1Սոյն 2աւրինակ 3տեսանեմք 4հարկ 5վտանգի 6հասեալ 7ստիպեալ 8զմեզ, 9առաւել 10ի 11հարկէ 12նաւեալք 13ի 14վերայ 15իմաստութեան 16ծովուն.
「同じように、われわれは、いっそう必要に迫られて知恵の海の上を航海しつつ、危難による強制が到来してわれわれを駆り立てているのを見る。」
Soin awrinak tesanemkʿ hark vtangi haseal stipeal zmez, aṙawel i harkē nawealkʿ i veray imastutʿean covun.
| No. | 語形 | Romanize | 品詞・形態(採用分析) | 意味・機能 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Սոյն | Soin | 指示語、2 と結合 | 「この同じ」。1–2 で類比的談話枠 |
| 2 | աւրինակ | awrinak | 名詞 主格単数/対格単数 surface;機能的に副詞的 | 「例・型・仕方」。Սոյն աւրինակ「同じように」 |
| 3 | տեսանեմք | tesanemkʿ | Տեսանեմ 直説法現在・1人称複数 | 唯一の定動詞中心。「われわれは見る/認める」 |
| 4 | հարկ | hark | 名詞 主格単数/対格単数 surface;対格単数 第一分析 | 3 の知覚対象複合体の 中心語。「必要・強制・切迫」 |
| 5 | վտանգի | vtangi | վտանգ 属格単数/与格単数 surface;属格単数 第一分析 | 4 を限定。「危難の/危難による」 |
| 6 | հասեալ | haseal | Հասանեմ 過去分詞, 対格単数 function | 4 の二次述語。「到来した/及んだ」 |
| 7 | ստիպեալ | stipeal | Ստիպեմ 過去分詞, 対格単数 function | 4 の二次述語。「強いて/駆り立てて」 |
| 8 | զմեզ | zmez | 1PL pronoun 対格 | 7 の直接目的語。「われわれを」 |
| 9 | առաւել | aṙawel | 副詞 | 「さらに/いっそう/むしろ」。10–12を局所的に強める |
| 10 | ի | i | 前置詞 | 11 奪格単数 と ի հարկէ を形成 |
| 11 | հարկէ | harkē | հարկ 奪格単数 | 「必要から、強制によって」→「必要に迫られて」 |
| 12 | նաւեալք | nawealkʿ | Նաւեմ 過去分詞・主格複数 | 省略主語(1人称複数) と一致。「航海して/船出して」 |
| 13 | ի | i | 14 と複合関係語を形成 | — |
| 14 | վերայ | veray | 複合関係語要素 | 13 と ի վերայ。「~の上に/上を」 |
| 15 | իմաստութեան | imastutʿean | իմաստութիւն 属格単数 | 16 を限定。「知恵の」 |
| 16 | ծովուն | covun | ծով 属格単数 | 13–14 の支配項。「海の」 |
AGATH.§6.S01
DISCOURSE FRAME
[1–2] Սոյն աւրինակ
「同じように/この同じ譬えにならって」
↓ proposition 作用域
Ø主語 = authorial 1PL “we”
└─ 定動詞 [3] տեսանեմք
「われわれは見る/認める」
│
└─ PERCEIVED OBJECT-PREDICATIVE COMPLEX
[4] հարկ 対格単数
└─ [5] վտանգի 属格単数
「危難による強制/切迫」
├─ 状態 [6] հասեալ
│ 「到来して/及んで」
└─ 状態/動作 [7] ստիպեալ
└─ 目的語 [8] զմեզ 1人称複数・対格
「われわれを駆り立てて」
SAME 省略主語(1人称複数) SUBJECT
└─ CIRCUMSTANTIAL PAST PARTICIPLE [12] նաւեալք 主格複数
「航海して/乗り出して」
├─ REINFORCED NECESSITY [9–11]
│ առաւել ի հարկէ
│ 「いっそう/まさに必要に迫られて」
└─ 領域 [13–16]
ի վերայ [属格 [15] իմաստութեան [16] ծովուն]
「知恵の海の上を」
sentence 中心状態 = RESOLVED_HEAD;root の定動詞中心語 = [3] տեսանեմք。
「同じように私たちも、必要に迫られて『知恵の海』へ乗り出した身として、危難による切迫が私たちに及び、私たちを駆り立てていることを知るのである。」
上の「試訳」は原文の語順・構造との対応を優先した訳である。ここでは、一部の意訳や語順調整を許し、日本語としての流れと読みやすさを優先した自然化訳を示す。
§5 は商人の航海を、利益を求めて自ら危険へ入る一方、ひとたび海へ出れば風・渦・死/生の結果を完全には制御できない営みとして閉じた。
§6 S001 の冒頭 Սոյն աւրինակ「同じように」は、その航海譬喩を著者側へ移す明示的な橋である。
この文では հարկ が二度現れる。
հարկ վտանգի
「危難による強制・切迫」
↓
հասեալ ստիպեալ զմեզ
「到来して、われわれを駆り立てる」
↓
առաւել ի հարկէ
「さらに/まさに必要に迫られて」
↓
նաւեալք
「航海して」
↓
իմաստութեան ծովուն
「知恵の海」
つまり著者は、単に「商人のように私も航海する」と言っているのではない。強制・必要がまず著者たちに及び、その必要に押されて「知恵の海」へ乗り出すという対応を作っている。
ここで S001 が直接言うのは「知恵の海」である。後続 S002 は、これほどの苦労を人が自発的に引き受けることはなく、権威の命令による強制が必要だと説明し、S005 はさらに ակամայ「意に反して」・ըստ հրամանացն「命令に従って」・ի բռնութենէ「強制によって」と明示する。したがって S001 の coercion reading は後続文脈によって補強されるが、S001 の局所構文自体はそれに依存せず成立する。
「知恵の海」が具体的に歴史叙述・書物制作の海であることは §6 後半で明示される。S001 では比喩の target を先走って「歴史」と置換せず、wisdom / intellectual undertaking の水準を保持する。
Agathangelos では Սոյն աւրինակ が作品内で反復して、前の事例を次の事例へ写す sentence-initial formula として使われる。§294、§519、§568 などでも同様。
本箇所では 3 տեսանեմք の直接目的語とはせず、文全体へかかる 「同じように」 と読む。3 の目的語は [4–8] で独立に充足する。
KOS1980 Ch.3 §IV pp.267–270 は、տեսանել などの動詞に過去分詞が「対象の状態」を表す補語として付く構造を明示する。
本箇所では、
տեսանեմք
└─ հարկ 対格単数
├─ հասեալ 過去分詞
└─ ստիպեալ 過去分詞
とする。
KOS1980 は複数目的語の場合に過去分詞も 対格複数 となる例 Տեսանեմք զմեծատունս աղքատացեալս … を挙げる。このため տեսանեմք զմեզ ստիպեալ「自分たちが強いられているのを見る」を 第一分析 とするより、単数 հարկ を被述語項とする分析が形態的に優れる。
4 հարկ は 主格単数/対格単数 同形だが、3 տեսանեմք の目的語として 対格単数。5 վտանգի は 属格単数/与格単数 同形だが、名詞内部の限定として 属格単数。
հարկ は「必要・強制・切迫」、վտանգ は「危険・危難」。日本語では文脈上 「危難による強制/危難から生じる切迫」とするが、属格そのものは「による」という因果関係だけに固定されない。
NBHL / CALFA の Ստիպեմ は「強いる、駆り立てる」で、ստիպեաց զիս / զնա / զաշակերտսն のように対格目的語を取る。
したがって、
ստիպեալ └─ զմեզ 1人称複数・対格
を採用する。表面形だけなら Ստիպիմ「強いられる」の過去分詞も候補だが、明示対格8との valency が active Ստիպեմ を支持する。
11 հարկէ は 奪格単数。NBHL / CALFA は ի հարկէ を “of necessity / by force / by compulsion” と記述する。
9 առաւել は「さらに、より、むしろ」。局所的には [10–12] を強め、
「いっそう/まさに必要に迫られて航海して」
と読む。文全体への広い rhetorical 作用域 も可能だが構造を変えないため 残存する別解 とする。
Նաւեմ は「航海する、船で進む」。12 նաւեալք は 過去分詞・主格複数 で、3 տեսանեմք の 省略主語(1人称複数) subject と同じ著者たちを指す。
HMB2018 §177 / HMB2018.NFIN03.C001 は、過去分詞と定動詞述語が同一主語を共有して連鎖する構造を明示する。同作者 §10 にも նաւեալք … վտանգեցան という直接的な平行がある。
形態カテゴリーはあくまで過去分詞であり、独立した「converb」形態カテゴリーを立てない。
HMB2018 §161、ABR1976.ADP09.C002、JEN1959.ADP09.C003 は ի վերայ の属格支配を支持する。
ի վերայ
└─ ծովուն 属格単数
└─ իմաստութեան 属格単数
「知恵の海」
したがって全体は 「知恵の海の上を/上に」。
辞書的に確認できる副詞的結合。「必要から」「必然的に」「強制によって」→ 文脈上「必要に迫られて」。
Agathangelos 内で反復する類比導入 formula。「同じように」。不透明な慣用句というより談話上定型化した結合として扱う。
本箇所では明瞭な比喩「知恵の海」。固定慣用句としてではなく、§5 の海洋譬喩を target domain へ写す文学的結合として読む。
* KOS1980, Ch.3 §IV, pp.267–270 — տեսանել 等+過去分詞による対象状態の表現、単複格一致。