然に成立するため、未来分詞を採用する。過去分詞説は形態上の可能性として確認済みだが、本箇所の 有力な別解 には残さない。
※ 5–6 խորոցն անդնդոցն は、同作者の զխորս անդնդոց ծովուն などから、խորոցն を実体詞的な「深み」、անդնդոցն をその属格修飾「深淵の」と読む。
════════ A. 接続・場所枠 ═══════════════════════════
[1] Իսկ
接続詞・談話標識
「しかし/一方」
│
↓
[2–3] ի մէջ
複合前置詞的表現
「~のただ中で」
│
└─ 属格補語
↓
[4–6] ըմբռնելոցն խորոցն անդնդոցն
「呑み込もうとする深淵の深み」
│
├─ [4] ըմբռնելոցն
│ FUT.分詞.属格複数・定
│ 「呑み込もうとする」
│ └─ 前置修飾 of [5]
│
└─ [5–6] խորոցն անդնդոցն
中心語 [5] խորոցն
属格複数・定 / 実体詞的
「深み」
│
└─ 属格修飾
[6] անդնդոցն
属格複数・定
「深淵の」
════════ B. 主節 — 省略主語を共有する述語連鎖 ═══════
Øᵢ = §1 の ալիքն「波々」
省略された複数の談話主語
│
├─ [7] լցեալ
│ 分詞.PAST・裸形
│ 副詞的分詞用法
│ 「満ち上がって」
│
├─ [8] խոռոչացեալ
│ 分詞.PAST・裸形
│ 副詞的分詞用法
│ 「窪みこんで」
│
├─ [9] խոխոջելովն
│ 不定詞・具格単数 + -ն
│ 様態句
│ 「ごうごうと鳴りながら」
│
├─ [10–11] ահափետ արարեալ
│ [10] ահափետ 形容詞・ 述語的要素
│ [11] արարեալ 分詞.PAST・裸形
│ 副詞的分詞用法
│ 「恐怖をかき立てて」
│
└──────────────> [13] գուշակեն
直説法現在・3人称複数
「予兆する」
│
└─ 直接目的語
↓
[12] զաւրհասն
対格単数・定
「死を」
════════ C. 全体 ═══════════════════════════════════
[1] Իսկ
↓
[2–6] 「呑み込もうとする深淵の深みのただ中で」
↓
Øᵢ = 「波々」
├─ [7] 満ち上がって
├─ [8] 窪みこんで
├─ [9] ごうごうと鳴りながら
├─ [10–11] 恐怖をかき立てて
└─ [13] 死を予兆する
└─ 目的語 [12] զաւրհասն
7・8・11 は裸形の過去分詞で、13 գուշակեն と省略主語を共有する副詞的分詞用法。 9 խոխոջելովն はその連鎖に入る様態句である。
§1 の海象描写では、ալիքն「波々」が山のように積み上がり、また低く沈むものとして描かれている。§2 第一文 は、その複数主語を明示的に言い直さず、7–13 の連鎖でさらに描写を押し進めるものと読む。
この第一文は、航海者自身の心理を直接述べるというより、まず 海そのものの運動を前景化している。
§1 では波が、
ալիքն ... լեռնաձեւ կուտակին 「波々は山のように積み上がり」 մէտ ի մէտ խոնարհին 「次々に沈みこむ」
と上下運動を繰り返す。§2 第一文 の 7–9 は、この像を別の語彙で継続する。
լցեալ
満ち上がる
↓
խոռոչացեալ
窪みこむ
↓
խոխոջելովն
ごうごうと鳴る
7 լցեալ は単に静的な「何かで満たされた」と読む必要はない。聖書のヨシュア 3:15 では、
Յորդանան լցեալ գայր դարիւ եւ դարիւ ...
と、ヨルダン川そのものが լցեալ の主体となり、満々と増水して流れる水勢を描く。また Agathangelos 自身にも §562 で、
լցեալ ուռուցեալ 「満ちて、膨れ上がって」
という、水を大量に含んで膨れ上がる動的な連鎖がある。したがって本箇所でも լցեալ は、波が満々と盛り上がる運動として理解できる。
8 խոռոչացեալ は「空洞になる、窪む」。CALFA / NBHL には別用例として、
խոխոջելով խոռոչացեալ
という結合があり、9 խոխոջելովն「ごうごう/ごぼごぼと鳴りながら」が8の動態を音響的に描写することを支持する。
この波が 10–11 ահափետ արարեալ「恐怖をかき立てて」、最後に 12–13 զաւրհասն գուշակեն「死を予兆する」へ到達する。
深淵の深み ↓ 満ち上がる波 ↓ 窪みこむ波 ↓ 轟音 ↓ 恐怖 ↓ 死の予兆
ここでは文法上の主語は波である一方、恐怖を経験する側は背景にいる航海者たちである。この二層構造によって、自然現象そのものが航海者に「死」を告げるような強い擬人的・予兆的描写となっている。
HMB2018 §177 は、同一の主語をもつ二つの述語の一方を過去分詞、他方を定動詞で表す Grabar の構文を説明する。たとえば、
Յարմարեցեալ զամենայն կարգեցից քեզ ... 「すべてを整えて、私はあなたのために……配列しよう」
のように、過去分詞と後続の定動詞が明示されない同一主語を共有する。
本箇所も、
Øᵢ լցեալ խոռոչացեալ ... ահափետ արարեալ գուշակեն
と解析できる。
したがって 7 լցեալ と8 խոռոչացեալ を、直前の属格複数 խորոցն に一致する形容詞的修飾語とみなす必要はない。裸形の過去分詞として、副詞的に主節へ接続しているのである。
HMB2018 §177 は、Grabar の定動詞が人称・数を内包するため、主語がしばしば省略されることも明記する。BAG1852 の省略に関する記述も、先行文脈から指示対象が明白な三人称主語の省略を認める。
Agathangelos 自身にも、文境界を越えて先行する主語を再表示せず継承する例がある。そのため、§2 第一文 に明示主語が存在しないこと自体は問題にならない。
ただし「直近の名詞を機械的に主語とする」わけではない。§1 自身でも、波の描写のあとに省略主語で航海者へ戻る箇所がある。本箇所では、13 գուշակեն が3複であり、7–9 の水象描写と自然に一体化することから、§1 の複数主語 ալիքն「波々」を回収する。
4 ըմբռնելոցն は、未来分詞と過去分詞斜格が表面上同形になりうる。
未来分詞を採用する決め手は、Agathangelos 自身に、
զլինելոցն ընդ ձեզ զկեցուցաբեր տուչութիւնն
のような 未来分詞 -լոցն が後続名詞を前置修飾する 直接的な平行例があること、そして本箇所では、
ըմբռնելոցն խորոցն 「呑み込もうとする深み」
という能動的・動的な関係が海難描写に自然に合うことである。
CALFA / NBHL は Ահափետ առնել を Ահաբեկեմ「恐怖させる、怯えさせる」に結びつけ、本箇所そのものを、
Ահափետ արարեալ՝ զօրհասն գուշակեն։
と引用する。
したがってここでは、波自身が「恐れている」とするより、
ահափետ արարեալ 「恐怖を引き起こして」 「恐怖をかき立てて」
と使役的に読む。
աւրհաս / օրհաս は「最期、死、致命的危機」などを表しうる。本作品の周辺航海比喩では、航海者が自己を賭け、最後に死そのものを置く描写があるため、本箇所では抽象的な「破局」より 「死」 を採用する。
Ահափետ առնել は「恐怖させる、怯えさせる」。本箇所の ահափետ արարեալ はその過去分詞形を用いた副詞的表現として、
「恐怖をかき立てて」
と読む。
գուշակեմ は「予告する、予兆する、前兆となる」。本箇所では自然現象である波々が主語となり、
「死を予兆する」
と読む。