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アガタンゲロス『アルメニア人の歴史』— 精読ノート(§3 S001・CLOSED)
原文
1Վասն 2այսորիկ 3ընդ 4անհնարին 5պատերազմ 6մարտնչին 7ի 8մէջ 9բարձրացելոց 10ջրեղէն 11լերանց 12եւ 13ի 14մէջ 15խոնարհելոց 16ծովային 17ձորոցն, 18ջանան 19զապրուստ 20անձանց 21փրկութեան 22գտանել, 23զի 24ի 25շրջանացն 26շփոթեալ 27ուռուցիկ 28փոթորկացն 29բքացելոց 30զերծանել 31եւ 32յանքոյթ 33նաւահանգիստն 34հասանել 35կարասցեն.
番号は下の「逐語分析」「構造図」の番号と対応する。
試訳
「このため彼らは、そびえ上がった水の山々と沈みこんだ海の谷々のただ中で、苛烈な戦いを繰り広げ、自分たちの身を救う手立てを見いだそうと努める――入り乱れ、膨れ上がり、吹き荒れる嵐の渦から逃れ、安全な港へ到達できるように。」
CLOSED. REVIEW.001–008 を解決し、逐語分析・構造図・本文読解・文法解説・試訳を相互整合させて確定した。
クローズ時確定事項
- 省略主語は §2 から継続する航海者たち。
- 9
բարձրացելոց・15խոնարհելոցはともに PAST.PTCP.GEN.PL。 ընդ անհնարին պատերազմは ACC を伴う戦闘状況句。զապրուստ [անձանց փրկութեան]は「自分たちの身を救う手立て」。զի … կարասցենはջանան … գտանելに統語付着する目的節。ի շրջանացն [շփոթեալ ուռուցիկ փոթորկացն բքացելոց]は「入り乱れ、膨れ上がり、吹き荒れる嵐の渦から」。յանքոյթ նաւահանգիստն հասանելは「安全な港へ到達する」。
Vasn aysorik ənd anhnarin paterazm martnčʿin i mēǰ barjracʿelocʿ ǰrełēn lerancʿ ew i mēǰ xonarhelocʿ covayin jorocʿn, ǰanan zaprust anjancʿ pʿrkutʿean gtanel, zi i šrǰanacʿn špʿotʿeal uṙucʿik pʿotʿorkacʿn bkʿacʿelocʿ zercanel ew yankʿoytʿ nawahangistn hasanel karascʿen.
| No. | 語形 | lemma | 形態 | 節での役割 |
|---|---|---|---|---|
| 6 | մարտնչին | մարտնչիմ | 直説法現在・3人称複数 | 主節A。「戦う」 |
| 18 | ջանան | ջանամ | 直説法現在・3人称複数 | 主節B。「努める」;22不定詞を補部に取る |
| 35 | կարասցեն | կարել(կարողանալ) | 従属法・3人称複数(未来価値) | 23 զի が導く目的節の定動詞;30 զերծանել・34 հասանել の二不定詞を共有補部として支える |
三つとも複数主語を要求し、§2から継続する航海者たちを省略主語とする。
| No. | 語形 | Romanize | 品詞・形態 | 意味・機能 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Վասն | vasn | 前置詞;2属格を支配 | ~のために |
| 2 | այսորիկ | aysorik | 指示代名詞・属格単数 | このことの;1と Վասն այսորիկ「このため」 |
| 3 | ընդ | ənd | 前置詞;5 պատերազմ の ACC.SG を支配 | ~の中で/~という状況で;戦闘状況を示す副詞句 |
| 4 | անհնարին | anhnarin | 形容詞・前置修飾;5を修飾 | 激しい、苛烈な、凄まじい |
| 5 | պատերազմ | paterazm | 名詞・対格単数;3 ընդ の補部 | 戦い、戦闘 |
| 6 | մարտնչին | martnčʿin | մարտնչիմ・直説法現在3人称複数 | 戦う、格闘する |
| 7 | ի | i | 8と ի մէջ を形成 | ~の中で |
| 8 | մէջ | mēǰ | 名詞由来の前置詞的要素;9–11属格句を取る | ただ中 |
| 9 | բարձրացելոց | barjracʿelocʿ | բարձրանամ → բարձրացեալ・過去分詞・属格複数;11と一致 | 高く上がった、そびえ上がった |
| 10 | ջրեղէն | ǰrełēn | 形容詞・前置修飾;多音節前置形容詞として不変化 | 水の、水から成る |
| 11 | լերանց | lerancʿ | լեառն・属格複数;7–8の補部の中心 | 山々の |
| 12 | եւ | ew | 接続詞 | そして |
| 13 | ի | i | 14と ի մէջ を形成 | ~の中で |
| 14 | մէջ | mēǰ | 名詞由来の前置詞的要素;15–17属格句を取る | ただ中 |
| 15 | խոնարհելոց | xonarhelocʿ | խոնարհիմ 系 խոնարհեալ・過去分詞・属格複数;17と一致。未来分詞説は棄却 | 低く落ち込んだ、沈みこんだ |
| 16 | ծովային | covayin | 形容詞・前置修飾;17を修飾 | 海の、海上の |
| 17 | ձորոցն | jorocʿn | ձոր・属格複数・定;13–14の補部の中心 | 谷々の、谷間の |
| 18 | ջանան | ǰanan | ջանամ・直説法現在3人称複数 | 努める、力を尽くす |
| 19 | զապրուստ | zaprust | ապրուստ・対格単数;22 գտանել の直接目的語。21の目的属格を受ける中心語 | 生存・救命の手立て、助かるすべ |
| 20 | անձանց | anjancʿ | անձն・GEN/DAT/ABL.PL 同形。本箇所では GEN.PL;21 փրկութեան の目的語的属格として前置 | 自分たちの身の/自分たち自身の |
| 21 | փրկութեան | pʿrkutʿean | փրկութիւն・GEN/DAT.SG 同形。本箇所では GEN.SG;19 ապրուստ を限定する目的属格。20を目的語的属格として取る | 救い、救命;「自分たちの身を救うための」 |
| 22 | գտանել | gtanel | 不定詞 | 見いだす |
| 23 | զի | zi | 接続詞;18–22 ջանան … գտանել に係る目的節を導く | ~するために、~できるように |
| 24 | ի | i | 25 շրջանացն の ABL.PL.DEF を支配 | ~から |
| 25 | շրջանացն | šrǰanacʿn | շրջան・ABL.PL.DEF;24 ի の補部。28以下の属格句を受ける中心語 | 渦、渦巻きから |
| 26 | շփոթեալ | špʿotʿeal | Շփոթեմ / Շփոթիմ・過去分詞;28 փոթորկացն の前置属性修飾。語形だけではactive/middleを区別しないが、局所意味は middle/passive | 入り乱れた、かき乱された、荒れた |
| 27 | ուռուցիկ | uṙucʿik | 形容詞;28 փոթորկացն の前置修飾。多音節前置修飾語として裸形 | 膨れ上がった、膨張した、荒々しく膨らむ |
| 28 | փոթորկացն | pʿotʿorkacʿn | փոթորիկ・GEN.PL.DEF;25 շրջանացն を後置属格修飾。29を後置一致修飾語として取る | 嵐、暴風の |
| 29 | բքացելոց | bkʿacʿelocʿ | բքացեալ・過去分詞的形容詞/GEN.PL;28 փոթորկացն に後置一致。lexical base は Բուք。独立動詞 lemma は立てない | 吹き荒れる、荒れ狂う |
| 30 | զերծանել | zercanel | Զերծանիմ 系不定詞;直接目的語を取らず、24–29 ի + ABL を離脱源に取る | 逃れる、脱する |
| 31 | եւ | ew | 接続詞;30と34を並列 | そして |
| 32 | յանքոյթ | yankʿoytʿ | յ- < ի(方向を表す前置詞)+ անքոյթ「安全な」;前置詞は32–33全体を支配 | 安全な~へ |
| 33 | նաւահանգիստն | nawahangistn | նաւահանգիստ・ACC.SG.DEF;ի/յ + ACC の到達点、34 հասանել の目標 | 港へ |
| 34 | հասանել | hasanel | հասանեմ・不定詞;32–33の到達点句を取る | 到達する |
| 35 | կարասցեն | karascʿen | կարել (կարողանալ)・従属法3人称複数(未来価値) | ~することができるように |
[1–2] Վասն այսորիկ 「このため」
│
▼
Ø = §2から続く航海者たち
│
├─ 主節A [6] մարտնչին 「戦う/奮闘する」
│ ├─ situation: [3–5] ընդ անհնարին պատերազմ
│ │ 「苛烈な戦いの中で」
│ └─ place:
│ ├─ [7–11] ի մէջ [բարձրացելոց ջրեղէն լերանց]
│ │ 「そびえ上がった水の山々のただ中で」
│ └─ [12–17] եւ ի մէջ [խոնարհելոց ծովային ձորոցն]
│ 「沈みこんだ海の谷々のただ中で」
│
└─ 主節B [18] ջանան 「努める」
└─ [22] գտանել 「見いだす」
├─ OBJ [19] զապրուստ 「救命の手立て」
│ └─ PURPOSE GEN [21] փրկութեան
│ └─ OBJECTIVE GEN [20] անձանց
│ 「自分たちの身の救いのための」
│
└─ PURPOSE CLAUSE [23] զի
└─ [35] կարասցեն 「~できるように」
├─ [30] զերծանել 「逃れる」
│ └─ SOURCE [24] ի + [25] շրջանացն (ABL.PL.DEF)
│ └─ GEN [28] փոթորկացն (GEN.PL.DEF)
│ ├─ PRE [26] շփոթեալ
│ ├─ PRE [27] ուռուցիկ
│ └─ POST [29] բքացելոց
│ 「入り乱れ、膨れ上がり、吹き荒れる嵐の渦から」
│
└─ [31] եւ [34] հասանել 「そして到達する」
└─ GOAL [32] յ- < ի + [32–33] անքոյթ նաւահանգիստն
ACC.SG.DEF
「安全な港へ」
統語的には23以下の目的節を主節B ջանան … գտանել に付ける。談話意味上は、その「脱出・入港」という目的が主節A մարտնչին を含む航海行動全体にも及ぶ。
§2 は、死を予兆する荒海を前にしても航海者が進む理由を、収益・家族・負債・隷属、さらに仲間・敵・親愛者との社会的関係から説明した。§3 第一文は冒頭の Վասն այսորիկ「このため」によって、その説明を受けて再び海上の闘争そのものへ視点を戻す。
7–17 は、§1以来の波の上下運動を「山」と「谷」の対照で再構成する。
բարձրացելոց ջրեղէն լերանց
「そびえ上がった水の山々」
↕
խոնարհելոց ծովային ձորոցն
「沈みこんだ海の谷々」
CALFA の Ջրեղէն は ջրեղէն լերինք を「大波・波濤」に相当する結合として掲げており、「水の山」は単なる即興的比喩ではなく、波を山に見立てる理解を強く支える。
18–22 では航海者の行動が ջանան … գտանել「見いだそうと努める」と目的志向的に言い直され、23以下がその目的を具体化する。最終到達点は 32–34 յանքոյթ նաւահանգիստն հասանել「安全な港へ到達する」。CALFA Անքոյթ と Նաւահանգիստ は անքոյթ նաւահանգիստ を直接 safe harbour / port と説明する。Agathangelos §10 հասանել ի նաւահանգիստն խաղաղութեան、§16 … յանքոյթ նաւահանգիստն հասեալ も、հասանել + ի/յ + 港 の同作者平行として独立に支える。
19 ապրուստ は「糧・生活手段」だけでなく「生・救い・脱出」に接近する語義を持つ。本箇所では KOS1980 の属格分類と独立用例から、զապրուստ [անձանց փրկութեան] を「自分たちの身を救う手立て」と読む。CALFA/NBHL が引用する Ջանան զապրուստս անձանց փրկութեան は同一箇所由来なので構造判定には用いず、語義確認にのみ用いる。
1–2 ''Վասն այսորիկ'' — 前文を受ける「このため」
վասն は属格を取り、2 այսորիկ は属格単数。HMB2018 にも Վասն այսորիկ の実例が複数あり、前文の内容を理由として受ける「このため/それゆえ」と理解できる。
3–6 ''ընդ անհնարին պատերազմ մարտնչին''
5 պատերազմ は NOM/ACC.SG 同形だが、3 ընդ の支配により ACC.SG とする。HMB2018 §158 は ընդ + ACC に場所・経路・範囲・手段などの用法を認め、ABE1936 §213 も「~の中で/~を通って/~の方向に」に相当する局所的・経路的用法を詳述する。
一方、մարտնչիմ が敵対相手を取る場合、CALFA の独立例は մարտնչել ընդ քաղդէացիս, մարտնչէին … ընդ միմեանս のように ընդ + 人・相手 を示す。GHAZ2012 の ՄԱՐՏ ԴՆԵԼ ԸՆԴ ՈՒՄԵՔ も同型である。同作者にも ընդ նմա պատերազմեալք, ընդ սրբոյն պատերազմեալ のような「相手との戦い」がある。
したがって本文の抽象名詞 ընդ անհնարին պատերազմ は、մարտնչին の「敵対相手」補部ではなく、戦闘という状況・場面を設定する副詞句とみる。
մարտնչին
「戦う/奮闘する」
├─ situation: ընդ անհնարին պատերազմ
│ 「苛烈な戦いの中で」
└─ place: ի մէջ ... լերանց
եւ ի մէջ ... ձորոցն
「水の山々と海の谷々のただ中で」
前者が「どのような状況で戦うか」、後者が「物理的にどこで戦うか」を示すため、両者は重複しない。
4 անհնարին は CALFA で impossible のほか extremely difficult / violent / excessive / terrible を持ち、Պատերազմ անհնարին という結合も記録される。同作者でも անհնարին հարուածս, անհնարին թշնամանս, անհնարին չարիք, անհնարին սուգ など、程度の甚だしさを表す強意的用法が多数ある。ここでは「不可能な戦い」ではなく 「苛烈な/凄まじい戦い」 とする。
10 ''ջրեղէն''・16 ''ծովային'' — 前置形容詞
HMB2018 §83・§178 は、多音節の前置形容詞が通常は曲用せず、後続名詞と表面上の格一致を示さないことを説明する。したがって、
ջրեղէն լերանց 「水の山々の」 ծովային ձորոցն 「海の谷々の」
で 10・16 が不変化形であることは、11・17 の属格複数と矛盾しない。
23 ''զի'' と 35 ''կարասցեն'' — 目的節
HMB2018 §189 は、主節の行為の目的を表す従属節を զի / որպէս զի / վասն զի などが導くとする。同じ §189 は զի が原因節も導きうることを示すため、接続詞だけでは判定しない。
本箇所では、35 կարասցեն が能力動詞 կարել の従属法3人称複数で未来価値を持ち、30 զերծանել と34 հասանել を共有して、
ջանան ... գտանել
「見いだそうと努める」
↓ PURPOSE
զի
└─ կարասցեն
├─ զերծանել
│ 「逃れる」
└─ եւ հասանել
「そして到達する」
を形成する。
同作者 §2 には ջանան … զի թերեւս … ցուցանիցեն があり、զի 節が直前の ջանան の目的を表す。さらに §150 զի զԱստուած տեսանել կարասցեն、§382 զի մարմնաւորքս տեսանել կարասցեն も、զի + … կարասցեն の明瞭な目的構文である。
したがって統語上は23以下を 18–22 ջանան … գտանել に係る目的節とする。ただし「嵐から逃れ港に達する」という目的は、談話意味上は前置する6 մարտնչին「戦う」にも遡り、航海者の行動全体の telos を与える。構造図では狭い統語付着を採り、本文読解では広い意味作用域を注記する。
30 ''զերծանել'' — 自動/中動の「逃れる」
CALFA は同形不定詞に、他動 Զերծանեմ「~を救い出す・取り去る」と、自動/中動 Զերծանիմ「逃れる・解放される」を区別する。
他動型は զոգիս … զերծանել յԱստուծոյ բարկութենէ のように直接目的語を伴うのに対し、自動/中動型には Ոչ կարեմ զերծանել ի լեառն「山から逃れることができない」のような 目的語なし + ի + ABL の独立例がある。
本箇所は、
ի շրջանացն ... զերծանել 「……の渦から逃れる」
と直接目的語を持たないため、30は Զերծանիմ 系とする。
32–34 ''յանքոյթ նաւահանգիստն հասանել''
[34] հասանել
「到達する」
│
└─ GOAL
[32–33] յ [անքոյթ նաւահանգիստն]
ի/յ + ACC.SG.DEF
「安全な港へ」
HMB2018 §156 は前置詞 ի (կամ՝ յ) が対格と結合し、移動方向を示す用法を明記する。したがって32の յ- は ի の異形で、形容詞 անքոյթ だけではなく後続名詞を含む名詞句全体を導く。
33 նաւահանգիստն は NOM/ACC.SG 同形だが、この ի/յ + ACC の方向構文と34 հասանել「到達する」により ACC.SG.DEF と確定する。անքոյթ は前置多音節形容詞なので、HMB2018 §178 に従い裸形のまま中心名詞を修飾する。
語義は CALFA/NBHL の第一義 safe, secure と、Նաւահանգիստ 項の直接説明 անքոյթ … նաւահանգիստ = safe harbour / port を優先し、本文訳を「安全な港」とする。NBHL の fluctibus non agitatus / հանդարտ / խաղաղ / անալէկոծ は「波立たない・穏やかな」という含意を示すが、本文訳で「波静かな」と限定しない。
Վասն այսորիկ— 「このため/それゆえ」。前文全体を理由として受ける。մարտնչիմ+ 戦闘状況句 — 本文ではընդ անհնարին պատերազմが戦闘状況を設定する。ջանամ + INF— 「~しようと努める」。本箇所はջանան … գտանել。զի + SBJV— 目的節。本箇所はզի … կարասցեն。զերծանիմ + ի + ABL— 「~から逃れる/脱する」。հասանել + ի/յ + ACC— 「~へ到達する」。անքոյթ նաւահանգիստ— 辞書に直接確認される「安全な港」。
分析履歴 — REVIEW.001–008(全件解決済み)
以下は 相互に独立した REVIEW として管理する。一つの論点が解決しても、隣接する論点を自動的に解決済みとはしない。
AGATH.§3.S001.REVIEW.001 — 9・15 の分詞形と「山/谷」の対応 — RESOLVED
結論
ի մէջ [բարձրացելոց ջրեղէն լերանց]
PAST.PTCP.GEN.PL GEN.PL
「そびえ上がった水の山々の中」
եւ ի մէջ [խոնարհելոց ծովային ձորոցն]
PAST.PTCP.GEN.PL GEN.PL.DEF
「低く落ち込んだ海の谷々の中」
9 բարձրացելոց と15 խոնարհելոց は、ともに後続する複数属格名詞に一致する 過去分詞・属格複数 とする。15について形態上可能な未来分詞説は、active alternative には残さない。
1. 9 ''բարձրացելոց'' は独立に PAST と確定できる
lemma は բարձրանամ「上がる、昇る」。HMB2018 §135 に従えば未来分詞は不定詞に -ոց を加えるため、未来なら բարձրանալոց が期待される。本文の բարձրացելոց はこれとは異なり、過去分詞 բարձրացեալ の斜格形である。
CALFA / NBHL も Բարձրանամ 項で、
Մայրից բարձրացելոցբլրոց բարձրացելոցպարսպաց բարձրացելոց
など、բարձրացելոց が複数斜格名詞に一致する独立例を示す。
したがって9は、15との平行性を使わずに PAST.PTCP.GEN.PL と確定できる。
2. 15 ''խոնարհելոց'' は本当に FUT / PAST 同形衝突を起こす
խոնարհելոց は、
- 未来分詞:古典語の不定詞
խոնարհել+-ոց - 過去分詞
խոնարհեալの複数斜格:խոնարհելոց
の双方が形態上可能である。したがって表面形だけでは決めない。
HMB2018 §135 は未来分詞を「不定詞 + -ոց」とし、同節で過去分詞を -եալ による形として説明する。HMB2018 §49・§59 は過去分詞が曲用することを確認する。
3. 同一表面形の独立 PAST 用例
CALFA / NBHL Խոնարհիմ 項には、
Յոտն եկաց յերեսացն խոնարհելոց
があり、խոնարհելոց は երեսացն の複数斜格に対応して「伏した/低くした」状態を表す。これは本箇所と同じ曖昧性をそのまま再利用した例ではなく、周囲の格構造と辞書解釈によって過去分詞として独立に解析できる用例である。
4. 本文内部の並列構造
7–17 は二つの ի մէջ + GEN.PL が厳密に対応する。
ի մէջ [բարձրացելոց ջրեղէն լերանց]
↑ PAST ↑ ↑ GEN.PL
եւ
ի մէջ [խոնարհելոց ծովային ձորոցն]
↑ ? ↑ ↑ GEN.PL.DEF
第一項の9が独立に PAST.PTCP.GEN.PL と確定する以上、同じ統語位置に置かれた15を PAST.PTCP.GEN.PL と取ると、上昇した「水の山」/下降した「海の谷」という完全な対照が成立する。
5. 同作者の非循環的平行例
同じ Agathangelos §1 に、波の運動を明示する有限動詞の平行描写がある。
ուր բարկացայտ ալիքն լեռնաձեւ կուտակին, մէտ ի մէտ խոնարհին
すなわち「怒り立つ波々は山のように盛り上がり、次々に低くなる」。ここでは問題の曖昧形 խոնարհելոց を用いておらず、定動詞 խոնարհին が明示されるため、独立に解析可能である。
さらに直後には、
Ելանեն լեռնանան, եւ իջանեն դաշտանան
「上って山となり、下って平地となる」
という上下対照も引用される。§3 の ջրեղէն լերանց / ծովային ձորոցն は、この §1 の海象描写を名詞句として再構成していると読むのが自然である。
6. FUT 説を active alternative に残さない理由
FUT とすれば「これから低くなる/下降する海の谷々」のような prospective な属性を想定する必要がある。しかし、
- 第一項の9が明確な PAST.PTCP.GEN.PL であること、
- 15が17
ձորոցնと格・数一致する PAST 解を直接許すこと、 - 同じ
խոնարհելոցに PAST 複数斜格の独立用例があること、 - §1 の同作者平行が「波が盛り上がる ↔ 低くなる」という同時的・反復的海象を明示すること、
のすべてが PAST を支持する。FUT は「形態上不可能ではない」に留まり、本文解釈上の積極的根拠を欠く。
REVIEW.001 は RESOLVED。
AGATH.§3.S001.REVIEW.002 — 3–6 ''ընդ անհնարին պատերազմ մարտնչին'' — RESOLVED
結論
[6] մարտնչին
FIN.PRES.3PL
「戦う・奮闘する」
│
├─ situation:
│ [3–5] ընդ անհնարին պատերազմ
│ ընդ + ACC.SG
│ 「苛烈な戦いの中で」
│
└─ concrete place:
[7–17] ի մէջ ... լերանց
եւ ի մէջ ... ձորոցն
「水の山々と海の谷々のただ中で」
5 պատերազմ は ACC.SG。3 ընդ はここで、մարտնչիմ が要求する敵対相手を導くのではなく、「戦闘という状況・場面」を示す副詞的前置詞句を形成すると判断する。
日本語試訳では冗長な「苛烈な戦いの中で戦い」を避け、意味を保って 「苛烈な戦いを繰り広げ」 と圧縮する。ただし統語分析上、պատերազմ を մարտնչին の直接目的語とはしない。
1. 格 — ''պատերազմ'' は ACC.SG
պատերազմ は表面上 NOM.SG / ACC.SG が同形である。しかし直前に前置詞 ընդ があり、HMB2018 §158 は ընդ が複数格を支配し、とくに ընդ + ACC を独立類型として扱う。
ABE1936 §213 も ընդ + ACC を詳述し、第一群として ի に近い局所用法、すなわち「~の上・中・方向へ」に相当する用法を挙げる。また第二群では「~を通って/~を経て」を示す。
したがって、
ընդ [անհնարին պատերազմ]
ACC.SG
とするのが形態統語上自然であり、5を主格に取る積極的根拠はない。
2. ''մարտնչիմ'' の敵対相手構文とは区別する
CALFA / NBHL Մարտնչիմ の独立例には、
Մարտեաւ այր մի ընդ նմաՄարտեան ընդ միմեանսՄարտնչել ընդ քաղդէացիսՄարտնչէին հրէայքն ընդ միմեանսՄիթէ մարտնչիցի՞ ինքն ընդ իւր վարդապետս
があり、ընդ + 人/集団 が戦闘相手を表す。
GHAZ2012 も定型 ՄԱՐՏ ԴՆԵԼ ԸՆԴ ՈՒՄԵՔ を「ある者に対して戦う」と説明する。
Agathangelos 自身にも、
որք ընդ նմա պատերազմեալք պսակեցանզոր ընդ սրբոյն պատերազմեալ յիւրում սենեկին
のような「ընդ + 相手」がある。
本文の պատերազմ は相手ではなく 戦いそのものを表す抽象名詞なので、この敵対相手構文と同一視しない。
3. ''ընդ պատերազմ'' は戦闘状況を設定する
CALFA Ընդ は、ACC 系を含む用法として through / among / in the midst / in / into などを挙げる。HMB2018 §158・ABE1936 §213 の分類と合わせると、本箇所は物理的経路そのものより、局所用法を抽象的状況へ拡張した「戦いの中で」と理解するのがよい。
同作者 §196 にも、
ուրախ եղաք ընդ այս պատերազմ որ եհաս մեզ
「われわれに到来したこの戦いをめぐって/この戦いの中で喜んだ」
と、ընդ + պատերազմ が մարտնչիմ 以外の動詞と結びつく例がある。したがって ընդ պատերազմ を մարտնչիմ 固有の補部とみなす必要はない。
4. 後続 ''ի մէջ ...'' との機能分担
もし ընդ անհնարին պատերազմ を単なる物理的位置句とみなすと、直後の
ի մէջ բարձրացելոց ջրեղէն լերանց եւ ի մէջ խոնարհելոց ծովային ձորոցն
との機能が過度に重なる。
実際には、
ընդ անհնարին պատերազմ → event / situation 「苛烈な戦闘状況の中で」 ի մէջ ... լերանց / ձորոցն → concrete spatial frame 「波の山々と谷々のただ中で」
と分ければ、二つの前置詞句が自然に共存する。すなわち航海者は、凄まじい戦闘に等しい状況にあり、その物理的舞台が波の山谷の間である。
5. ''անհնարին'' — 「不可能な」ではなく強意
CALFA Անհնարին は impossible のほか、
- extremely difficult
- insupportable / intolerable
- extreme
- violent
- excessive
- enormous / terrible
を挙げ、Պատերազմ անհնարին という結合そのものも記録する。
Agathangelos 内でも、
անհնարին հարուածսանհնարին թշնամանսկապուտ սաստիկ անհնարինկողոպուտ անհնարինորոտումն … սաստիկ անհնարինանհնարին չարիք եւ արհաւիրքանհնարին սուգ
など、程度の甚だしさを強める用法が多数ある。
よって本箇所では「不可能な戦い」ではなく、「苛烈な戦い」「凄まじい戦い」が妥当。試訳では「苛烈な」を維持する。
6. 棄却・降格する分析
A. պատերազմ = NOM.SG
表面形としては可能だが、直前 ընդ の支配を説明できず、採らない。
B. մարտնչիմ + ընդ պատերազմ を「戦いを戦う」という語彙的補部構文とする
意味上は理解可能だが、մարտնչիմ の独立例で ընդ が導くのは主として 戦闘相手であり、抽象名詞 պատերազմ を同じ補部型とする直接証拠はない。本文では状況句とみる方が ընդ + ACC の一般用法および後続場所句との分業を説明できる。
C. ընդ պատերազմ = 「戦いに対して/against the battle」
敵対方向を表すなら、独立例では通常、人・集団など実際の対戦相手が置かれる。戦いそのものを敵対相手とする必要はなく、棄却する。
REVIEW.002 は RESOLVED。
AGATH.§3.S001.REVIEW.003 — 19–21 ''զապրուստ անձանց փրկութեան'' — RESOLVED
結論
[22] գտանել
「見いだす」
│
└─ OBJ [19] զապրուստ
ACC.SG
「生存・救命の手立て」
│
└─ PURPOSE GEN [21] փրկութեան
GEN.SG
「救命のための」
│
└─ OBJECTIVE GEN [20] անձանց
GEN.PL
「自分たちの身の」
linear order:
զապրուստ [անձանց փրկութեան] գտանել
sense:
「自分たちの身を救う手立てを見いだす」
20 անձանց は表面上 GEN/DAT/ABL.PL、21 փրկութեան は GEN/DAT.SG が同形だが、本箇所では 20 = GEN.PL、21 = GEN.SG とする。
1. ''ապրուստ'' の語義 — 経済的 livelihood に限定しない
CALFA は Ապրուստ を livelihood / subsistence / maintenance / provision とする一方、仏語欄では vie, salut も挙げる。NBHL はさらに、
Ապրումն. զերծումն. փրկութիւն
すなわち「生き延びること・脱出・救い」に近い語群で説明する。
独立例にも、
Խնդրեցին զապրուստ ի սրոյ …— 「剣からの逃れ/助かる道を求めた」Ի … յապրուստ մեր ի բարկութենէն— 「怒りからわれわれが救われるために」Գտանել զապրուստ իւրեանց—գտանել + զապրուստの直接的共起
がある。
したがって本箇所の ապրուստ を §2 の経済的「生計・収益」に引きずって読む必要はない。荒海の局面では 「生き延びるための手立て/助かるすべ」 が第一義となる。
なお CALFA/NBHL の Ջանան զապրուստս անձանց փրկութեան は今回箇所そのものに由来するため、語義範囲の確認には使うが、内部統語の独立証拠には数えない。
2. 21 ''փրկութեան'' — 19に掛かる目的属格
KOS1980 SYN.33 / Ch.1 pp.24–25 は「目的属格」を独立類型として記述し、属格補部が中心名詞の目的を表すとする。代表例として、
պատարագս փրկութեան
「救いのための供犠」
を挙げる。
したがって、
ապրուստ փրկութեան 「救命のための ապրուստ」 → 「救命の手立て」
という関係は、Grabar の通常の 目的属格 として説明できる。21を与格と取る必要はない。
3. 20 ''անձանց'' — 21 ''փրկութեան'' の目的語的属格
KOS1980 SYN.31 / Ch.1 p.15 は、動作名詞の対象を表す目的語的属格を頻用の構造として記述する。同じ節には、まさに、
Որ փրկութիւնդ ես անձանց …
すなわち փրկութիւն անձանց =「人々/諸魂の救い」
という例が挙げられている。
KOS1980 は属格修飾語について、古典語では後置が優勢である一方、前置例も少なくないと明記する。目的語的属格についても前置例が実在する。
したがって本文の、
անձանց փրկութեան GEN.PL GEN.SG 「自分たちの身の救い」
は、փրկութիւն անձանց と同じ参与者関係を語順だけ反転したものとして説明できる。
4. 入れ子構造
以上を合わせると、名詞句は右側を単純に二つの独立属格として並べるより、
զապրուստ
└─ [անձանց փրկութեան]
└─ անձանց → փրկութեան
「自分たちの身の救い」
ապրուստ ← փրկութեան
「その救いのための手立て」
という 二段階の属格構造とみるのが最も自然である。
すなわち、
զապրուստ [անձանց փրկութեան]
「自分たちの身を救うための手立て」
である。
5. 海難文脈での ''փրկութիւն''
聖書 Grabar の使徒言行録27章は難船場面で、
յոյս փրկութեան մերոյ— 「われわれが助かる望み」վասն ձերոյ փրկութեան— 「あなたがたの安全/救命のために」
と փրկութիւն を物理的な海難からの救出・生存に用いる。
したがって本箇所でも、21を宗教的・抽象的な「救済」に限定する必要はなく、目前の荒海からの救命として自然に読める。
6. 直後の本文との意味整合
直後には、
զի ... զերծանել 「……から逃れ」 եւ ... նաւահանգիստն հասանել 「そして港へ到達する」
という具体的な生存行動が続く。さらに同じ §3 後続部では、
գլխոյ փրկանս գտանել— 身命の贖い/救命策を見いだすի պարտուց զանձինս թափել— 自分たちを負債から解く
と「身を救う」語彙が反復される。
REVIEW.004 で զի 節の厳密な作用域は別途検討するが、局所的意味場が物理的生存・脱出であることは REVIEW.003 の語義判定を十分に支える。
7. 棄却・降格する代替解
A. 20 անձանց = DAT.PL「自分たちのために」
形態上は可能であり、同作者には զաւգտութիւն անձանց գտանէք のように与格的に読める平行もある。しかし本箇所では、
- 直後の
փրկութեանがանձանցを目的語的属格として自然に選択すること、 - KOS1980 に
փրկութիւն անձանցそのものの独立例があること、 - 属格修飾語の前置が文法的に認められること、
から GEN.PL を優先する。DAT 説は形態的可能性に留め、active alternative には残さない。
B. 20 անձանց を19 ապրուստ に直接掛ける
CALFA の Գտանել զապրուստ իւրեանց から、この結合自体は可能。しかし本文では անձանց փրկութեան が 「身の救い」という独立して強く支持される名詞句を作れるため、20を19へ直接掛ける必要がない。こちらも active alternative から外す。
C. 19 ապրուստ 自体を単純に「救い」と訳す
語義上は可能だが、その場合 փրկութեան「救いのための」と意味がほぼ重複する。目的属格を生かし、19を「手立て・生存手段」、21をその目的「救命」と分担させる方が構造・語義とも透明である。
REVIEW.003 は RESOLVED。
AGATH.§3.S001.REVIEW.004 — 23–35 ''զի ... կարասցեն'' の作用域 — RESOLVED
結論
[18–22] ջանան ... գտանել
「見いだそうと努める」
│
└─ PURPOSE CLAUSE
[23] զի
└─ [35] կարասցեն
「~できるように」
├─ [30] զերծանել
│ 「逃れる」
└─ [31] եւ [34] հասանել
「そして到達する」
23 զի は 目的節を導く。35 կարասցեն は կարել(կարողանալ)「できる」の従属法3人称複数(未来価値)で、30 զերծանել と34 հասանել の二不定詞を一つの定動詞として支える。
作用域は二層に分ける。
- 統語的付着:直前の 18–22
ջանան … գտանելに係る。 - 談話意味上の作用域:その目的「嵐から逃れ港へ達する」は、6
մարտնչինを含む航海者の行動全体の目標にもなる。
構造図では前者を採用し、後者は本文読解で説明する。
1. ''զի'' は目的か、原因か
HMB2018 §189 は、目的の副詞節を զի, որպէս զի, վասն զի などが導くと明記する。一方で同じ §189 は、原因節も զի を取りうるとする。
したがって զի という語だけでは目的/原因を決められない。
本文で原因節とすると、「彼らが嵐から逃れ港へ到達できるので、救命の手立てを見いだそうと努める」となり、論理方向が逆になる。本文はまだ荒海の危険のただ中にあり、「逃れる・到達する」は未達成の目標である。
これに対して目的節なら、「救命の手立てを見いだそうと努める、嵐から逃れ港へ到達できるように」となり、語義・時制価値・談話進行が一致する。
よって原因説は棄却し、目的説を採る。
2. ''կարասցեն'' — 能力動詞 + 不定詞
Grabar Bible corpus は կարասցեն を、lemma կարել (կարողանալ)、形態 verb.sbjv.3per.pl. と分析する。
CALFA Կարեմ(「できる」)にも Կարասցես տոկալ, Թեր եւս կարասցուք հարկանել のように、従属法形が不定詞を補部に取る例がある。
とくに Acts 27:12 は今回と同じ航海・港の文脈で、
թերեւս կարասցեն հասանել ի Փիւնիկէ
「あるいはフェニクスへ到達できるかもしれない」
とし、կարասցեն + հասանել + 到達点 が本箇所 32–35 とほぼ同型である。
3. 30・34 は一つの ''կարասցեն'' を共有する
本文の語順は、
[30] զերծանել [31] եւ [32–34] յանքոյթ նաւահանգիստն հասանել [35] կարասցեն
である。二つの不定詞が եւ で直接並列され、その後ろに一つだけ定動詞 կարասցեն が置かれるため、
կարասցեն ├─ զերծանել └─ հասանել
と解析する。
HMB2018 の引用例にも զի այնու դիւրաւ կարասցեն հերքել մերժել ի բաց կալ … と、一つの կարասցեն が複数の不定詞的動作を支える構造が見られる。
したがって、30と34に別々の省略定動詞を補う必要はない。
4. 同作者 §2 の直接平行
直前 §2 S002 には、
ջանան դիմագրաւեալք … զի թերեւս … ցուցանիցեն
がある。ここでは既に զի 節が直前の ջանան の目的を表すと解析済みである。
§3 も ջանան … գտանել, զի … կարասցեն と同じ配置を持つため、23以下を18 ջանան 系列へ結びつけるのが最も直接的である。
5. 同作者 ''զի ... կարասցեն'' の独立例
Agathangelos にはほかにも、
- §150
զի զԱստուած տեսանել կարասցեն - §382
Նա եկն եղեւ մարդ, զի մարմնաւորքս տեսանել կարասցեն - §312
… շրջեցուցեալ զնոսա … զի թերեւս կարասցեն …
のように、先行行為の目的を զի … կարասցեն で表す独立例がある。
とくに §382 は「彼が人となった、肉ある者たちが彼を見ることができるように」という明瞭な目的関係であり、本箇所の構文判定を独立に支える。
6. 作用域 — 狭い統語付着と広い談話目的を区別する
句読点と線形配置では、
մարտնչին ... , ջանան ... գտանել, զի ... կարասցեն
となり、զի 節は直前の ջանան … գտանել に最も近い。
また REVIEW.003 で զապրուստ [անձանց փրկութեան] գտանել を「自分たちの身を救う手立てを見いだす」と確定したため、「救命の手立てを見いだす」→「嵐から逃れ、港へ達する」という意味連鎖も非常に強い。
したがって構造上は ջանան … գտանել → զի … կարասցեն とする。
ただし、航海者が「苛烈な戦いを繰り広げる」こと自体も最終的には同じ「脱出・入港」を目標としている。そのため、意味論・談話論では目的節の効果が6 մարտնչին にまで遡ることを否定しない。
これは構造的曖昧性を残すという意味ではなく、syntax と discourse scope を区別するという処理である。
7. 棄却・降格する代替解
A. 原因節
զի 自体は原因節を導けるが、「脱出・入港できるから救命策を探す」では因果方向が不自然。棄却。
B. ապրուստ の内容説明だけを行う同格・解説節
「救命の手立て、すなわち脱出して入港できること」と読む余地はあるが、直前 §2 の ջանան … զի … と同作者 զի … կարասցեն の目的用法に比べて積極的根拠が乏しい。active alternative には残さない。
C. զի 節を6 մարտնչին と18 ջանան の両方へ同格の統語依存で結ぶ
意味的には両方の行為の目的となりうる。しかし線形配置・§2平行・REVIEW.003 の意味連鎖から、統語的 head は18–22とする。広い作用は談話意味として処理する。
REVIEW.004 は RESOLVED。
AGATH.§3.S001.REVIEW.005 — 25 ''շրջանացն'' と 28 ''փոթորկացն'' の名詞句階層 — RESOLVED
結論
[24] ի
└─ [25] շրջանացն
ABL.PL.DEF
「渦から」
│
└─ GENITIVE DEPENDENT
[28] փոթորկացն
GEN.PL.DEF
「嵐の」
│
└─ [29] բքացելոց
oblique.PL → GEN.PL
「吹き荒れる」
= ի [շրջանացն [փոթորկացն բքացելոց]]
「吹き荒れる嵐の渦から」
25 շրջանացն は24 ի に支配される ABL.PL.DEF、28 փոթորկացն は25を後置修飾する GEN.PL.DEF とする。29 բքացելոց は REVIEW.007 で28への後置一致修飾と確定済みであり、005で28の格が GEN.PL と独立に決まることにより、29も GEN.PL と最終確定する。
1. 25 ''շրջանացն'' — ''ի + ABL'' の離脱源
շրջանացն は表面上 GEN/DAT/ABL.PL.DEF 同形だが、直前に24 ի があり、30 զերծանել「逃れる」と組み合わさって 離脱源を表す。
HMB2018 §156 は ի が DAT / ACC / ABL と結合することを示し、ի + ABL を「本来の意味」で用いる類型として明示する。
したがって、
ի շրջանացն ... զերծանել ABL.PL.DEF 「渦から逃れる」
とするのが形態・統語・意味の三点で最も自然である。
2. ''շրջան'' はこの文脈で「渦」
CALFA/NBHL Շրջան は turn / gyre / circuit などに加え、海・水流に関して、
շրջանք ջուրց— whirlpool, vortex
を直接掲げる。NBHL も յորձանք, խաղ գետոց, պտուտ など「渦・水流の旋回」に相当する語で説明する。
さらに辞書例には、
Եկի ես ի խորս, եւ շրջանք ընկղմեցին զիս
「深みに入り、渦が私を沈めた」型の海難的用例がある。
したがって本箇所の շրջանացն は抽象的な「循環」ではなく、水流・暴風に伴う渦/渦巻きとする。
3. ''շրջան + GEN'' は独立に実証される
CALFA の շրջանք ջուրց は、
շրջանք ջուրց HEAD GEN.PL 「水の渦」
という、まさに շրջան + 後置属格 の独立例である。
さらに Agathangelos 自身 §91 に、
ոչ շրջմունք տարեաց եւ ոչ շրջանք ժամանակաց
「年々の循環も、時の循環もなく」
と շրջանք ժամանակաց があり、同作者でも շրջան を中心語、後置属格を従属語とする構造が独立に確認できる。
したがって本文の、
շրջանացն փոթորկացն HEAD.ABL DEP.GEN
は辞書・同作者の双方に支えられた通常の名詞句構造である。
4. 後置属格の語順
HMB2018 §178 は、属格による名詞修飾語が中心語の前後どちらにも置かれうるが、Grabar では後置が通常であるとする。
したがって、
շրջանացն [փոթորկացն ...] HEAD POSTPOSED GENITIVE
という本文語順は特別な倒置を仮定せずに説明できる。
5. REVIEW.007 との非循環的接続
REVIEW.007 で独立に確定したのは、まず29 բքացելոց が 28 փոթորկացն に後置一致する複数斜格修飾語であることだった。
ただし փոթորկացն も բքացելոց も GEN/DAT/ABL.PL が表面上同形になりうるため、007だけから厳密な GEN を決めると循環する。
今回 REVIEW.005 では、
- 25が
ի + ABLの離脱源であること、 շրջան + GENが辞書と同作者に独立に実証されること、- 後置属格が Grabar の通常語順であること、
から28を GEN.PL.DEF と独立に確定した。
その結果、28に一致する29も GEN.PL と最終確定できる。
6. 代替案B — 同格説
形式上は、28 փոթորկացն を ABL.PL.DEF とし、25 շրջանացն に同格で置くことも可能である。HMB2018 §178 は同格語が中心語と数・格一致するとするため、表面形だけでは排除できない。
しかし同格なら、
շրջանացն = փոթորկացն 「渦、すなわち嵐」
という 同定関係を要求する。
一方、属格説なら CALFA の շրջանք ջուրց と同じく、
շրջանացն փոթորկացն 「嵐の渦」
という通常の所属・起源関係だけで説明できる。語彙的にも統語的にもこちらが直接支持されるため、同格説は active alternative から外す。
7. 代替案C — 二重離脱源/並列説
25と28をともに ABL.PL として、
「渦から、そして嵐から」
のような二つの離脱源を一つの ի の下に置く分析も形態上は不可能ではない。
しかし本文には եւ も ի の反復もなく、何より շրջան + GEN という独立に実証された構造がそのまま当てはまる。並列を仮定するための積極的証拠がない。
よって並列説も active alternative には残さない。
8. REVIEW.006 との境界
26 շփոթեալ と27 ուռուցիկ が28 փոթորկացն をどのように修飾するかは、REVIEW.006 に残す。
REVIEW.005 で確定するのは、上位骨格、
ի [շրջանացն [ ... փոթորկացն բքացելոց ]] ABL.PL GEN.PL.DEF GEN.PL
までである。
REVIEW.005 は RESOLVED。
AGATH.§3.S001.REVIEW.006 — 26–28 ''շփոթեալ ուռուցիկ փոթորկացն'' — RESOLVED
結論
[26] շփոթեալ [27] ուռուցիկ [28] փոթորկացն [29] բքացելոց
PAST.PTCP ADJ GEN.PL.DEF GEN.PL
preposed preposed HEAD postposed
modifier modifier modifier
\______________________/ \________________/
\ /
\____ same head: փոթորկացն _/
「入り乱れ、膨れ上がり、吹き荒れる嵐の」
26 շփոթեալ と27 ուռուցիկ は、ともに28 փոթորկացն の 前置属性修飾語。29 բքացելոց は同じ中心語28への 後置一致修飾語である。
したがって REVIEW.005 で確定した上位構造は、
ի [շրջանացն
[շփոթեալ ուռուցիկ փոթորկացն բքացելոց]]
「入り乱れ、膨れ上がり、吹き荒れる嵐の渦から」
となる。
1. 26 ''շփոթեալ'' — 過去分詞
内部辞書は շփոթեալ を exact match で二分析する。
Շփոթեմ— transitive: 「混ぜる、かき乱す、混乱させる」Շփոթիմ— intransitive/middle: 「乱れる、混乱する、動揺する」
いずれも形態は past participle であり、表面形だけから lemma / voice を一意に決められない。
CALFA Շփոթիմ は —եալ ես「あなたは取り乱して見える」のように、շփոթեալ が状態的・middle 的意味を持つことを直接示す。
本箇所では修飾対象が փոթորիկ「嵐」であり、明示的な目的語を取って「何かを混乱させた嵐」と読むより、「乱れた・かき乱された・荒れた嵐」という状態記述が自然である。
したがって lexical annotation では Շփոթեմ / Շփոթիմ 系の past participle とし、semantic voice は middle/passive と判定する。lemma を一方へ過剰確定しない。
2. 位置と一致 — JEN1959 の形容詞的属性規則
JEN1959 §422 は、名詞の形容詞的属性に 形容詞だけでなく分詞も含めることを明記する。そのうえで §423 は後置属性が通常、中心名詞と数・格一致し、§424 は多音節の前置属性が通常、不一致の裸形を保つとする。§426 は例外もあることを注意する。
この規則を本文に当てると、裸形 շփոթեալ は、ABL.PL.DEF の25 շրջանացն の後置属性とするより、GEN.PL.DEF の28 փոթորկացն の前置属性とする方が標準的な位置・一致パターンに合う。
ただしこの規則だけで機械的に決めず、次の同作者平行を独立の正証として用いる。
3. 同作者の裸形前置分詞平行
Agathangelos §1 には、
հողմակոծեալ ալեացն …
があり、հողմակոծեալ「風に打たれた」が複数斜格 ալեացն「波々」に 前置・裸形のまま付く。
§1: հողմակոծեալ ալեացն bare PTCP OBL.PL PRE HEAD §3: շփոթեալ փոթորկացն bare PTCP GEN.PL PRE HEAD
したがって26を28への前置過去分詞修飾とすることには、同作者の独立平行がある。
なお、以前候補にした ամպոց շփոթելոց は -ելոց が FUT.PTCP / PAST.PTCP 複数斜格の同形衝突を起こしうるため、REVIEW.006 の決定根拠には用いない。
4. 27 ''ուռուցիկ'' — 28への直接修飾
CALFA Ուռուցիկ は swelled / turgent のほか、暴風文脈に直接、
ուռուցիկ հողմն— tempestuous or stormy wind / gust
を挙げる。
さらに、
Բռնութիւնք ուռուցիկ հողմոց
յալեկոծութիւն ուռուցիկ հողմոյ
のように、ուռուցիկ が「風・暴風」を直接修飾する独立例がある。
したがって本文の、
ուռուցիկ փոթորկացն 「膨れ上がった/荒々しく膨らむ嵐の」
は語彙的にも通常の結合である。
HMB2018 §178 に従えば、多音節の前置形容詞は通常曲用しないため、GEN.PL.DEF փոթորկացն の前で ուռուցիկ が裸形なのも規則的である。
5. 26と27は同じ中心語への二重前置修飾
本文には26と27の間に եւ はないが、両者は意味上、
շփոթեալ— 乱れ・攪乱ուռուցիկ— 膨張・隆起
という別個の属性を28 փոթորկացն に与える。
したがって、26が27を修飾する、あるいは27が26を修飾する階層を立てる必要はなく、asyndetic stacked modifiers とみる。
փոթորկացն ├─ PRE: շփոթեալ ├─ PRE: ուռուցիկ └─ POST: բքացելոց
という一中心三修飾構造である。
6. 29との前後対称性
REVIEW.007 と REVIEW.005 により29 բքացելոց は28への後置 GEN.PL 修飾と確定済み。
よって28を中心として、
[PRE 26] [PRE 27] HEAD 28 [POST 29] շփոթեալ ուռուցիկ փոթորկացն բքացելոց
という非常に整った名詞句になる。
前置側では26・27が裸形、後置側では29が中心語と格・数一致して曲用する。この配列は §1 の հողմակոծեալ ալեացն տատանելոց ともよく対応する。
7. 語義・試訳
26を active に「他をかき乱す」とするより、middle/passive の 「入り乱れた/かき乱された」とする。
27は単純な物理的「膨張」より、風・嵐に対する辞書用例を踏まえ 「膨れ上がった」。
29は REVIEW.007 により 「吹き荒れる/荒れ狂う」。
したがって全体を、
「入り乱れ、膨れ上がり、吹き荒れる嵐の渦から」
とする。
8. 棄却・降格する代替解
A. 26 → 25 շրջանացն の後置修飾
意味上は可能だが、後置なら独立例 ամպոց շփոթելոց のような曲用形が期待される。裸形である本文とは合いにくく、棄却。
B. 26を active「かき乱す嵐」とする
形態上 Շփոթեմ 由来も可能だが、目的語がなく、Շփոթիմ の状態的語義が局所文脈に直接合う。active reading は採らない。
C. 26・27のどちらかを28以外へ掛ける
27は storm/wind との独立共起が強く、26も裸形前置という配置から28への修飾が最も自然。別依存を立てる積極的証拠はない。
REVIEW.006 は RESOLVED。
AGATH.§3.S001.REVIEW.007 — 29 ''բքացելոց'' — RESOLVED
結論
[28] փոթորկացն
GEN.PL.DEF
「嵐の/暴風の」
│
└─ [29] բքացելոց
PAST.PTCP-like ADJ.GEN.PL
postposed agreement modifier
「吹き荒れる/荒れ狂う」
29 բքացելոց は、辞書が Agathangelos の形として記録する բքացեալ の複数斜格形であり、本箇所では GEN.PL とする。28 փոթորկացն に後置して数・格一致する。
ただし consulted lexica は独立動詞 lemma *բքանալ, *բքամ 等を見出しとして支持しない。したがって、実証されない動詞 lemma を復元して採用しない。lexical base は CALFA/NBHL が明示する名詞 Բուք「雪嵐・暴風」、直接の引用形は բքացեալ とする。
1. 辞書証拠 — ''բքացեալ'' は Agathangelos の実在形
CALFA/NBHL の Բուք 項は、Բուք を snow-storm / storm、NBHL では「雪を伴う嵐・冷たい暴風」に相当する語として説明し、その派生語列に、
բքացեալ Ագաթ.
と Agathangelos の բքացեալ を明記する。
したがって本文 բքացելոց を typo や機械的未知語として扱う必要はなく、辞書に実証された բքացեալ の曲用形として扱える。
CALFA で բքացելոց 自体の検索は parser failure となるが、これは語が不存在であることを意味しない。基底引用形 բքացեալ は明確に辞書で確認できる。
2. lemma — 無理に独立動詞を立てない
բքացեալ の形からは、理論上 *բքանալ 等の派生動詞を想定したくなる。しかし、CALFA/NBHL で、
բքանալբքանամբքամբքեմբքիմ
を検索しても、独立した古典語動詞見出しは得られなかった。
一方 Բուք 項は բքացեալ を同名詞からの派生語として直接列挙する。
よって lexical annotation では、
lexical base: Բուք citation form: բքացեալ surface: բքացելոց reconstructed verb lemma: NOT ASSERTED
とする。
これは lemma 不明を放置するのではなく、資料が保証する粒度で止めるという判断である。
3. 形態 — GEN.PL
HMB2018 §59 は過去分詞が名詞的に曲用することを確認する。さらに §178 は、後置修飾語は中心語と数・格一致するとする。
本文では、
փոթորկացն բքացելոց GEN.PL.DEF GEN.PL head postposed modifier
という位置関係である。
内部辞書は28 փոթորկացն を GEN/DAT/ABL.PL、29 բքացելոց も複数斜格同形として許すため、表面形だけでは厳密な格は決まらない。REVIEW.007 では29が28への後置一致修飾語であることをまず確定し、REVIEW.005 が28を GEN.PL.DEF と独立に確定した結果、29も GEN.PL と最終確定する。
定冠詞要素 -ն が中心名詞28側にあり、29側に繰り返されないことは、29が独立名詞ではなく修飾語であることと整合する。
4. 語義 — 「吹雪く」より「吹き荒れる」
基語 Բուք の第一義には snow-storm があるため、「吹雪く」が辞書的には連想される。しかし本箇所は海上の暴風描写であり、雪そのものを表す局所的手掛かりはない。
派生語の語義も、より一般的な「暴風性」を示す。
Բքաբեր— stormy; snowy, full of snowԲքայոյզ— NBHL:Յուզեալ բքով. մրրկայոյզ. բքախառն、すなわち嵐に揺さぶられた・暴風性の
さらに CALFA の別項には、
Մի՛ … ալէկոծեր զբքացեալս
と、բքացեալ が ալէկոծեմ「激しく揺さぶる、波に翻弄する」と同じ意味場に置かれる例がある。
したがって §3 の海上文脈では、snow-specific な「吹雪いた嵐」ではなく、「吹き荒れる嵐」「荒れ狂う嵐」とする。
5. Agathangelos 内部と版面状態
Phase 2 frozen target 全文を検索したところ、բքաց- は本箇所の一例だけであり、同作者内の独立平行は存在しない。
一方 §3 の frozen record は、
- operations: なし
- notes: なし
- grammar reverse audit: RETAIN_PRINT_SURFACE
である。
したがって rare form だからといって本文を別形へ訂正する根拠はない。բքացելոց をそのまま保持して解析する。
6. 棄却・降格する代替解
A. 独立動詞 *բքանալ を lemma と確定する
形態論的再建としては考えられるが、consulted lexica が見出しを保証しない。辞書的事実と再建を混同するため採らない。
B. 「吹雪いた嵐」と snow-specific に訳す
基語 Բուք には雪嵐の意味があるが、本箇所に雪の指示はなく、派生語群は一般的な stormy / storm-tossed の意味へ広がる。本文訳では採らない。
C. 29を25 շրջանացն に直接掛ける
29は28 փոթորկացն の直後にあり、後置一致修飾として28に結ぶのが局所統語上強い。REVIEW.005 により28が GEN.PL.DEF と確定したため、29も GEN.PL と確定する。
REVIEW.007 は RESOLVED。
AGATH.§3.S001.REVIEW.008 — 32–34 ''յանքոյթ նաւահանգիստն հասանել'' — RESOLVED
結論
[34] հասանել
INF「到達する」
│
└─ GOAL
[32] յ- < ի
│
└─ [32–33] անքոյթ նաւահանգիստն
ADJ ACC.SG.DEF
「安全な港へ」
32 յանքոյթ は յ- < ի + անքոյթ。յ- は34 հասանել の到達点を導く前置詞で、32–33の名詞句全体に作用する。33 նաւահանգիստն は ACC.SG.DEF。本文訳は 「安全な港へ到達する」 とする。
1. ''յ-'' は前置詞 ''ի'' の異形
HMB2018 §156 は、
Ի (կամ՝ յ)նախդիրը …
と ի / յ を同一前置詞の異形として扱い、ի + ACC の用法の一つに շարժման ուղղություն「移動の方向」を立てる。
したがって本文は、
յ [անքոյթ նաւահանգիստն] = ի [անքոյթ նաւահանգիստն] 「安全な港へ」
と分解する。յ を անքոյթ の語彙的接頭辞とみなす必要はない。
2. 33 ''նաւահանգիստն'' は ACC.SG.DEF
内部辞書では նաւահանգիստն は NOM.SG / ACC.SG が表面上同形である。しかし本箇所では、
- 前置詞
ի/յが方向用法で ACC を取ること、 - 34
հասանելが「到達する」を意味すること、 - CALFA
Նաւահանգիստがհասանել ի նաւահանգիստを「港へ到達する/入港する」と直接記録すること、
から ACC.SG.DEF と確定する。
HMB2018 にも、
կարեմք հասանել ի հունն
という հասանել + ի + ACC の到達構文がある。
3. ''հասանել + ի/յ + 港'' は同作者にも独立に実証される
Agathangelos §10 には、
հասանել ի նաւահանգիստն խաղաղութեան
「平安の港へ到達する」
があり、հասանել + ի + նաւահանգիստ がそのまま独立に確認できる。
さらに §16 には、
Այլ ի հողմախաղաղ յանքոյթ նաւահանգիստն հասեալ …
と、本箇所と同じ յանքոյթ նաւահանգիստն + հաս- の配列が再現される。
§1 にも causative ではあるが、
ի նաւահանգիստն հասուցանել
「港へ到達させる」
があり、序文全体を通じて「港へ到達する」という構文・比喩が反復されている。
4. ''անքոյթ'' — 第一義は safe / secure
CALFA Անքոյթ の見出し訳は明確に、
safe, secure
である。
また Նաւահանգիստ 項は、
ընդարձակ, անքոյթ, գեղեցիկ —
を a spacious, safe, fine harbour or port と説明する。
したがって անքոյթ նաւահանգիստ =「安全な港」 は辞書上の直接的な結合であり、本箇所の第一訳とする。
5. 「波静かな港」を第一訳にしない理由
NBHL は Անքոյթ に、
tranquillusfluctibus non agitatus— 波に揺さぶられないհանդարտ,խաղաղ,անխռով,անվտանգ,անալէկոծ
などを並べる。したがって「穏やかな/波立たない」という含意は確かに存在する。
しかし Agathangelos §16 では同じ港の表現に հողմախաղաղ が加わる。CALFA Հողմախաղաղ は、
sheltered, secure from winds; tranquil, calm, peaceful
と説明し、Agathangelos の հողմախաղաղ … անքոյթ նաւահանգիստ を直接例示する。
したがって作者は、風・海況の静けさを明示する語と անքոյթ を併置できる。անքոյթ 自体を「波静かな」に限定すると、この語彙的分業が見えにくくなる。
よって本文訳では、より広い 「安全な」 を採用し、「穏やかな・波静かな」は含意として文法解説に残す。
6. 32 ''անքոյթ'' の形態統語
անքոյթ は形容詞で、33 նաւահանգիստն に前置する。
HMB2018 §178 は多音節の前置形容詞が通常曲用しないことを示すため、中心名詞が ACC.SG.DEF であっても անքոյթ が裸形のままであることに問題はない。
前置詞 յ- は形容詞だけを支配するのではなく、
յ [անքոյթ նաւահանգիստն]
という名詞句全体の先頭に立つ。
7. 棄却・降格する代替解
A. 33 նաւահանգիստն = NOM.SG
表面形としては可能だが、ի/յ + ACC の方向構文、հասանել の語義、同作者平行のすべてに反するため棄却。
B. յանքոյթ を一語の副詞「安全に」とする
CALFA・内部辞書は անքոյթ を形容詞とし、直接 անքոյթ նաւահանգիստ を例示する。名詞修飾分析の方が直接的であり、採らない。
C. 本文訳「波静かな港」
辞書的含意としては可能だが、第一義 safe / secure と §16 の հողմախաղաղ との語彙的分業を踏まえ、第一訳には採らない。
REVIEW.008 は RESOLVED。
- Agathangelos, Պատմութիւն Հայոց, §3 第一文。本文は Phase 2 frozen target v1.0.1。作者内平行として §1、§10
հասանել ի նաւահանգիստն խաղաղութեան、§16ի հողմախաղաղ յանքոյթ նաւահանգիստն հասեալを参照。 - HMB2018 §49, §59, §135 — 過去分詞の曲用、未来分詞
-ոց。REVIEW.001 の FUT/PAST 同形衝突判定に使用。 - HMB2018 §49, §59, §83, §135, §156, §178 — 過去分詞の曲用・形成、
ի/յ + ABL/ACC、移動方向を表すի/յ + ACC、前置多音節形容詞の不変化、後置属格・一致。REVIEW.005–008 に使用。 - JEN1959 §§422–426 — 形容詞的属性(分詞を含む)の前後位置と一致。後置属性は原則数・格一致、前置多音節属性は通常裸形。例外あり。
- HMB2018 §158 —
ընդの複数格支配、とくにընդ + ACCの場所・経路・範囲・手段用法。 - ABE1936 §213–214 —
ընդ + ACCの局所・経路・時間・状態関連用法、および共同用法との区別。 - HMB2018 §189 —
զի等が導く目的節、およびզիが原因節にも用いられること。REVIEW.004 では局所意味・同作者平行から目的節と判定。 - KOS1980 SYN.31 / Ch.1 p.15 — 目的語的属格。
փրկութիւն անձանցの直接例を含む。 - KOS1980 SYN.33 / Ch.1 pp.24–25 — 目的属格。
պատարագս փրկութեանの例を含む。 - CALFA / NBHL —
Ընդ,Մարտնչիմ,Պատերազմ,Անհնարին,Բարձրանամ,Խոնարհիմ,Ջրեղէն,Ապրուստ,Փրկութիւն,Անձն,Շրջան,Շփոթեմ / Շփոթիմ,Ուռուցիկ,Փոթորիկ,Բուք / բքացեալ(բքացեալ Ագաթ.の辞書記録、Բքաբեր,Բքայոյզの派生語義を含む),Զերծանեմ / Զերծանիմ,Անքոյթ,Նաւահանգիստ,Հասանեմ,Հողմախաղաղ各項目。մարտնչիմ + ընդ + 相手、Պատերազմ անհնարին、բարձրացելոց・խոնարհելոց、գտանել զապրուստ系の独立用例を含む。 - GHAZ2012 —
ՄԱՐՏ ԴՆԵԼ ԸՆԴ ՈՒՄԵՔほか戦闘表現。ընդ + 相手の敵対構文確認に使用。 - Grabar Bible corpus, Acts 27:12, 27:20, 27:34 — 27:12
թերեւս կարասցեն հասանել ի Փիւնիկէは航海文脈のկարասցեն + հասանել + 到達点平行。27:20, 27:34 はփրկութիւն「救命・安全」の独立用例。
