1Վասն 2այսորիկ 3իսկ 4ընդ 5ծաղկացեալ 6ալիսն 7բազմութեան 8համատարած 9ծովուն 10ընդխառնեալք 11շահատակիցեն, 12ոչ 13ըստ 14անձանց 15կամաց, 16այլ 17ըստ 18վարիչ 19աւդոյն 20վարելոյ, 21բռնավարեալք 22ի 23վերայ 24յորձանացն 25յաճախատարած 26լայնացելոցն 27դանդաչիցեն 28վասն 29աւգուտն 30գտանելոյ.
「まさにこのために、彼らは一面に広がる海の多くの盛り上がる波と入り混じって敢然と進む。自分たち自身の意志に従ってではなく、導く風によって運ばれることに従い、広く広がった渦の上へ力ずくで運ばれて、利益を得るためによろめき進む。」
11 շահատակիցեն は exact surface の辞書ヒットを欠くが、Շահատակեմ「敢然と立ち向かう・攻めかかる」と HMB2018 §112 の接続法第一未来3複語尾 -իցեն に形態的に一致するため、その分析を採用する。
Vasn aysorik isk ənd całkacʿeal alisn bazmutʿean hamatarac covun əndxaṙnealkʿ šahatakicʿen, očʿ əst anjancʿ kamacʿ, ayl əst varičʿ awdoyn vareloy, bṙnavarealkʿ i veray yorjanacʿn yačaxatarac laynacʿelocʿn dandačʿicʿen vasn awgutn gtaneloy.
| No. | 語形 | Romanize | 品詞・形態(採用分析) | 意味・機能 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Վասն | Vasn | 前置詞/格支配語 | 2 属格を支配。「~のために/~ゆえに」 |
| 2 | այսորիկ | aysorik | 指示代名詞 属格単数 | 「このことの」。1 と Վասն այսորիկ「このために」 |
| 3 | իսկ | isk | 強調辞 | 1–2 を強め「まさにこのために」 |
| 4 | ընդ | ənd | 前置詞 | 6 対格複数・定 を支配。「~とともに/~の中へ」 |
| 5 | ծաղկացեալ | całkacʿeal | 過去分詞由来の連体修飾 | 6 を修飾。「花開くように盛り上がる/泡立つ」 |
| 6 | ալիսն | alisn | ալի・対格複数・定 | 4 の支配項。「波々」 |
| 7 | բազմութեան | bazmutʿean | բազմութիւն 属格単数 | 波の多数・豊富さを限定 |
| 8 | համատարած | hamatarac | 形容詞 | 9 を修飾。「一面に広がる」 |
| 9 | ծովուն | covun | ծով 属格単数・定 | 6 周辺を属格限定。「海の」 |
| 10 | ընդխառնեալք | əndxaṙnealkʿ | Ընդխառնեմ / Ընդխառնիմ・過去分詞 主格複数 | 省略主語(3人称複数) merchants。「波に入り混じって」 |
| 11 | շահատակիցեն | šahatakicʿen | Շահատակեմ 第一分析・接続法第一未来3PL | 「敢然と立ち向かう/突き進む」 |
| 12 | ոչ | očʿ | 否定辞 | 13–15 を否定し、16 այլ と対照 |
| 13 | ըստ | əst | 前置詞 | 15 与格複数 第一分析 を支配。「~に従って」 |
| 14 | անձանց | anjancʿ | անձն 属格複数 | 15 を限定。「自分たち自身の」 |
| 15 | կամաց | kamacʿ | կամք 属格複数/与格複数/奪格複数 surface;採用 与格複数 | 「意志」。ոչ ըստ …「自分の意のままではなく」 |
| 16 | այլ | ayl | 対照接続詞 | ոչ … այլ …「~ではなく、むしろ~」 |
| 17 | ըստ | əst | 前置詞 | 20 与格単数 第一分析 を支配 |
| 18 | վարիչ | varičʿ | 形容詞/作用者的修飾 | 19 を「導く/駆動する」ものとして限定 |
| 19 | աւդոյն | awdoyn | աւդ 属格単数・定 | 20 の事態を属格的に限定。「風・空気の」 |
| 20 | վարելոյ | vareloy | վարել / վարեմ 不定詞 与格単数 第一分析 | 「運ばれる/駆動されることに従って」 |
| 21 | բռնավարեալք | bṙnavarealkʿ | 過去分詞 主格複数 | 省略主語(3人称複数) merchants。「力ずくで運ばれ/押し流され」 |
| 22 | ի | i | 前置詞 | 23 と ի վերայ を形成 |
| 23 | վերայ | veray | 後置詞要素 | 22 とともに24属格を支配。「~の上に」 |
| 24 | յորձանացն | yorjanacʿn | յորձան 属格複数・定 | 「渦・激流の」 |
| 25 | յաճախատարած | yačaxatarac | 形容詞的修飾 | 24/26 を「広く張りめぐらされた」と限定 |
| 26 | լայնացելոցն | laynacʿelocʿn | 過去分詞 oblique.PL.DEF 第一分析 | 24 と一致。「広がった/幅を増した」 |
| 27 | դանդաչիցեն | dandačʿicʿen | Դանդաչեմ 接続法第一未来3PL | 「よろめく、揺れ動く、翻弄される」 |
| 28 | վասն | vasn | 前置詞/格支配語 | 30 属格単数 を支配。目的 |
| 29 | աւգուտն | awgutn | աւգուտ 対格単数・定 | 30 の直接目的語。「利益・益」 |
| 30 | գտանելոյ | gtaneloy | գտանեմ / գտանել 不定詞 属格単数 | վասն … գտանելոյ「利益を得るために」 |
AGATH.§5.S04
[1–3] Վասն այսորիկ իսկ
「まさにこのために」
|
+-- antecedent = 直前の反復交易・習熟・利益増大
省略主語(3人称複数) merchants
+-- PARTICIPLE [10] ընդխառնեալք
| +-- WITH [4–9] ընդ ... ալիսն
| 「一面の海の盛り上がる波に入り混じって」
+-- 定動詞 [11] շահատակիցեն
「敢然と乗り出す/立ち向かう」
CONTROL CONTRAST
[12–15] ոչ ըստ անձանց կամաց
「自分たちの意志のままではなく」
VS
[16–20] այլ ըստ վարիչ աւդոյն վարելոյ
「導く風に運ばれるまま」
省略主語(3人称複数) merchants
+-- PARTICIPLE [21] բռնավարեալք
| +-- LOC [22–26] ի վերայ յորձանացն ...
| 「広くひろがった渦の上へ力ずくで運ばれ」
+-- 定動詞 [27] դանդաչիցեն
「翻弄され/よろめく」
+-- PURPOSE [28–30] վասն աւգուտն գտանելոյ
「利益を得るために」
sentence root は一つの dependency head に無理に縮約せず、[11] と [27] の二つの定動詞による叙述中心を持つため head_status = DISTRIBUTED とする。
「まさにこのために、彼らは一面の海の盛り上がる幾重もの波に入り混じり、敢然と乗り出す。自分たちの意志のままにではなく、彼らを導く風に運ばれるまま、広くひろがった渦の上へ力ずくで運ばれ、利益を得るために翻弄されるのである。」
上の「試訳」は原文の語順・構造との対応を優先した訳である。ここでは、一部の意訳や語順調整を許し、日本語としての流れと読みやすさを優先した自然化訳を示す。
直前では、商人たちは反復される交易の経験から熟達し、小さな持分を何千・何万という規模へ増やす実践知を獲得する。S004 の Վասն այսորիկ իսկ「まさにこのために」は、この利益と熟達の叙述を直接受ける。
しかし、この文の中心は単なる「利益を求めて航海する」ではない。むしろ、
利益を求める
|
v
自ら波へ乗り出す
|
v
しかし航海中の制御は
自分の意志ではない
|
v
風・渦に運ばれる
という逆説にある。
ոչ ըստ անձանց կամաց, այլ ըստ վարիչ աւդոյն վարելոյ は、商人の目的意識と、海上での実際の制御主体とを切り分ける。利益を求める目的は彼ら自身のものだが、いったん海へ出れば進路は彼らの կամք「意志」ではなく風に左右される。
この「主体的に危険へ入るが、入った後の帰結は制御できない」という構図が、次の S005 の「自らを死と生との間に置く」へ直接つながる。
1 վասն は属格支配、2 այսորիկ は属格単数。3 իսկ はこの指示句を強める。全体は 「まさにこのために/このことゆえに」。
6 ալիսն は対格複数定形。4 ընդ がこれを支配し、10 ընդխառնեալք「入り混じった」と結ぶ。10 は過去分詞主格複数で 省略主語(3人称複数) 商人たちに一致する。
CALFA の Շահատակեմ は「敢然と立ち向かう、勇敢に攻めかかる」。HMB2018 §112 は接続法第一未来3人称複数の語尾を -իցեն と示す。
շահատակ- + -իցեն → շահատակիցեն
exact surface 自体は辞書にないため provenance 上の軽い 残存する別解 は残すが、lemma と 定形形態 は十分に収束する。
15 կամաց は 属格複数/与格複数/奪格複数 同形だが、13 ըստ の支配から 与格複数 第一分析。20 վարելոյ も 属格/与格/奪格単数 同形だが、17 ըստ の支配から 与格単数 第一分析。
ոչ ըստ անձանց կամաց 「自分たちの意志に従ってではなく」 այլ ըստ վարիչ աւդոյն վարելոյ 「導く風に運ばれることに従って」
CALFA/NBHL には本箇所と近い引用で Ըստ վարիչ ոգւոյն … վարելոյ բռնավարեալք … が残るが、pilot 本文は frozen surface աւդոյն を保持し、辞書引用の異読へ訂正しない。
21 բռնավարեալք は過去分詞主格複数で商人たちに一致。22–23 ի վերայ は属格を支配し、24 յորձանացն を 属格複数・定 とする。HMB2018 §161 も ի վերայ を属格支配の結合に含める。
26 は -ելոց を含むため未来分詞との同形衝突が問題になる。しかし24 յորձանացն との格数一致、後置修飾、結果状態の意味が過去分詞へ収束するため、過去分詞の斜格複数定形を採用する。
Դանդաչեմ は「よろめく、揺れ動く」。27 は同じ -իցեն 系の接続法第一未来3複。本段落は商人一般の反復行動なので、日本語では未来時制を機械的に強制せず「翻弄される/よろめく」と訳す。
28 վասն は30 գտանելոյ(不定詞属格単数)を支配し、29 աւգուտն は不定詞の直接目的語。全体で 「利益を得るために」。
「~に従ってではなく、~に従って」。本箇所では航海者自身の意志と風の駆動を対照する。
「~を得るために」。自由な文法的構成として分析できる。
* HMB2018 §112 — 接続法第一未来、3人称複数語尾 -իցեն。