アガタンゲロス『アルメニア人の歴史』— 公開ページ試作(§1 S007)
原文
1զի 2թէպէտ 3եւ 4տեսանիցեն 5զբռնութիւն 6սաստկութեան 7հողմակոծեալ 8ալեացն 9տատանելոց, 10որ 11յերփն 12երփն 13զերանգսն 14շրջշրջեն 15ըստ 16սաստկութեան 17ծփանացն, 18դիզադէզ 19յեղեղուկ 20փրփրացեալ 21զմիմեանց 22կարգեալ 23զկնի 24տողիցին, 25եւ 26յափնածիր 27յաւազադիր 28սահմանս 29բարձրացելոցն 30ընդդէմ՝ 31հասեալ 32ի 33ցամաքակէտն 34ծիծաղեսցին։
番号は下の「逐語分析」「構造図」の番号と対応する。
試訳
「というのも、たとえ彼らが、風に打たれ揺れ動く波々の猛烈な力を目の当たりにしても――その波々は、うねりの激しさに応じて色合いをさまざまに変え、幾重にも盛り上がって移ろい泡立ち、一つまた一つと順序立って列をなし、岸辺の砂地の境へ向かって高く立ち上がる――、それでも彼らは岸にたどり着くと、笑うのである。」
採用分析。 外枠は 1 զի が前文 S006 から生じる説明要求を受け、2–4 թէպէտ եւ տեսանիցեն が譲歩節「たとえ彼らが見ても」を作り、31–34 հասեալ ի ցամաքակէտն ծիծաղեսցին が「岸へ達すると、彼らは笑う」という主節をなす。5–30 はその間に展開される「波の猛威」の長い描写で、10 որ は 8 ալեացն「波々」を受ける関係詞とする。
9 տատանելոց は形だけなら未来分詞 տատանելոց と、過去分詞 տատանեալ の斜格複数形が衝突する。S001 նաւելոցն と同型の問題である。ただし本箇所では 8 ալեացն が GEN.PL.DEF であり、9 տատանելոց はそれと格・数をそろえた後置分詞として、[ալեացն տատանելոց]「揺れ動く波々の」という属格名詞句を作るとみるのが自然である。CALFA / NBHL が引くヤコブ1:6の հողմակոծեալ եւ տատանեալ ալեաց ծովու という近い結合もこの分析を補強する。したがって未来分詞分析は表面同形の別候補として注記に残すが、採用しない。
Zi tʿēpēt ew tesanicʿen zbṙnutʿiwn sastkutʿean hołmakoceal aleacʿn tatanelocʿ, or yerpʿn erpʿn zerangsn šrǰšrǰen əst sastkutʿean cpʿanacʿn, dizadēz yełełuk pʿrpʿracʿeal zmimeancʿ kargeal zkni tołicʿin, ew yapʿnacir yawazadir sahmans barjracʿelocʿn ənddēm՝ haseal i cʿamakʿakētn cicałescʿin.
| No. | 語形 | Romanize | 品詞・形態 | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | զի | zi | 接続詞;前文 S006 から生じる説明要求を受ける談話標識 | というのも |
| 2 | թէպէտ | tʿēpēt | 譲歩接続詞;3 եւ とともに 4 以下を導く | ~とはいえ、たとえ~ても |
| 3 | եւ | ew | թէպէտ եւ の一部 | ~であっても |
| 4 | տեսանիցեն | tesanicʿen | տեսանել・接続法第一未来・能動形3複;譲歩節内 | 彼らが見る、目の当たりにする |
| 5 | զբռնութիւն | zbṙnutʿiwn | բռնութիւն・ACC.SG;4 の直接目的語。6–9 によって限定される中心語 | 力を、猛威を |
| 6 | սաստկութեան | sastkutʿean | սաստկութիւն・GEN.SG と採用;7–9 の属格名詞句に限定され、全体で5 զբռնութիւնを限定 | 激しさの;全体として「猛烈な」 |
| 7 | հողմակոծեալ | hołmakoceal | -եալ 分詞/形容詞的用法;8 ալեացն を前置修飾 | 風に打たれた、風に翻弄された |
| 8 | ալեացն | aleacʿn | ալիք「波」・GEN.PL.DEF | 波々の |
| 9 | տատանելոց | tatanelocʿ | տատանեալ の斜格複数・GEN.PL;8 ալեացն と格・数一致する後置分詞。表面形は未来分詞 -ոց と同形だが本構文では採らない | 揺れ動く、揺さぶられる |
| 10 | որ | or | 関係詞;8 ալեացն「波々」を先行詞とする | それらは、その波々は |
| 11–12 | յերփն երփն | yerpʿn erpʿn | յ = նախդիր ի の異形。երփն ACC.SG と結ぶ յերփն に、反復表現 երփն が続く。HMB2018 §156 の ի/յ + ACC の具格的・様態的用法として採用 | 色とりどりに、さまざまな色合いで/へと |
| 13 | զերանգսն | zerangsn | երանգ「色、色合い」・ACC.PL.DEF;14 の目的語 | 色合いを、色彩を |
| 14 | շրջշրջեն | šrǰšrǰen | շրջշրջեմ・直説法現在3複 | くるくる変える、変化させる |
| 15 | ըստ | əst | 前置詞;16を支配 | ~に応じて、~に従って |
| 16 | սաստկութեան | sastkutʿean | սաստկութիւն・DAT.SG;15 ըստ 支配(HMB2018 §159) | 激しさに応じて |
| 17 | ծփանացն | cpʿanacʿn | ծփանք「うねり、波立ち」・GEN.PL.DEF;16を限定 | うねりの、波立ちの |
| 18 | դիզադէզ | dizadēz | 形容詞/副詞;20 փրփրացեալ を中心とする18–20の様態描写の一部 | 幾重にも、堆く、盛り上がって |
| 19 | յեղեղուկ | yełełuk | յեղյեղուկ の実証された異綴。CALFA/NBHL 自身が յեղյեղուկս (կամ յեղեղուկս) と併記し、別著者にも յեղեղուկ 実例あり。採用本文資料では §1 と §15 の2例を確認 | 移ろいつつ、変転しながら |
| 20 | փրփրացեալ | pʿrpʿracʿeal | փրփրամ / փրփրանամ の -եալ 過去分詞;18–20の様態描写の中心 | 泡立って、泡を立てて |
| 21 | զմիմեանց | zmimeancʿ | reciprocal GEN.PL;23 զկնի に支配され、分離配置された順序句を作る | 互いの、一つが他の |
| 22 | կարգեալ | kargeal | կարգեմ の -եալ 過去分詞;近義の24 տողիցին に様態・意味強化を加える | 順序立って、整然と |
| 23 | զկնի | zkni | 前置詞・副詞;21 զմիմեանց と組み「互いの後に/一つまた一つと」 | 後に、一つまた一つと |
| 24 | տողիցին | tołicʿin | տողեմ・接続法第一未来・受動形3複(HMB2018 §§112–114);文脈では中動的に「列をなす」。CALFA/NBHL引用の տողեսցին は第二未来受動形として説明可能な異読 | 列をなす、連なって並ぶ |
| 25 | եւ | ew | 接続詞 | そして |
| 26 | յափնածիր | yapʿnacir | յ + ափնածիր;27 とともに28 սահմանս を修飾。26–28 は一つの ի/յ + ACC.PL 方向句 | 岸辺の、岸に囲まれた |
| 27 | յաւազադիր | yawazadir | յ + աւազադիր;26 と並んで28を修飾。CALFA/NBHL は同箇所に աւազածիր を掲げ、一写本の異読として աւազադիր を記録 | 砂地の、砂を帯びた |
| 28 | սահմանս | sahmans | սահման「境、限界」・ACC.PL;26–27 とともに一つの方向句を作る | 境へ、岸の縁へ |
| 29 | բարձրացելոցն | barjracʿelocʿn | բարձրանամ → բարձրացեալ・PTCP.PAST.GEN.PL.DEF;8 ալեացն と遠隔一致 | 高く立ち上がった、せり上がった |
| 30 | ընդդէմ | ənddēm | 副詞として採用;29 բարձրացելոցն の運動方向・対向性を補強。GEN支配の後置詞分析は別解として文法説明に残す | 向かって、対して、ぶつかるように |
| 31 | հասեալ | haseal | հասանել の -եալ 過去分詞;34 と主語を共有する副詞的分詞 | 達して、到着して |
| 32 | ի | i | 前置詞;移動先 | ~へ、~に |
| 33 | ցամաքակէտն | cʿamakʿakētn | ցամաքակէտ「岸、海岸」・ACC.SG.DEF;32 ի と到達点を表す | 岸へ、海岸へ |
| 34 | ծիծաղեսցին | cicałescʿin | ծիծաղիմ, եցայ・接続法第二未来・受動形活用3複。HMB2018 §§126–128。形態上は受動形系列だが、語彙的には自動詞「笑う」であり意味上の受動ではない | 彼らは笑う/笑うだろう |
※ 2–3 թէպէտ եւ は ABE1936 §230、JEN1959 §574 が記述する譲歩構文と合う。したがって 4 տեսանիցեն は「見るだろう」という単独未来より、譲歩節内の接続法として読むのが自然である。
※ 9 տատանելոց は表面形として未来分詞 -ոց と衝突しうるが、本箇所では 8 ալեացն GEN.PL.DEF と格・数一致する後置分詞として読む。すなわち [ալեացն տատանելոց]「揺れ動く波々の」 という属格名詞句である。HMB2018 §135 の未来分詞形成は形態的同形候補の説明として保持するが、構文上の採用分析は過去分詞斜格複数とする。
※ 24 տողիցին は採用本文の形であり、HMB2018 §§112–114 の ե活用・受動形・接続法第一未来3複 -իցին に正規に一致する。CALFA / NBHL が同じ箇所を տողեսցին と引く形は、HMB2018 §§126–128 に照らせば完了語幹から作る第二未来受動形として説明可能である。したがって単純な誤記とはせず、形態的に成立する異読として注記する。
※ 19 յեղեղուկ は CALFA / NBHL が յեղյեղուկս (կամ յեղեղուկս) と併記する実証された異綴であり、本文形をそのまま保持する。
AGATH.001.S07
════════ A. 文全体の外枠 ═══════════════════════════
[1] զի
「というのも」
│
└─説明
↓
[2–4] թէպէտ եւ տեսանիցեն ...
「たとえ彼らが……を目にしても」
譲歩節
│
│ 5–30 = 見る対象「波の猛威」の長い展開
│
▼
[31–34] հասեալ ի ցամաքակէտն ծիծաղեսցին
「岸に達すると、彼らは笑う」
│
├─[31–33] հասեալ ... 「岸に達して」
│ 過去分詞・副詞的用法
└─[34] ծիծաղեսցին 有限動詞3複
subject:
Øᵢ = S005–S006 から継続する航海者/商人たち
════════ B. 4 տեսանիցեն の目的語 ═════════════════════
[4] տեսանիցեն
│
└─目的語──> [5] զբռնութիւն
「力/猛威を」
│
└─[6] սաստկութեան GEN.SG
「激しさの」
│
└─[7–9] հողմակոծեալ ալեացն տատանելոց
「風に打たれ揺れ動く波々の」
括り:
[5 զբռնութիւն
[6 սաստկութեան
[7–9 հողմակոծեալ ալեացն տատանելոց]]]
自然な日本語:
「風に打たれ揺れ動く波々の猛烈な力を」
【9 の形態と統語】
[8] ալեացն GEN.PL.DEF
[9] տատանելոց PTCP.PAST.GEN.PL
↑ 格・数一致する後置分詞
[ալեացն տատանելոց]
「揺れ動く波々の」
※ 表面形は future participle -ոց と同形だが、
本構文では過去分詞斜格複数を採用。
════════ C. 10 որ が導く「波々」の関係節 ══════════════
[8] ալեացն
「波々」
│
└────> [10] որ
「それらは/その波々は」
│
├─[11–14]
│ յերփն երփն զերանգսն շրջշրջեն
│ 「色合いをさまざまに変える」
│
│ └─[15–17]
│ ըստ սաստկութեան ծփանացն
│ 「うねりの激しさに応じて」
│
└─[18–24]
├─[18–20 様態]
│ դիզադէզ յեղեղուկ փրփրացեալ
│ 「幾重にも盛り上がり、移ろいながら泡立って」
│
├─[21+23 順序]
│ զմիմեանց ... զկնի
│ 「一つまた一つと/互いの後に」
│
└─[22 + 24 述語複合]
կարգեալ ... տողիցին
「順序立って、列をなす」
24 տողիցին = 第一未来・受動形3複
22 կարգեալ = 近義過去分詞による様態・意味強化
════════ D. 25–30 — 波の後置分詞修飾 ════════════════
[8] ալեացն GEN.PL.DEF
:
: 長い関係節を挟む
:
└──── [25] եւ
[26–28] յափնածիր յաւազադիր սահմանս
「岸辺の砂地の境へ」
│
└─[29] բարձրացելոցն GEN.PL.DEF
「高く立ち上がった」
│
└─[30] ընդդէմ ADV
「向かって/ぶつかるように」
→ [29] բարձրացելոցն は
բարձրացեալ の GEN.PL.DEF として
遠隔の [8] ալեացն に一致する後置修飾と採用。
→ [26–28] は一つの ի + ACC.PL 方向句。
26・27 の յ- 反復は BAG1852 の前置詞反復の記述で説明可能。
→ [30] ընդդէմ は副詞として [29] բարձրացելոցն を修飾する分析を採用。
════════ E. 結末 ════════════════════════════════════
危険を見る:
տեսանիցեն զբռնութիւն ...
↓
波は色を変え、泡立ち、列をなし、岸へせり上がる
↓
それでも:
հասեալ ի ցամաքակէտն
「岸に達して」
↓
ծիծաղեսցին
「彼らは笑う」
S006 は、商いが大きくなるにつれて航海者たちが「自分自身を引き換えに差し出す」と述べた。ここで読者には、「なぜそこまで自らを賭けるのか」という暗黙の説明要求が生じる。S007 冒頭の 1 զի は、単純に機械的な「なぜなら~からである」へ置換するより、前文によって生じたこの説明要求に応答して後続の情景を提示する談話標識と読むのがよい。
2–4 թէպէտ եւ տեսանիցեն は譲歩的で、「たとえ彼らが見ても/目の当たりにしても」。彼らが見る 5–30 は、まさにこれまで S002–S003 で描かれてきた荒海の猛威である。したがって S006 の「身を賭ける」は、危険を知らずに身を投じるという意味ではなく、危険を十分に見ながら、それでも航海へ向かうという構図の中に置き直される。
5–9 はその「見るもの」を圧縮して提示する。
զբռնութիւն սաստկութեան հողմակոծեալ ալեացն տատանելոց
ここは三層に括る。
[զբռնութիւն
[սաստկութեան
[հողմակոծեալ ալեացն տատանելոց]]]
7–9 հողմակոծեալ ալեացն տատանելոց は「風に打たれ揺れ動く波々の」という属格名詞句で、これが 6 սաստկութեան「激しさ」を限定し、さらに 6–9 全体が 5 զբռնութիւն「力・猛威」を限定すると読む。逐語的な「波々の激しさの力」では日本語として重いため、本文では 「風に打たれ揺れ動く波々の猛烈な力」 とほどく。բռնութիւն は CALFA / NBHL で violence / force / vehemence の意味を持ち、հողմակոծ は storm-beaten / agitated by the wind とされる。
10 որ 以下では、波そのものが再び運動主体になる。11–14 では波が色彩を変える。երփն երփն は「色とりどりに、さまざまな色に」、շրջշրջեմ は「ぐるぐる回す、変える」。さらに 15–17 ըստ սաստկութեան ծփանացն が、その変化を「うねりの激しさに応じて」と限定する。荒海は高さだけでなく、動きに伴って見え方・色合いまで絶えず変えるものとして描かれる。
18–24 は三層に整理できる。まず 18–20 դիզադէզ յեղեղուկ փրփրացեալ は、CALFA / NBHL が本箇所を一続きの用例として掲げる様態描写で、「幾重にも盛り上がり、移ろいながら泡立って」ほどになる。次に 21 զմիմեանց と23 զկնի は、辞書に確認できる զկնի միմեանց / զմիմեանց կնի「一つが他の後に、次々と」の分離配置とみる。最後に22 կարգեալ と24 տողիցին は、いずれも「配列・整列」の意味場に属する近義表現で、「順序立って、列をなす」という一つの述語複合として読む。
この最後の組合せには文法・文体上の裏づけがある。HAY2005 は、有限動詞と同義・近義の過去分詞を前置して様態・意味を強める構文を記述する。BAG1852 §§580–581, 587 も、分詞・準動詞を有限動詞に重ねて確定・強調・進展を表す型を挙げ、§1098 Աւելադրութիւն ではこれを付加・反復による装飾・強調の一種として位置づける。さらに §632 は同義または意味の近い語根による意味的重畳を扱う。したがって կարգեալ … տողիցին は二つの独立出来事ではなく、近義分詞+有限動詞による意味強化として読むのが最もよい。
25–30 も現在はかなり整理できる。29 բարձրացելոցն は բարձրացեալ の GEN.PL.DEF として、長い関係節を挟んで8 ալեացն GEN.PL.DEF に遠隔一致すると採用する。
ալեացն ... բարձրացելոցն 「……高く立ち上がった波々の」
26–28 յափնածիր յաւազադիր սահմանս は一つの ի + ACC.PL 方向句で、「岸辺の砂地の境へ/境まで」。二つの յ- は、BAG1852 が記述する前置詞の修飾語上での反復によって説明できる。
30 ընդդէմ は副詞として29 բարձրացելոցն に付き、「向かって/ぶつかるように」という対向性を添えると採用する。したがって全体は「そして岸辺の砂地の境へ向かって高く立ち上がった〔波々〕」ほどになる。
文末は急に航海者へ戻る。
հասեալ ի ցամաքակէտն 「岸に達して」 ծիծաղեսցին 「彼らは笑う」
この「笑う」は、荒海の恐怖を軽視する笑いというより、これほどの危険を見、くぐり抜けた者が陸に到達した時の安堵・歓喜と読むのが文脈上自然である。したがって S007 は、S006 の「自らを賭け、引き換えにする」ことへの暗黙の問いに、「危険を知りながらも、その先の到達には安堵と歓喜がある」という形で応答する。同時に34 ծիծաղեսցին「彼らは笑う」は、S001 で提示された「平安のうちの喜び」を具体的な身体反応として回収しており、S001→S007 の主題的な呼応を作る。
1–4 զի թէպէտ եւ տեսանիցեն — 説明+譲歩
ABE1936 §230、JEN1959 §574 は թէպէտ / թէ եւ 系を譲歩構文として扱う。本箇所では、
զի թէպէտ եւ տեսանիցեն ... ... ծիծաղեսցին
とし、
「というのも、 たとえ彼らが……を見ても、 ……彼らは笑う」
という外枠を採る。
4 տեսանիցեն は HMB2018 §112 の第一未来系列に合う形である。ただし HMB2018 §114 が明示するように、第一未来の願望・条件・義務・未来などの具体的意味は本文環境で決まる。本箇所では թէպէտ եւ の譲歩節に入るため、単純な時間未来として固定しない。
9 տատանելոց — ալեացն と一致する後置分詞
HMB2018 §135 は未来分詞を、不定詞形に -ոց を付けて形成するとする。
տատանել + ոց → տատանելոց
したがって表面形だけなら未来分詞が候補に立つ。しかし HMB2018 §49 は過去分詞が屈折に参加することを明示し、տատանեալ の斜格複数も同じ表面形 տատանելոց に達しうる。この衝突は S001 նաւելոցն と同型である。
本箇所では 8 ալեացն が GEN.PL.DEF で、9 տատանելոց がその直後に置かれる。したがって、両者を格・数一致する名詞+後置分詞として、
[ալեացն տատանելոց] GEN.PL PTCP.PAST.GEN.PL 「揺れ動く波々の」
とまとめるのが最も自然である。CALFA / NBHL がヤコブ1:6から引く հողմակոծեալ եւ տատանեալ ալեաց ծովու も、「波」+ տատանեալ の結合を独立に裏づける。
したがって未来分詞は表面同形候補としては記録するが、主要な別解 からは降格する。意味上は日本語では受動を強く出すより「揺れ動く波々」とする。
10 որ — 複数先行詞を受ける関係詞
10 որ は 8 ալեացն「波々」を受けるとみる。Grabar の որ は形態上の単数形が複数先行詞を受けることがあり、関係節内の動詞は先行詞の複数性に応じて複数となりうる。
本箇所では、
ալեացն ... որ ... շրջշրջեն ... տողիցին 「波々……それらは……変え……並ぶ」
という対応を採る。
11–12 յերփն երփն — ի/յ + ACC の様態表現
HMB2018 §156 は նախդիր ի (կամ՝ յ) が対格とも結び、方向だけでなく具格的な意味を取りうることを明記する。երփն は NOM/ACC.SG が同形であり、本箇所では、
յ + երփն երփն ի + ACC
と分析する。CALFA/NBHL が独立に記録する反復表現 երփն երփն は「色とりどりに、さまざまな色に」を表すため、全体は14 շրջշրջեն を様態的に修飾し、「色合いを色とりどりに/さまざまに変える」となる。
CALFA/NBHL の同じ Agathangelos 箇所の引用には որ երփն երփն զերանգսն շրջշրջեն と յ- を欠く形もある。したがって 採用本文の յ- は語義の中核ではなく、版差を伴いうる前置詞的付加として扱う。
15–17 ըստ սաստկութեան ծփանացն
15 ըստ は基準・一致を表し、「~に応じて」。16 սաստկութեան は GEN/DAT 同形だが、本構文では ըստ 支配の DAT.SG とする。17 ծփանացն GEN.PL.DEF がこれを限定し、
ըստ [սաստկութեան [ծփանացն]] 「うねりの激しさに応じて」
となる。
19 յեղեղուկ — 実証された異綴
辞書標準見出しは Յեղյեղուկ だが、CALFA/NBHL は同一例文中で յեղյեղուկս (կամ յեղեղուկս) と明示的に異形を併記する。また別著者にも յարափոխ յեղեղուկ սահման の実例がある。採用本文資料でも յեղեղուկ は §1 S007 と §15 に2回現れ、յեղյեղուկ は現れない。
したがって本箇所の յեղեղուկ は単純な誤植ではなく、յեղյեղուկ に対する実証された異綴として保持する。意味は「しばしば変わる、移ろう、変転する」。
18–24 — 様態描写+順序句+近義分詞+有限動詞
18–24 は次の三層に分ける。
[18–20 MANNER] դիզադէզ յեղեղուկ փրփրացեալ 「幾重にも盛り上がり、移ろいながら泡立って」 [21+23 ORDER] զմիմեանց ... զկնի 「一つまた一つと/互いの後に」 [22 + 24 PREDICATE COMPLEX] կարգեալ ... տողիցին 「順序立って、列をなす」
20 փրփրացեալ は自動詞 փրփրամ / փրփրանամ「泡立つ」の過去分詞で、18 դիզադէզ・19 յեղեղուկ とともに波の様態を累積して描く。
21 զմիմեանց の基底形 միմեանց は表面上 GEN/DAT が同形であるが、本箇所では23 զկնի が属格を支配するため GEN.PL と確定する。ACC.PL զմիմեանս とは区別され、22 կարգեալ の直接目的語ではない。HMB2018 §161 は զկնի を属格支配の前置詞・後置詞として分類し、CALFA / NBHL の զկնի միմեանց / զմիմեանց կնի が直接の平行例となる。したがって21+23は「互いの後に/一つまた一つと」を表す順序句とする。
22 կարգեալ と24 տողիցին は、ともに「配列・整列」を表す近義表現である。HAY2005 は、有限動詞と同義・近義の過去分詞を前置し、様態・意味を強める構文を記述する。BAG1852 §§580–581, 587 は分詞・準動詞+有限動詞の意味強化を、§1098 Աւելադրութիւն は付加・反復による強調を、§632 は同義・近義語根の意味的重畳をそれぞれ記述する。本例はこれらの交点に位置すると考えられる。
24 տողիցին は HMB2018 §§112–114 に従い 接続法第一未来・受動形3複。文脈上は中動的に「列をなす」と訳す。CALFA / NBHL の同箇所引用 տողեսցին は HMB2018 §§126–128 の第二未来受動形として説明可能な異読であり、本文形 տողիցին の文法性を損なわない。
31 հասեալ — 主節に先行する副詞的過去分詞
31 հասեալ は後続34 ծիծաղեսցին と同じ航海者を主語として、
[Øᵢ հասեալ ի ցամաքակէտն] [Øᵢ ծիծաղեսցին]
「岸に達して、彼らは笑う」
とする副詞的過去分詞の分析が明瞭である。
29 բարձրացելոցն — 遠隔の ալեացն との一致
բարձրանալ の過去分詞は բարձրացեալ。その GEN.PL.DEF բարձրացելոցն は、長い関係節を挟んで8 ալեացն GEN.PL.DEF と対応すると採用する。
հողմակոծեալ [ալեացն] տատանելոց, որ ..., եւ ... [բարձրացելոցն] ... 「風に打たれ、揺れ動き、 ……し、 さらに……高く立ち上がった波々の」
CALFA / NBHL も同箇所を Ալեացն յափնածիր սահմանս բարձրացելոցն …、別項では Հողմակոծ ալեացն յաւազածիր սահմանս բարձրացելոցն と引用しており、この遠隔一致分析を補強する。
30 ընդդէմ — 採用分析:副詞/代案:GEN支配の後置詞
採用分析では、30 ընդդէմ を副詞とし、29 բարձրացելոցն の運動方向・対向性を補強する。
յափնածիր յաւազադիր սահմանս բարձրացելոցն ընդդէմ 「岸辺の砂地の境へ、向かって/ぶつかるように高く立ち上がった」
この分析では、29 բարձրացելոցն は8 ալեացն と遠隔一致する GEN.PL.DEF の後置過去分詞であり、26–28 はその方向補語、30 は副詞的修飾語となる。
別解: HMB2018 §161 は ընդդէմ を属格支配の格支配語として挙げ、BAG1852 も格支配語の後置用法を認める。このため、
[ալեացն ... բարձրացելոցն] ընդդէմ
「……高く立ち上がった波々に向かい合って」
のように、8–29 の長い属格句全体を30が後置支配する分析も形態的には可能である。ただし31 հասեալ ի ցամաքակէտն にすでに明瞭な到達句が続くため、文全体の統語・意味の経済性では副詞分析を優先する。
34 ծիծաղեսցին — 第二未来・受動形活用3複
CALFA の見出しは Ծիծաղիմ, եցայ。HMB2018 §§126–128 の完了語幹から作る接続法第二未来に従う。とくに §128 の Ի活用・受動形系列、
խորհեսցի 3SG խորհեսցին 3PL
と同型である。また §126 注57によれば、完了語幹末の ց は、語尾の ց / ջ の前で ս に変わる。
ծիծաղեց- + ցին
↓
ծիծաղեսցին
したがって厳密には 接続法第二未来・受動形活用3複。ただし ծիծաղիմ は語彙的に自動詞「笑う」であり、ここで「受動」は活用系列の形態ラベルであって意味上の受動態ではない。本文では「彼らは笑う」と訳す。
թէպէտ եւ
譲歩を表す文法的結合。「~とはいえ/たとえ~ても」。S007 の外枠を決める重要な接続形式。
երփն երփն
CALFA / NBHL は ԵՐՓՆ ԵՐՓՆ を「色とりどりの、さまざまな色の」の意味で独立に記述する。S007 では զերանգսն շրջշրջեն と結び、波の色合いが変転する様子を表す。
զկնի միմեանց / զմիմեանց կնի
「一つが他の後に、次々に」。S007 の զմիմեանց կարգեալ զկնի は語順が割れているが、この定型的結合を背景に読むのが有力。
読解ノート — クローズ済み(2026-09-20)
文全体の骨格:
զի
[թէպէտ եւ
[Øᵢ տեսանիցեն
[զբռնութիւն ...
[ալեացն ...]]]]
[Øᵢ հասեալ ի ցամաքակէտն
ծիծաղեսցին]
「というのも、
たとえ彼らが荒れ狂う波の猛威を目にしても、 岸に達すると彼らは笑う。」
5–30 の内部では、
ալեացն ├─ տատանելոց ← 過去分詞斜格複数として採用 ├─ որ │ ├─ շրջշրջեն │ └─ տողիցին ← FUT1.PASS.3PL;形態確定 └─ բարձրացելոցն ← PTCP.PAST.GEN.PL.DEF として採用
という「波々」を中心とする長い修飾・関係節連鎖を採用する。
状態:クローズ済み。 文全体の大構文、有限動詞、主要な分詞構文、前置詞支配、18–24、25–30、試訳を確認し、採用分析を確定した。クローズを妨げる未解決点は残っていない。
クローズ日:2026-09-20
以下は採用分析を変更しない異読・別解として記録する。
- 9 տատանելոց — 表面形は未来分詞
-ոցと同形だが、8ալեացնと一致する過去分詞斜格複数を採用する。 - 11 յերփն — CALFA / NBHL の同箇所引用には
յ-を欠く形もある。採用本文ではի/յ + ACCの様態表現として読む。 - 19 յեղեղուկ — 標準見出し
յեղյեղուկに対する実証された異綴として保持する。 - 24 տողիցին — CALFA / NBHL には第二未来受動形として説明可能な異読
տողեսցինがある。 - 27 յաւազադիր — CALFA / NBHL は同箇所に
աւազածիրを掲げ、一写本の異読としてաւազադիրを記録する。採用本文形を保持する。 - 30 ընդդէմ — 副詞として29
բարձրացելոցնを修飾する分析を採用する。8–29 の属格句全体を受ける後置詞分析も形態的には可能であり、文法解説に別解として残す。
本文読解では、1 զի を S006 が生む暗黙の説明要求への応答とし、34 ծիծաղեսցին を S001 の「平安のうちの喜び」と主題的に呼応する到達時の安堵・歓喜として読む。
- Agathangelos, Պատմութիւն Հայոց, §1 S007(採用本文)。
- ABE1936 — §230:
թէպէտ / թէ եւ系の譲歩構文。 - JEN1959 — §574:
թէպէտ / թէ եւの譲歩構文;§300:接続法の未来的・可能的機能とアスペクト。 - HMB2018 — §49:過去分詞を含む準動詞の屈折可能性;§§112–114:接続法第一未来;§§126–128:第二未来;§135:未来分詞
-ոցと過去分詞-եալの形成;§156:ի/յの格支配と用法;§159:ըստの格支配;§161:属格支配の前置詞・後置詞。 - BAG1852 — §§580–581, 587:分詞・準動詞+有限動詞による確定・強調・進展;§632:同義・近義語根の意味的重畳;§1028:複数の前置修飾語を伴う前置詞句;§1098
Աւելադրութիւն:付加・反復、および前置詞反復による装飾・明確化・強調。 - HAY2005 — NFIN.07 / NFIN.08 関連記述:有限動詞に同義・近義の過去分詞を前置して様態・意味を強化する構文。
- CALFA / NBHL —
Բռնութիւն,Հողմակոծ,Շրջշրջեմ,Ծփանք,Դիզադէզ,Յեղյեղուկ,Տողեմ,Զկնի,Ափնածիր,Բարձրանամ,Ցամաքակէտ,Ծիծաղիմ各項目。ヤコブ1:6のհողմակոծեալ եւ տատանեալ ալեաց ծովու、Agathangelos 同箇所の… զմիմիեանց կնի կարգեալ տողեսցինも比較参照。
