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アガタンゲロス『アルメニア人の歴史』— 精読ノート(§2 S003)
原文
1զի 2ուր 3հարկ 4է 5զաղքատութեան 6անուն 7յանձանց 8թաւթափեալ, 9եւ 10զտառապեալ 11ընտանեակսն 12թափեալ 13ի 14գրաւահարկ 15իշխանացն 16բռնութենէ, 17եւ 18յիւրեանց 19շահիցն 20բերելոց 21հաճեալ 22զպարտս 23վտանգին՝ 24ի 25լծոյ 26ծառայութեան 27թագաւորացն 28ազատացեալ 29դատարկասցին։
試訳
「というのも、貧困という名を自分たちの身から振り払い、困窮する家の者たちを徴税権力者たちの暴力から解放し、また自分たちが持ち帰った収益から困窮による負債を支払い、王たちへの隷属の軛から解放されて身軽になる必要があるからである。」
全 REVIEW 調査完了。クローズ前整合性監査済み。 1–29 の形態・統語・語義は現在の採用分析に同期済み。REVIEW.001–005 はいずれも解決済みで、本文・逐語分析・構造図・本文読解・試訳を変更する未決点は残っていない。
Zi ur hark ē załkʿatutʿean anun yanjancʿ tʿawtʿapʿeal, ew ztaṙapeal əntaneaksn tʿapʿeal i grawahark išxanacʿn bṙnutʿenē, ew yiwreancʿ šahicʿn berelocʿ hačeal zparts vtangin՝ i lcoy caṙayutʿean tʿagaworacʿn azatacʿeal datarkascʿin.
| No. | 語形 | Romanize | 品詞・形態 | 意味・機能 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | զի | zi | 接続詞。S002 の航海動機をさらに説明する explanatory / causal connector | というのも、なぜなら |
| 2 | ուր | ur | 自由関係副詞/状況接続。空間的「where」から時間・状況「when / in a situation where」へ拡張 | ~する状況では、~するとき |
| 3 | հարկ | hark | 名詞 NOM.SG。4 է と無人称的必要表現 հարկ է | 必要、必要性 |
| 4 | է | ē | եմ・PRES.IND.3SG。3 と հարկ է | ~する必要がある |
| 5 | զաղքատութեան | załkʿatutʿean | աղքատութիւն GEN.SG;句全体 [աղքատութեան անուն] の目的語標識 զ- が前置修飾語に付く | 貧困の |
| 6 | անուն | anun | անուն ACC.SG(NOM/ACC同形);5と一体で8の目的語句の中心 | 名、呼び名 |
| 7 | յանձանց | yanjancʿ | յ- < ի + անձանց;ABL.PL。8の離脱源 | 自分たちの身から |
| 8 | թաւթափեալ | tʿawtʿapʿeal | թօթափեմ・PTCP.PAST の surface variant թաւթափ-。5–6を目的語、7を離脱源に取り、29と主語共有 | 振り払って、脱ぎ捨てて |
| 9 | եւ | ew | 接続詞 | そして |
| 10 | զտառապեալ | ztaṙapeal | տառապեալ・形容詞的過去分詞/語彙化形容詞。11を前置修飾。զ- は目的語句全体にかかる | 苦しむ、困窮した |
| 11 | ընտանեակսն | əntaneaksn | ընտանեակ・ACC.PL.DEF。10と一体で12の直接目的語 | 家の者たち、身内 |
| 12 | թափեալ | tʿapʿeal | թափեմ・PTCP.PAST。10–11を目的語、13–16を離脱源に取り、29と主語共有 | 解放して、救い出して |
| 13 | ի | i | 16のABL.SG と結び起点・離脱を表す | ~から |
| 14 | գրաւահարկ | grawahark | 形容詞用法。多音節前置形容詞として不変化し15を修飾 | 差押え徴収を行う、徴税する |
| 15 | իշխանացն | išxanacʿn | իշխան・GEN.PL.DEF;16を属格限定し、14に修飾される | 権力者たちの、支配者たちの |
| 16 | բռնութենէ | bṙnutʿenē | բռնութիւն・ABL.SG;13 ի に支配される離脱源句の中心 | 暴力・強制から |
| 17 | եւ | ew | 接続詞 | そして |
| 18 | յիւրեանց | yiwreancʿ | յ- < ի + իւրեանց;19と一体で離脱源句を導く | 自分たちの~から |
| 19 | շահիցն | šahicʿn | շահ ABL.PL.DEF;18の յ- に支配され、20の一致先 | 収益から |
| 20 | բերելոց | berelocʿ | բերեալ・PTCP.PAST.ABL.PL;19に後置一致。「FUT.PTCP」説は降格 | もたらされた、持ち帰った |
| 21 | հաճեալ | hačeal | հաճեմ(他動)PTCP.PAST。22を目的語に取り「満たす・支払う」 | 支払って、満たして |
| 22 | զպարտս | zparts | պարտք ACC.PL;21の目的語 | 負債を、義務を |
| 23 | վտանգին | vtangin | վտանգ GEN.SG.DEF;22を限定。ここでは distress / hardship の語義 | 困窮の、窮迫に伴う |
| 24 | ի | i | 25と起点・離脱「~から」 | ~から |
| 25 | լծոյ | lcoy | լուծ ABL.SG;24 ի に支配される | 軛から |
| 26 | ծառայութեան | caṙayutʿean | ծառայութիւն GEN.SG;25 լծոյ を限定 | 奉仕・隷属の |
| 27 | թագաւորացն | tʿagaworacʿn | թագաւոր GEN.PL.DEF;26 ծառայութեան の関係属格。意味上は奉仕・隷属の向かう相手 | 王たちへの |
| 28 | ազատացեալ | azatacʿeal | ազատանամ・PTCP.PAST;完了語幹 ազատաց- + -եալ。24–27を離脱源とし29と主語共有 | 解放されて、自由になって |
| 29 | դատարկասցին | datarkascʿin | դատարկանամ・SUBJ.FUT2.3PL(HMB §128 受動形A活用系列) | 拘束から解かれる、身軽になる |
AGATH.§2.S003
status: closed reading
════════ A. 外枠 — 理由説明+必要性 ═══════════════════
[1] զի
explanatory / causal connector
「というのも/なぜなら」
│
└─ [2] ուր
状況接続「~する状況では/~するとき」
│
└─ [3–4] հարկ է
impersonal necessity
「~する必要がある」
│
└───────────────> [29] դատարկասցին
SUBJ.FUT2.3PL
「拘束から解かれ、身軽になる」
Øᵢ = 航海者たち
════════ B. 29 に累積する同一主語の過去分詞列 ════════
Øᵢ = 航海者たち
│
├─ [5–8]
│ զ-[աղքատութեան անուն]
│ յանձանց թաւթափեալ
│ 「貧困という名を自分たちの身から振り払い」
│
├─ [10–16]
│ զ-[տառապեալ ընտանեակսն]
│ թափեալ
│ ի [բռնութենէ [իշխանացն [գրաւահարկ]]]
│ 「困窮する家の者たちを
│ 徴税権力者たちの暴力から解放し」
│
├─ [18–23]
│ յ [իւրեանց շահիցն բերելոց]
│ հաճեալ զպարտս վտանգին
│ 「自分たちが持ち帰った収益から
│ 困窮による負債を支払い」
│
├─ [24–28]
│ ի [լծոյ [ծառայութեան [թագաւորացն]]]
│ ազատացեալ
│ 「王たちへの隷属の軛から解放されて」
│
└──────────────> [29] դատարկասցին
「拘束から解かれ、身軽になる」
8 թաւթափեալ、12 թափեալ、21 հաճեալ、28 ազատացեալ は、いずれも航海者たちを暗黙主語として29の定動詞 դատարկասցին に連なる。20 բերելոց は19 շահիցն に ABL.PL で後置一致する過去分詞であり、この主語共有列とは別に名詞句内部の修飾語として機能する。
S002 は、航海者たちが死の危険を承知しながら海へ出る目的として、利益を得て帰り、自分たちの収益を家族に、労苦の誇りを隣人に示すことを語った。S003 はその動機をさらに一段深く掘り下げ、なぜ利益を得る必要があるのかを社会的・経済的な拘束から説明する文とみられる。
本文は、複数の解放・負担除去を累積的に描く。
貧困という名
↓ 振り払う
困窮する家族
↓ 徴税権力の暴力から解放する
自分たち
↓ 王への奉仕の軛から解放される
その中間に18–23の「持ち帰った収益から困窮による負債を支払う」が入り、航海による収益は家族への贈与だけでなく、徴税・債務・隷属から身を解くための現実的資源として描かれている。
12 թափեալ については CALFA / NBHL が Թափեմ に「to disengage, deliver, release, relieve」を挙げ、さらに Ընտանեակ 項が本箇所をほぼそのまま、
Զտառապեալ ընտանեակսն թափել ի բռնութենէ։
と引用する。このため10–16は 「困窮する家の者たちを徴税権力者たちの暴力から解放する」 と読む。
21 հաճեալ も、自動詞 հաճիմ「満足する」ではなく、他動詞 Հաճեմ の用法が重要である。CALFA / NBHL は Հաճեմ を「satisfy / fulfil / pay」の意味域で説明し、本箇所由来の … զպարտս վտանգի … を含む例を直接引用する。したがって21–22は 「負債を満たす/支払う」 とする。
20 բերելոց は S001/S002 でも問題になった -ելոց 同形衝突を起こすが、本箇所では19 շահիցն との後置一致、形容詞的未来分詞用法の稀少性、過去分詞斜格複数の平行例から PTCP.PAST.ABL.PL を採用する。したがって18–20は「自分たちが持ち帰った収益から」と読む。
3–4 ''հարկ է'' — 無人称的必要表現
CALFA / NBHL は Հարկ に հարկ է「必要である、~しなければならない」を明記する。HMB2018 にも հարկ է … の実例があり、必要・義務のモーダル表現として問題ない。
本箇所では、通常の単純な不定詞補語ではなく、多数の分詞を経て文末の定動詞29 դատարկասցին に至る。BAG1852 §605 は հարկ է թէ / զի + 定動詞 型を認め、Agathangelos §386 に հարկ էր զի նովաւ սրբեսցին という作者内平行がある。2 ուր は場所副詞ではなく、状況接続「~する状況では/~するとき」とする。
5–8 ''զաղքատութեան անուն յանձանց թաւթափեալ''
զ-[աղքատութեան անուն] は「貧困という名を」、յանձանց は ABL.PL「自分たちの身から」。թաւթափեալ は辞書標準 lemma Թօթափեմ の PTCP.PAST で、surface թաւթափ- は Agathangelos §774 にも確認されるため本文形を保持する。
10–16 ''զտառապեալ ընտանեակսն թափեալ ...''
CALFA / NBHL Ընտանեակ が本箇所を直接引用するため、句構造の確度は高い。
OBJ զտառապեալ ընտանեակսն
「困窮する家の者たちを」
PTCP թափեալ
「解放して」
SOURCE ի ... բռնութենէ
「~の暴力から」
14 գրաւահարկ は名詞・形容詞両用だが、本箇所では15 իշխանացն を前置修飾する不変化形容詞とする。CALFA/NBHL の Ի գրաւահար իշխանաց が直接的な平行例である。
21 ''հաճեալ'' — ''հաճեմ'' の他動用法
CALFA / NBHL は他動詞 Հաճեմ に「満足させる、満たす、支払う」を認め、本箇所を引用する。そのため հաճեալ զպարտս は「負債を支払って/義務を満たして」とする。
24–29 — 「隷属の軛」から解かれる
լուծ は「軛」のほか比喩的に subjection / slavery / bondage を表す。CALFA / NBHL には զերծանիլ ի լծոյ「軛から解放される」などがある。
また Դատարկանամ は「空になる、暇になる」のほか、դատարկանալ յամենայն հոգոց եւ ի զբաղմանց「すべての心労・拘束から自由になる」という用法を持つ。したがって29は単なる「空になる」ではなく、この文脈では 「負担・拘束から解かれ、身軽になる」 とする。
読解ノート — REVIEW
AGATH.§2.S003.REVIEW.001 — 1–4 と29:''զի ուր հարկ է ... դատարկասցին'' — RESOLVED
採用分析
- 1
զի— S002 の「利益を得て帰る」必要性をさらに理由づける explanatory / causal connector。「というのも/なぜなら」。 - 2
ուր— 純粋な場所副詞ではなく、自由関係副詞から拡張した状況接続。「~する状況では/~するとき」。CALFA/NBHL はուրに where のほか when / while / because を認める。 - 3–4
հարկ է— 「税がある」ではなく、モーダル「必要である」。BAG1852 §605 はհարկ է թէ / զի + 定動詞を認め、Agathangelos §386 に同作者平行հարկ էր զի նովաւ սրբեսցինがある。 - 29
դատարկասցին—դատարկանամSUBJ.FUT2.3PL。HMB2018 §128 の受動形A活用系列իմասցինと同型。語彙的には自動詞であり、ここでは「拘束から解かれる/身軽になる」。
構造
[1] զի
「というのも」
│
└─ [2] ուր
「~する状況では/~するとき」
│
└─ [3–4] հարկ է
「~する必要がある」
│
└─ 8・12・21・28 の分詞列
↓
[29] դատարկասցին
SUBJ.FUT2.3PL
「拘束から解かれ、身軽になる」
հարկ の「税・貢納」義は直後の գրաւահարկ のため一度検討したが、モーダル構文・作者内平行・文全体の意味連鎖から active alternative には残さない。
AGATH.§2.S003.REVIEW.002 — 5–8 ''զաղքատութեան անուն յանձանց թաւթափեալ'' — RESOLVED
採用分析
[5–6] զ-[աղքատութեան անուն]
աղքատութեան GEN.SG
անուն ACC.SG (NOM/ACC同形)
「貧困という名を」
│ OBJ
↓
[8] թաւթափեալ
PTCP.PAST of թօթափեմ
surface variant: թաւթափ-
「振り払って」
↑
[7] յանձանց
յ- < ի + ABL.PL
「自分たちの身から」
5–6 は զ-[աղքատութեան անուն] を採用する。HMB2018 §154 は、格支配される中心語に前置の補語・修飾語がある場合、前置詞がその前置要素に付くことを明記する。したがって զ- は5 աղքատութեան 自体を対格化するのではなく、目的語句全体 [աղքատութեան անուն] の標識である。6 անուն は NOM/ACC.SG 同形だが、ここでは8の直接目的語として ACC.SG。
7 յանձանց は յ- < ի + անձանց、ABL.PL。「自分たちの身から」という離脱源。HMB2018 §156 の ի + ABL の本来的離脱用法に合う。
8 թաւթափեալ は標準辞書 lemma թօթափեմ の PTCP.PAST を採用する。CALFA/NBHL Թօթափեմ は「振り払う、取り除く」を持ち、թօթափել զլուծ「軛を振り払う」、ի բաց թօթափել …「取り除く」などが本箇所とよく合う。ここでは5–6を目的語に取るため、թօթափիմ ではなく他動詞 թօթափեմ が適切。
表面形 թաւթափեալ は単純な誤記として正規化しない。Phase 2 frozen target では Agathangelos §774 にも յիւրաքանչիւր ախտից թաւթափեալք があり、同じ թաւթափ- が校合 operation なしで保持されている。したがって本文 surface は թաւթափեալ を保持し、lemma 層のみ թօթափեմ に正規化する。
8は12・21・28と同じく副詞的な過去分詞で、S002から継続する航海者たちを暗黙主語として29 դատարկասցին に連なる。HMB2018 §177 の同一主語の過去分詞+定動詞の構文に整合する。
意味は 「貧困という名を自分たちの身から振り払って」 を採用する。անուն 自体には name / reputation / title の語義があるが、「汚名」とまで語彙的に強めず、「貧困という名」とする。
採用分析
[10–11] զ-[տառապեալ ընտանեակսն]
տառապեալ preposed ADJ / lexicalized PTCP
ընտանեակսն ACC.PL.DEF
「困窮する家の者たちを」
│ OBJ
↓
[12] թափեալ
PTCP.PAST of թափեմ
「解放して/救い出して」
│ SOURCE
↓
[13–16] ի [բռնութենէ [իշխանացն [գրաւահարկ]]]
բռնութենէ ABL.SG / HEAD
իշխանացն GEN.PL.DEF
գրաւահարկ preposed invariant ADJ
「差押え徴収を行う権力者たちの暴力から」
10–11 は一つの対格目的語句。10 տառապեալ は CALFA/NBHL で独立した形容詞見出しを持ち、「不幸な、貧しい、惨めな」の意味域を持つ。形態史的には分詞由来でも、本箇所では前置の語彙化形容詞として11 ընտանեակսն を修飾するのが自然。HMB2018 §83 によれば、多音節の前置形容詞は通常屈折せず、名詞との格一致を表面上示さない。したがって10が不変化でも11 ACC.PL.DEF との構成に問題はない。
11 ընտանեակսն は ACC.PL.DEF で12 թափեալ の直接目的語。CALFA/NBHL Ընտանեակ は本箇所をそのまま Զտառապեալ ընտանեակսն թափել ի բռնութենէ と引用しており、句構造を直接支持する。
12 թափեալ は lemma թափեմ の PTCP.PAST。CALFA/NBHL は թափել զոք ի ձեռաց ուրուք「人を他者の手から救い出す/解放する」を明記する。本箇所でも transitive に10–11を目的語とし、13–16を「何から解放するか」の離脱源に取るため、թափիմ ではなく թափեմ が適切。
13–16 は ի [բռնութենէ [իշխանացն [գրաւահարկ]]] と解析する。13 ի は16 բռնութենէ ABL.SG を支配し、15 իշխանացն GEN.PL.DEF が16を「権力者たちの暴力」と限定する。14 գրաւահարկ は15を前置修飾する形容詞用法。
CALFA/NBHL Գրաւահարկ は名詞・形容詞両用だが、形容詞義に「who exacts by seizure」を挙げ、さらに Ի գրաւահար իշխանաց という直接的な平行例を持つ。HMB2018 §83 の前置多音節形容詞の不変化とも一致する。名詞用法なら辞書例 ի գրաւահարկէ իշխանացն のように格語尾を伴いうるが、本箇所の無語尾 գրաւահարկ իշխանացն は形容詞分析の方が整合的である。
NBHL は本語について Agathangelos の旧版 գրահարկ、写本系 գրաւահարկ という異読情報も記録する。Phase 2 frozen target は գրաւահարկ を採用しており、ここではその本文を保持する。
したがって意味は、
「困窮する家の者たちを、差押え徴収を行う権力者たちの暴力から解放して」
を構造的には採用する。日本語としてはやや重いため、試訳層では 「困窮する家の者たちを徴税権力者たちの暴力から解放し」 程度に平滑化してよい。
12は8・21・28と同様、航海者たちを暗黙主語として29 դատարկասցին に連なる副詞的過去分詞である。
AGATH.§2.S003.REVIEW.004 — 18–23 ''յիւրեանց շահիցն բերելոց հաճեալ զպարտս վտանգին'' — RESOLVED
採用分析
յ [իւրեանց շահիցն բերելոց]
շահիցն ABL.PL.DEF
բերելոց PTCP.PAST.ABL.PL
postposed modifier
「自分たちが持ち帰った収益から」
հաճեալ զպարտս վտանգին
հաճեալ PTCP.PAST of հաճեմ
զպարտս ACC.PL
վտանգին GEN.SG.DEF
「困窮による負債を支払って」
20 բերելոց は FUT.PTCP と PAST.PTCP oblique plural の同形衝突を起こすが、後置位置、19 շահիցն との ABL.PL 一致、HMB2018 §83 の後置一致、BAG1852 §1254 の PAST.PTCP -ելոց 実例、ABE1936 §26 の FUT.PTCP 形容詞用法の稀少性から PAST.PTCP.ABL.PL を採用する。意味上 future も矛盾しないが active alternative からは降格。
23 վտանգին は զպարտս を限定する GEN.SG.DEF。直後 §3 の աղքատութիւն / կարաւտութիւն / պարտք / հարկ 文脈、および NBHL の distress / hardship 語義から日本語は 「困窮による負債」を採用する。
AGATH.§2.S003.REVIEW.005 — 24–29 ''ի լծոյ ծառայութեան թագաւորացն ազատացեալ դատարկասցին'' — RESOLVED
採用分析
ի
└─ լծոյ ABL.SG
「軛から」
└─ ծառայութեան GEN.SG
「隷属の」
└─ թագաւորացն GEN.PL.DEF
「王たちへの」
ազատացեալ
PTCP.PAST of ազատանամ
「解放されて」
│ same subject
↓
դատարկասցին
SUBJ.FUT2.3PL of դատարկանամ
「拘束から解かれ、身軽になる」
24–27 は ի [լծոյ [ծառայութեան [թագաւորացն]]] を採用する。CALFA/NBHL լուծ は ընդ լծով ծառայութեան「隷属の軛」、ծառայութիւն は ծառայութիւն մեղաց / սատանայի のように、隷属の対象を属格で取る用例を持つ。したがって27 թագաւորացն は形式上 GEN.PL.DEF、意味上は「王たちへの奉仕・隷属」を表す。
28 ազատացեալ は lemma ազատանամ を採用する。HMB2018 §135 は過去分詞を原則として完了語幹+-եալで作り、զարմանալ → զարմացեալ のような A活用派生を明示する。ազատանամ, ացայ から ազատաց- + եալ → ազատացեալ は正則的である。ազատեմ なら基本的には ազատեալ。CALFA が ազատացեալ を Ազատեմ にも収録する点は辞書上の異形・重複情報として残すが、本箇所の lemma 判定を揺らさない。
統語的にも ազատանամ は ազատանալ ի …「~から自由になる」を取り、CALFA/NBHL に ազատանալ ի բռնադատողական հարկաւորութենէ, ազատանալ … յամենայն զբօսանաց などがある。本箇所の ի լծոյ … と直接整合する。
28–29 は単純な同義反復というより、結果的な累積と読む。
「王たちへの隷属の軛から」
↓
ազատացեալ
「解放されて」
↓
դատարկասցին
「拘束・負担から解かれた状態になる」
դատարկանամ は CALFA/NBHL に դատարկանալ յամենայն հոգոց եւ ի զբաղմանց「あらゆる心労・用務から自由になる」の用例があり、「空になる」より 「拘束・負担から解かれる/身軽になる」 が本箇所に適する。
29の形態は REVIEW.001 で確定済み:դատարկանամ SUBJ.FUT2.3PL。
したがって全体は、
「王たちへの隷属の軛から解放されて、身軽になる」
を採用する。
REVIEW.001–005 はすべて RESOLVED。逐語分析・構造図・本文読解・試訳を相互照合し、探索段階の旧記述も現在の採用分析へ同期した。本文解釈を変更する BLOCKING な未決点はない。S003 は closed reading とする。
- Agathangelos, Պատմութիւն Հայոց, §2 S003;採用本文は Phase 2 frozen target v1.0.1。
- HMB2018 —
հարկ է、従属法第二未来、同一主語の過去分詞+定動詞、前置詞ի/յの格支配、前置形容詞の不変化、前置詞の句頭付加等を参照。 - CALFA / NBHL —
Հարկ,Թօթափեմ,Թափեմ,Ընտանեակ,Գրաւահարկ,Բռնութիւն,Հաճեմ,Բերեմ,Լուծ,Ծառայութիւն,Ազատանամ / Ազատեմ,Դատարկանամ各項目。 - CALFA / NBHL
Ընտանեակ— 本箇所Զտառապեալ ընտանեակսն թափել ի բռնութենէの直接引用。 - CALFA / NBHL
Հաճեմ— 本箇所由来の… զպարտս վտանգի …を含む直接引用。
